長期トレードのやり方
投資の基本は、「安値で買って高値で売る」です。FXの場合は、「高値で売って安値で買い戻す」も基本形とみなせるでしょう。
そこで、長期トレードのやり方を考察します。
【1】長期トレードとは
【2】特徴
【3】長期トレードに必要なもの
・長期チャート
・スワップポイント
・資金と精神力
【4】主要通貨ペアの値動き
・1993年以降の米ドル/円
・各通貨ペアの円高記録
・歴史的安値が出現した年
【5】長期トレードに向かない通貨ペア
【6】関連記事一覧
長期トレードとは
長期トレードという場合、使う人によって期間が異なります。例えば、スキャルピングが好きな人の場合、ポジション保有時間が5分と言えば長期と言えるかもしれません。その一方、月足でトレードする場合はポジション保有期間が1か月だと、短期の部類に入るでしょう。
ここで考察する長期トレードは、ポジション保有期間がおおむね3ヵ月~1年以上(数年以上もあり)というイメージです。そして保有し続けて利食いを狙いますが、損切りになることもあるでしょう。結果がどうなるか。それは分かりません。
取引を開始した時点で、私たちができることはほとんどありません。後は、自分で決めたトレードを自分で邪魔しないように、じっと見守るだけです。
この「見守る」という行動ができるかどうか…これが勝敗を分ける要素の一つです。
ただし、この「見守りの技術」は、月足や週足に限ったことではなく、日足・時間足・15分足など、どれでも必要な技術です。これができないと、利食いできても利幅はとても小さくなります。すなわち、「利小損大」への道を突き進む可能性があります。
特徴
次に、長期トレードの特徴を考察します。
インジケーター不要
月足チャートを使う場合は特に、インジケーター不要というのが特徴です。
というのは、インジケーターとは過去の為替レートを加工することでトレード機会を探すものだからです。月足だと、1つの足ができるのに1か月もかかります。インジケーターのシグナルを待っていると、その間に為替レートが遠くに進んでしまうことが珍しくありません。すなわち、取引できません。
なお、デイトレードだったら、あるトレードチャンスを逃してもすぐに次の機会を待つという切り替えが可能でしょう。しかし、月足の場合は、なかなかそうはいかないかもしれません。待ち時間が長いからです。
そこで、インジケーターを使わないというトレードが多くなります。
ただし、週足の場合は、インジケーターを使っても十分トレードできます。ボリンジャーバンドなどを使って、週足でトレードしても面白いかもしれません。
どのFX口座でもOK
特定のFX口座の機能を使いたいと思えば、そのFX口座で取引する必要があります。しかし、長期トレードの場合は、どのFX会社を使ってもOKです。特別な機能が必要というわけではないからです。
成行注文、指値注文、逆指値注文、OCO注文。これだけで十分です。これ以上は不要ともいえるので、どのFX口座を使っても問題ありません。
スプレッドも考えなくてOK
FX会社の間では、スプレッド競争が盛んです。米ドル/円に至っては、0.2銭未満が最前線となっています。インターバンク市場のスプレッドよりも狭いという勢いです。
しかし、長期トレードについては、スプレッドは無視してもOKです。なぜなら、利食いするときの利幅は500pipsや1,000pipsという数字だからであり、利幅が1,000pipsということは、1万通貨の取引でも利幅は10万円になります。
長期トレードは、資金力が不十分で大きな数量で取引できない場合でも、比較的大きな利幅を見込めるメリットがあります。これだけ損益幅が大きいと、スプレッド競争で0.1pipsの差を比較するのは意味がありません。誤差にもならないという感じです。
そこで、長期トレードの視点でFX口座を選ぶとき、重要なのは以下の通りになります。
- 取引システムが使いやすい
- スワップポイントが顧客不利でない
取引システムが使いやすいかどうかはユーザーの感覚次第ですから、自分で使ってみる必要があります。
メリット
このような長期間のトレードになりますと、大きなメリットがあります。それは、「取引開始が数日~数週間程度遅れても、問題ないことが多い」ということです。
一般的に、忙しかったり出張があったりして、何日もチャートを見られないという場合は少なくないでしょう。しかし、長期トレードの場合、数日程度の遅れは問題にならないことが多いです。1か月くらい取引が遅れてもOKな場合も、少なくありません。
よって、忙しい人に適したトレードだと言えそうです。
デメリット
上の点はメリットですが、それが同時にデメリットになる場合もあります。それは、「取引頻度が高くない」ということです。
デイトレードの場合、1日のうちに何度も取引可能かもしれません。しかし、長期トレードの場合はそうはいきません。そこで、取引対象とする通貨ペア数を多くする必要があります。
米ドル/円だけで取引するのも良いですが、それだけだと、取引機会は数年に1回くらいしかないかもしれません。そこで、もっと取引機会が欲しい場合は、長期トレードに加えて短期でもトレードをすることになります(のんびりやりたい場合は、長期のみ)。
長期または短期のいずれかに絞る必要はありません。
長期トレードに必要なもの
安値で買って高値で売る場合、最初に安値で買って、次に高値で売ることを目指します。この手法で成功するために必要なものを、確認します。
長期チャート
長期トレードで必要なのは、歴史的な安値を確認するための長期チャートです。可能なら、バブル崩壊以降くらい(1990年代前半以降)を表示できるのが望ましいです。
と言いますのは、円を含む主要通貨ペアは、バブル崩壊前後から値動きが大きく変わったからです。下は、米ドル/円の長期チャートです(DMMFXから引用)。
1976年以降を表示しています。
米ドル/円に限らず、豪ドル/円なども似たような動きになっています。
下は、上のチャートに矢印等を追加したものです。バブル崩壊くらいまで、大きく円高になったことが分かります(左側矢印)。その後は、長期レンジになっています(赤い四角)。
ということは、安値で買う場合、赤い枠部分のチャートを準備したいです。
2000年くらい以降の表示でも長期トレードは可能ですが、1990年代に重要な値動きがある場合、それを見落としてしまう可能性がありますので、要注意です。
スワップポイント
チャートと並んで重要なのが、スワップポイントです。なぜなら、長期トレードで年単位でポジションを保有している間、スワップポイントがプラスかマイナスかというのは、とても大きいからです。
とはいえ、多くの場合、円を売って外貨を買うとスワップポイントはプラスになることが一般的です。
2021年現在、円を含む主要通貨ペアのスワップポイントはゼロ近辺で推移しています。よって、スワップポイントの重要性は以前ほどではなくなっています(継続的にマイナスでないことが大切)。
なお、スワップポイントは、FX会社ごとに数字が大きく異なります。過去の推移を把握することも容易ではありませんので、便宜的に政策金利で考えることもできます。
例えば、「米国と日本の政策金利を比較して、米国の方が高ければ、米ドル/円を買う時のスワップポイントはプラスだ」という具合です。
資金と精神力
また、資金と精神力も必要です。
資金
資金はどれくらい必要か?ですが、多額でなくても構いません。例えば、米ドル/円を歴史的安値あたりで買えたとします。すなわち、米ドル/円=80円くらいです。
そして、過去最安値は75円くらいです。75円よりも円高にならないと想定するなら、1,000通貨買う時に必要な証拠金は1万円に満たない額です。
少ない資金で長期トレードできる理由ですが、歴史的安値を狙って買おうとしているからです。高値で買う場合、そこから円高になる場合に備えて、十分な資金を準備しなければなりません。この違いは大きいです。
精神力
精神力と書くと大げさかもしれませんが、要するに待つことです。長期トレードですから、ポジションを年単位で保有してもおかしくありません。その間に、ちょっとした含み益で利食いせず、最終的に大きな利食いをするために待ちます。
とはいえ、ポジションを持ち続けるのは意外に大変です。下の米ドル/円の月足チャートで、その様子をシミュレーションします。
赤数字1部分で、期待通り買ったとします。2012年1月前後です。その後、2014年くらいになると、レンジ相場になりました(赤数字2部分)。上のチャートは月足ですから、赤数字2の期間は1年以上になります。
その間、上昇もせず下落もせず、時間だけが過ぎていきます。最終的には円安になりましたが、円高に反落する可能性もあります。
この状態でポジションを持ち続けるのは、大変です。
この場合は、ポジションの一部だけ利食いする案があります。この利食いで、気持ちを楽にします。その後円安になったら、残りのポジションで利食いします。円高に反転したら既に一部を利食いしていますので、気持ちを穏やかにできます。
主要通貨ペアの値動き
では、以上の前置きを頭の片隅に置きつつ、主要な通貨ペアを概観しましょう。
取引する際には、シミュレーションも大切です。
1993年以降の米ドル/円
下のチャートは、1993年以降のチャートです。今回は「安値で買って高値で売る」を考えていますので、安値に注目しましょう。
- 安値1:1995年の米ドル/円=79円
- 安値2:2011年の米ドル/円=75円
米ドル/円の円高記録は、70円台半ばから後半だと分かります。この2つの年は、特徴的な出来事がありました。
1995年:阪神淡路大震災
震災後、当時の円高記録79円を記録しました。
2011年:東日本大震災
震災後、円高新記録の75円を記録しました。
今後どうなるか不明ながら、「円高時に大災害がある場合、円高記録を更新する可能性がある」を想定して行動するのが候補になります。
トレード手法
では、再び、米ドル/円の円高記録が視野に入ってきたとしましょう。安値で買う長期トレードを考えます。歴史的安値になったから買う、という方法でも構いませんが、それでは焦る場面があるかもしれません。
と言いますのは、円高記録を更新する可能性があるからです。
1995年3月、当時の円高記録米ドル/円=79円を記録しました。そして2011年頃、その記録が近づいてきた時点で大きく買ったとします。
実際には、79円を超えて75円になりました。
79円までしか想定していなかった場合、年単位で含み損のプレッシャーを感じることになります。これは厳しいです。かと思いきや、当時、財務省・日銀による円売りドル買いの市場介入が実行されていました。こちらは円安要素です。
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円高要素と円安要素が入り混じり、精神的にストレスを抱えることになります。よって、歴史的円高だから買うという場合、一気に買うのではなく少しずつ買うのが案になります。
超円高の日本を想像する
なお、どこまで円高になりうるか?ですが、シミュレーションしてみるという案もあります。リーマンショック(2008年)から2012年前半までの超円高時代、こんなことが良く噂されていました。
「これ以上円高になると、日本から製造業がなくなる」です。
日本で製造して輸出する場合、円高は不都合です。卸売価格1ドルの商品を輸出する場合、1ドル=120円ならば売上120円ですが、1ドル=80円だと80円しかもらえません。
「円高で売上が3分の2になったから、給料も3分の2にします」というわけにもいきませんし、高コストで低収入なら企業を維持するのが大変です。
ここから、想像力を膨らませます。例えば、米ドル/円=60円の世界を考えます。
- 日本の製造業は、余程の体力がない限り海外に逃げるか衰退
- イノベーションがない限り、日本の産業は空洞化する
- 日本は法人税等が不利であり、日本でのイノベーションは期待薄
- さらに、少子高齢化で活力が失われる
- そんな国の通貨を欲しいと思うか?(いや、思わない)
- ということは、超長期的には円が敬遠されて円安になるのでは?
ならば、超円高になった時点で、円売りドル買いをすれば良いのでは?という発想が可能です。この案を採用する場合、超円高時は米ドル/円の買いです。
ただし、上の諸点は想像力を膨らませてシミュレーションした結果です。そこで、レバレッジは1倍台、最大でも2倍に抑えます。米ドル/円=80円でレバレッジ2倍で買えば、米ドル/円=50円を割り込んでも強制ロスカットを回避できます。
各通貨ペアの円高記録
上の米ドル/円と同様にして、他の通貨ペアについても考察できます。ここで、主要な通貨ペアの円高記録を確認しましょう。
- 米ドル/円:75円
- ユーロ/円:88円
- ポンド/円:116円
- 豪ドル/円:55円
- NZドル/円:42円
- カナダドル/円:60円
この数字に近い為替レートになったら、円高記録を更新するリスクを警戒しつつ、長期トレードを検討できます。
歴史的安値が出現した年
また、円高記録が出現した年代を確認します。〇は、円を含む主要な通貨ペアで、歴史的安値が出現した年です。
2001年 〇
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年 〇
2009年 〇
2010年 〇
2011年 〇
2012年 〇
2013年
2014年
2015年
2016年 〇
出現頻度が意外に高い
以上の通り、長期間を通してみますと、意外に歴史的安値の出現回数が多いと分かります。
歴史的な安値が出現してから買いたいけれど、今はそうではない…という場合も、何年か待てばチャンスがやってくるかも?ということになります。
ただし、歴史的安値が出現するときは、何らかのショックが起きている時でもあります。そのような状況でも買えるか?が勝負の分かれ目になりそうです。
ざっくり見て、こんな感じです。
- 2000年~2001年くらい:ドットコムバブルの崩壊
- 2000年~2001年くらい:ユーロの信頼度が低い
- 2008年以降~:リーマンショック後の混乱期
- 2016年:イギリスのEU離脱問題
何年も安値にならない場合もある
歴史的な安値が頻発する時期もあれば、逆に、何年にもわたって出現しない場合もあります。この時期は、全体的に円安になっているということです。
この期間は、投資の王道「安値で買って高値で売る」はお休みです。何か別の手法を使ったり、FX以外のトレード対象に視野を広げたりできます。
長期トレードに向かない通貨ペア
その一方で、この記事でご案内している長期トレードに向かない通貨ペアがあります。それは、トルコリラ/円などの新興国通貨ペアです。
下のチャートは、FXプライムbyGMOからの引用です。
1993年8月には9,000を記録しています。この数字は極端ですが、2000年以降も基本的に円高で推移しています。
この記事では、安値で買った後の円安を期待する長期トレードを考察しています。よって、トルコリラ/円などの新興国通貨ペアで長期トレードする場合は、円安でなくスワップポイント重視で考察することになります。