FXで負ける・損する個人投資家の割合
FXで勝っている人の割合、負けている人の割合。この数字はFX各社のトップシークレットに近いデータだと思います。
よって、私たちに具体的な数字が出てくることはないと思っていたのですが、その数字が分かりました!
負ける・損する割合の公的データ
フランスの公的機関(金融庁に相当)が、FX業者から個人投資家の取引データを回収して分析した結果を、公開しました。FXとCFDを合計した調査ですが、以下の通りです。
1年間という短期間の調査でなく、4年間もあります。信頼度はとても高いです。
- 調査期間 : 2009年~2012年
- 損になった人数 : 13,224人
- 損失額合計 : 2億2千万ドル
- 利益を得た人数 : 1,575人
- 利益額合計 : 1,751万ドル
負ける個人投資家が圧倒的に多い
この簡潔な記事から分かることを、いくつか書いていきます。
トレードした人数が少なすぎるんじゃない?
カバー率は100%でないとはいえ、2009年~2012年の4年間でフランス全体の数字としては、あまりにも人数が少ない気がします。
しかし、フランスではFXやCFDの人気がないのかもしれません。
個人の取引高でいえば、日本は世界の中でもとても多い部類です。このため、日本と比較してフランスが少ないな、と考えるのは不適当かもしれません。
負けた人の割合は?
負けた人の割合を計算しますと、89.4%です。
ゆったり為替は「意外に低い数字だ」と思いました。90%半ばくらいが負けていると思っていました。89.4%が負けるということは、勝っている人が全体の10%くらいだということです。
フランスの金融市場規制当局が、顧客の取引データを使って調査した結果です。負ける人の割合は何%か?という疑問はこの数字をもってある程度解決したと言えそうです。
ただし、日本を対象にした調査ではありませんので、日本では少し数字が違うかもしれません。
お金はどこへ消えてしまったの?
負けた金額と勝った金額を比較しましょう。
FX会社への手数料がありますから、勝ちの金額が負けの金額よりも少し少ないくらいかな?と予想することも可能でしょう(負けだすと熱くなって、取引回数が増えるなどの負けパターンを想定)。
- 勝った人の利益額 : 1,751万ドル
- 負けた人の損失額 : 2億2千万ドル
これはタイプミスか?と思わず目を疑う差です。負けた人のお金は、勝った人のポケットに入ります。これは理解できます。しかし、負けた金額が2億2千万ドル、勝った金額が1,751万ドル。
では、残りのおよそ2億ドルはどこに消えてしまったのでしょうか?
可能性2:FX業者が手数料としてお金を持って行った。
このほかにもあるかもしれません。
可能性2につき、最近のFX業者の手数料競争は激しいので、各社の利益水準は高くないと思います。
しかし、大勢が繰り返して多額の取引をすれば、塵も積もれば山となるという感じで、FX各社にお金が移る可能性が考えられます。
(ポジポジ病という言葉が示唆している通り、負ける人ほどトレード回数が多いと予想できます。すなわち、支払手数料総額は負ける人が多くなりそうです。)
なお、詐欺による資金減少も無視できない額となっているようです。というのは、フランス当局のサイトでは、以下の点が強調して書いてあるためです。
- 苦情が多数集まっていること
- 法律に定める手続きを経ていない違法業者に気を付けるべきこと
この種の問題はどの国でも起きているということでしょうか。次回は、機関投資家が思いっきり儲かる理由を考えてみます。
本当に9割くらい負けるか
なお、上の数字を見て「おかしい」と感じる皆様は少なくないと思います。と言いますのは、ウェブサイトを検索しますと、勝った人と負けた人の割合のデータを探すことができます。
そこでは、負けが少し多いくらいかな?という数字になっていることがあるからです。
この数字の差がでるのは、「調査期間」が原因だと予想できます。例えば、月ごとの成績を考えてみます。
2か月目:1万円の利益
3か月目:1万円の利益
4か月目:1万円の利益
5か月目:10万円の損失
この場合、月ごとの勝敗で考えると、4勝1敗で勝率80%です。しかし、損益合計はマイナス6万円で、明らかに負けています。
個人投資家の典型的負けパターンは「コツコツドカン」です。上の成績は、まさにこれを表しています。
調査期間が長期になればなるほど、この「ドカン」で負ける割合が高くなるでしょう。また、「調査時期」もミソです。円安トレンドと円高トレンドでは、同じ調査をしても結果が大きく変わってくるでしょう。
一方、フランスの調査期間は4年間と長期です。顧客の実際の取引データを使っていますし、信頼度は高いと予想します。
すると、負けたお金はどこに流れるか?が疑問になります。
機関投資家が勝つ理由
以上のデータを見ますと、個人投資家は圧倒的に負けるのですが、そのお金は機関投資家の手に渡っている可能性が高そうです。
個人でない誰かが儲かっている…個人でないならば法人(=機関投資家)でしょう、ということです。では、機関投資家が勝つ理由は何でしょうか。
膨大な情報・分析能力・優秀なトレーダー
機関投資家の情報収集能力や分析能力は、個人をはるかに凌ぎます。さらに、その洗練された情報を使いつつ、コンピュータや極めて優秀なトレーダーが多額の資金を運用して稼ぎます。
一方、個人でも6面ディスプレイを使い、リアルタイムで為替レートや各種情報を入手できるようになり、スプレッドも狭くなり…取引環境は年々改善されていますが、個人で処理できる情報量には限界があります。
機関投資家のほうが動きが速い例として、米国の雇用統計発表時のレートの動きがあります。
→ ニュースを確認
→ チャートを見る…しかし、既にレートは大きく動いている。
個人がニュースを見て確認している間に、インターバンク市場は既にそのニュースに基づいた取引が活発に行われています。個人の速度では全く追いつきません。
そこで、個人がトレードするには、どんな数字が出るか事前に予想して賭けておくか、あるいは、為替レートの動きを見ながらついていくという方法になります。
どうしても、従属的な立場になります。
仮に同じ条件で取引ができるとしても、インターネットの向こうで取引しているのは、厳しい世界を生き残ってきた敏腕トレーダーやコンピュータです。
個人が同じ土俵で勝つことは難しいかもしれません。
フラッシュボーイズ
詳しく知りたい方は、東洋経済の記事をご覧ください。
簡単に書きますと、株式取引を仲介する証券会社は、顧客がどのような注文をしているのかを知りうる立場にあります。
そこで、顧客の注文を受け付けてそれを約定させるわずかの時間のうちに、コンピュータで先回りして注文して儲けようという方法です。
顧客がどのような注文をしているか確認したうえでトレードするのですから、負ける要素がありません。相手がジャンケンでグーを出すのを確認してから自分はパーを出すようなものです。
フラッシュボーイズは株式について書いていますが、これがFXに応用されていたとしても何の不思議もありません。いやむしろ、応用されていないほうが不自然ではないでしょうか。
では、具体的にはどうやって?と質問を受けても回答に窮してしまうので、これは予想にすぎないというオチがついてしまいますが。
これに類似した方法がFXでも採用されている場合、同じ土俵で個人が戦おうとしても、個人では同じ土俵に立つことさえできません。
類似する方法と言ってよいのか分かりませんが、FX業者では以下の方法を採用しています。マリー取引です。
マリー取引
FX業者には、顧客から数多くの売買注文がやってきます。ある通貨ペアについて、買いもあれば売りもあります。
そのまま全ての注文をインターバンク市場に流してしまう方法もありますが、それではFX業者の利益が限られます。
そこで、全く同じレートで買いと売りの注文がやってきたときには、インターバンク市場に流さず、FX業者内で注文を相殺します。そうすることで、スプレッド分の利益を得ることができます。
インターバンク市場に流して利幅を小さくしてしまう必要がなくなります。
スプレッドは微々たる幅ですが、多くの顧客が多額の資金で取引すれば、利益の額も大きくなるでしょう。
FXトレーダーが相場で勝てるかどうか不明ですが、FX業者は確実に勝つことになります。ちなみに、このマリー取引ですが、合法です。
個人は勉強の仕方に問題がある
個人の場合、FXの勉強の仕方に問題があるでしょう。
私たちは、子供のころ、学校で勉強してきました。学校の授業は適当なものではありません。体系的なものです。先生も、大学で専門の勉強を履修して試験に合格した人ばかりです。
一方、FXは、「何を使って、どのように勉強するか」を探すところから始まります。
世の中には、数多くのFX情報があります。しかし、ウソだったり、既に古くなってしまった情報があったりします。適当に取引して継続的に勝てるような、そんな世界ではありません。
個人投資家が勝つには
以上を踏まえて、個人投資家が勝つためにはどうした良いか?を考えます。
個人だから、できること
機関投資家ならできないけれど、個人ならできることがあります。個人の強みを考えてみましょう。
- 損しても、上司や取引先などに説明しなくてよいし、叱られる必要もなし。
- 利益も損も、全て自分のもの。
- 何年も利益なしという状況でも、クビにならない。資金が続く限り、取引可能。
- 取引したくなかったら、しなくてよい。
- 取引したい通貨ペアで、自由な方法で、取引したいときに取引可能。
- 企業のように決算期を気にして「あと○○円稼がねば!」と取引する必要なし。
こうして考えると、「自分の資金の範囲内で、取引したいときだけ、自由に取引できる」これが個人の強みではないでしょうか。
個人の強みを生かした取引をする
トレードする人の性格にもよりますが、取引方法の例はいくつかあるでしょう。
- 勝率が高いパターンだけで取引する。
- 希望のパターンが出ない場合は、ずっと取引しない。
- 取引開始から決済まで1か月~1年以上というトレードも考えてみる。
- 含み損が出ても放っておける取引量で長期トレードする。
もちろん、スキャルピングが好きな人はスキャルピングを極めて良いと思います。
また、トラリピに代表されるリピート系注文も、個人向きです。
というのは、個人だったら含み損は無視して実現利益だけ考えることが可能です。しかし、機関投資家の場合、含み損益も反映した損益を考える必要があるからです。トラリピは常に含み損が出ることを想定した取引です。
「今は円高で含み損が多いけど、トラリピで利益が出ているからトータルで損でもいいや」なんてことは、機関投資家では難しいでしょう。
しかし、どの取引方法を採用するにしても必須なのは「勉強すること」です。
何となく儲かりそうだから、という理由でトレードを始めると、大半の人はお金を失うことになるでしょう(稀に大儲けする人もいるようですが)。
カナダ・ケベック州の金融当局のホームページに、これを端的に示す記事タイトルがありました。
確かに、その通りです。