含み損は嫌なものですが、短期トレードでも長期トレードでも、回避するのは難しいです。
そこで、考え方や対処法を考察します。
含み損とは
最初に、含み損とは何か?を確認します。
例えば、米ドル/円=110円で1万通貨を買っているとします。そして、為替レートが100円になったとします。これは、10万円の含み損状態です。
ちなみに、取引を開始した瞬間は、ほぼ全員が含み損になっています。と言いますのは、スプレッドがあるからです
- Ask(売り):110.000円
- Bid(買い):110.001円
上の例で買う時、為替レートは110.001円です。そして、売るときは110.000円の為替レートで売ります。すなわち、買いと売りの差0.001円(0.1銭)だけ含み損になっています。
0.1銭だけとはいえ、マイナスからのスタートです。FXに限らず相場が難しい原因の一つは、マイナスからのスタートだからです。
短期トレードと長期トレード
長期トレードと短期トレードでは、含み損の考え方や取扱が多少異なります。そこで、この2つを区別して考察します。
・短期:デイトレードやスイングトレードなど
・長期:ポジション保有期間が数週間程度以上
短期トレード
- 損切り注文は必須
- 1取引の損失額を小さくできる
- 取引回数が多く、損失を挽回する機会が多い
長期トレード
- 含み損があっても、損切りしない取引が可能
- 損切りすると、損失額が大きくなりがち
- 取引回数が少ないので、損失は精神的に痛い
短期トレードの場合
短期トレードの場合、長期トレードに比べて、含み損で苦しむ程度を小さくできます。なぜなら、ポジション保有期間が短いからです。
ポジション保有期間が短いので、利食いする場合も損切りする場合も、値幅は限られた大きさになります。
すなわち、取引数量を少なくすれば、損切り額を小さくできます。
「あ~…ポジションを持ってから期待外れの値動きだ…。損切りした。まあ、仕方ないな。次!」
という考え方が可能です。短期トレードは、売買頻度が高いのが特徴です。よって、損切りで終わっても、しばらく待てば次のチャンスがやってきます。
次の取引で利食いすれば、OKです。
とはいえ、損失を考慮せずに大きく取引してしまうと、損切りしたときに苦しむことになります。巨大な損を取り戻そうとして、次も大きな取引をすると、損してさらに苦しむかもしれません。
これは含み損の問題でなく、取引のやり方の問題になります。
何事も、ほどほどにやるのが吉。
長期トレードに鞍替え
なお、こんな場合があるかもしれません。
…。これは典型的な負けパターンなので、何が何でも回避したいです。
この方法で損切りを回避できる可能性は、実は低くありません。結構な確率で、損切りを回避できます。
ところが、この方法はいつも成功するわけでなく、含み損がさらにいっそう大きくなることもあります。その場合が厳しい。
その一回の損失で、手持ち資金の多くを失ってしまう可能性もあります。そうなったら、FXを継続できないでしょう。心も折られてしまいます。
長期トレードの場合
次に、長期トレードの場合を見ていきましょう。
損切り幅が大きくなりがち
長期トレードの場合、損切りになるときの損失幅は、大きくなりがちです。すなわち、含み損で苦しむ時間が長くなります。
例えば、利幅が1,000pipsの取引を始めようという場合、損切りの大きさは不明ですが、300pips~500pipsくらいになるかもしれません。
すなわち、1取引の損失幅が大きくなります。
短期トレードと同じような感覚で取引数量を設定すると、含み損になった時に、とても苦しくなります。長期間苦しんだ結果、びっくりするような損失額になってしまいます。
よって、特に月足チャートを使った長期トレードでは、取引数量を小さくすることが大切です。
含み損は精神的に痛い
意外にといいますか、重要視すべきなのは、精神的ダメージです。
デイトレードの場合と比較しましょう。あるデイトレードで、損したとします。損は面白くありませんが、仕方ありません。すぐに次のトレードチャンスがやってきますから、それに備えます。
気持ちの切り替えをしやすいです。
一方、長期トレード(特に、月足を使った場合)では、そんなわけにはいきません。
月足の場合、ローソク足が一つできるのに1か月かかります。週足の場合、1週間です。トレードで含み損が大きくなると、何か月もの間、苦しむことになりかねません。
そして、実際に損したとします。
次のトレードチャンスは、いつやってくるか分かりません。すると、直前に負けたトレードの気分を引きずりながら、ずっと過ごさなければならない可能性があります。
これは、厳しい状況でしょう。
これを回避するために、いくつかの対応が必要です。下は、その案です。
- トレード1回の取引数量を小さくする
利益よりも損失回避を優先
取引数量を小さくすると、利食いできる時の利益額が小さくなってしまいます。しかし、損失になる場合のリスク回避を優先すべきです。
- 利益:次もトレードできる
- 損失:含み損で苦しんだうえに、巨大な損失で、もうトレードできなくなるかも?
トレードは、1回の損失が大きすぎると、その後のFX取引ができなくなってしまう破壊力を持っています。
一方、利食いの側は、何回利食いしても問題は発生しません。
そこで、1発の大きな損失で大ダメージを受けないように、慎重に取引することが大切です。
取引開始前の考察が重要
取引開始時点で、将来の為替レートの動きを確実に見通すことはできません。
「チャート分析などの結果、将来は…になるだろう」という希望的観測に基づいて、取引します。
よって、為替レートが希望の動きと反対になる場合に備えて、取引前の考察がとても大切になります。
どこまで為替レートが進んだら、含み損はいくらになるか?そして、その含み損が実現しても、精神的・金銭的に耐えられるか?を考えます。
不都合な状態になっても、精神的・金銭的に大丈夫と分かったら、実際に取引開始です。
損切り不要な取引
なお、月足を使う長期取引の場合、ほぼ損切りを想定しない取引が可能です。すなわち、含み損を半ば無視できます。
その方法を2つご案内します。
長期保有
例えば、米ドル/円を買って長期保有します。米ドル/円の円高記録は、75円です。
すなわち、米ドル/円=100円くらいのときにレバレッジ2倍で買えば、円高記録が再現しても強制ロスカットになりません(単純に計算すると、米ドル/円=50円くらいで損切りになります)。
含み損になっても、スワップポイントを毎日獲得できますし、そのうち再び円安に戻るでしょう?という方針の運用が可能です。
この場合、(割り切りが必要ですが)含み損は怖くありません。
実際のところ、米ドル/円が75円よりもはるかに円高になったら、日本経済は大ダメージになるでしょう。日本の総合的な国力は衰えます。
すなわち、短期的に超円高になる場合も、長期的に見えれば円安になるしかないという判断が可能です。弱い国の通貨がずっと強いというのは、考えづらいからです。
ゆったり為替は、米ドル/円の超長期予想として、大幅円安だと考えています。
- 今後、人口は大幅に減少
- 若者の減少と高齢者の増加
- 日本の財政が悪すぎる
この要素だけで、長期的に見て円安になると考えることが可能です。この3つを見て、「日本は魅力的だから円を買おう!」とはなりません。
よって、この考え方を使って、「含み損無視のトレード」をすることが可能です。
ただし、この考え方が外れる場合に備えて、取引数量を十分に抑える資金管理を、確実に実行します。
利食いを繰り返す方法
長期保有は良い方法ですが、デメリットがあります。それは、つまらないということです。
ひとたびポジションを持ったら、後は放置。
それでもOKですが、売買を繰り返したいという希望がある場合、長期保有はひどく暇です。そういうときは、損切りしないで売買を繰り返すトレード手法が候補になります。
詳細は、下のリンク先記事で解説していますので、ご確認ください。
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損切りしないトレード手法
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まとめ
以上の通り考えますと、含み損で苦しまなくて済むためには、取引数量を小さくすることが重要だと分かります。さらに、取引開始前の考察が大切です。
長期トレードなら、含み損を事実上無視した取引も可能ですので、様々な手法を考察すると興味深いでしょう。
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