FX業者の中には、オプション取引ができるところがあります。そこで、IG証券のノックアウトオプションと、SBIFXトレードのオプションFXを比較してみます。
2つのサービスを確認
このブログでは、オプションFXについて、概要を分かりやすく説明した記事はありません。ノックアウトオプションについては、下の記事が参考になるかな?と思います。
【関連記事】ノックアウトオプションのメリットを生かす
そこで、比較の前に、ざっくりと2つのサービスを確認しましょう。
ノックアウト・オプション
ノックアウト・オプションは、FXと異なる金融商品です。含み損が膨らんで、特定の為替レート(ノックアウトレベル)が実現すると、強制的に決済されます。
取引可能期間は、最長で1年間です。
必要なコストは、含み損の相当額と、プレミアム(手数料)です。
例えば、米ドル/円=100.00円のとき、1万通貨買うとします。そして、ノックアウトレベルを99.00円とします。この取引で必要な金額は、含み損1円分の金額(1万円)と、プレミアム(数百円前後)です。
概ね、必要なコストは10,100円~10,200円くらいのイメージです。FXと比較して、とても少ない資金で取引できるのが特徴です。
オプションFX
一方、SBIFXトレードのオプションFXは、「バニラオプションの買いのみ」です。下は、取引画面です。
一番左に「権利行使価格」があります。特定の日時(権利行使日)の為替レートと、権利行使価格の差が損益になります。その右に「新規買」があります。これが、プレミアム(手数料)です。
例えば、米ドル/円が上昇することを期待して、権利行使価格109.00円のオプションを、1万通貨買うとします。権利行使日の為替レートが110.00円だとしますと、損益は以下の通りです。
(110-109)×1万-6,985円=3,015円
6,985円がプレミアムです。
オプションのメリット
オプションのメリットを、簡潔に確認しましょう。「最大損失額があらかじめ確定していること」です。
FXの場合、損切りをためらっていると、際限なく損失が膨らむリスクを抱えます。一方、オプションにはそのリスクは全くありません。
特定の条件が満たされれば、自動的に決済されてしまうからです。
よって、オプションは難しいかも?という感じかもしれませんが、実は、通常のFXよりも初心者向けの商品だということも可能です。
なぜなら、初心者だと、こんなことをしてしまいがちだからです。
その結果、大損失になります(ゆったり為替は、これをやってしまい、大変な目に遭いました)。
ノックアウトオプションとオプションFXを比較
では、この2つのサービスを比較していきます。この比較は、ゆったり為替の視点で書いています。全員に当てはまるわけではないことをご了承ください。
取引可能な原資産
原資産とは、オプションで取引可能な対象のことです。ノックアウトオプションで取引可能な範囲は、以下の通りです。
- 米ドル/円など14通貨ペア
- 各国の株価指数(日経225など11種類)
- 原油など4種類
一方、オプションFXは、米ドル/円のみです。
この1項目だけで、ノックアウトオプションの圧勝だと結論付けることが可能です。といいますのは、どれだけ優れた機能を持っているとしても、取引できなければどうしようもないからです。
例えば、オプションFXでユーロ円を取引したいと思っても、できません。米ドル円だけ取引可能です。
一方、ノックアウトオプションは、主要通貨ペアのみならず、世界の株価指数でも取引可能です。
分かりやすさ
FX愛好家の視点で考えますと、ノックアウトオプションの方が分かりやすいでしょう。
イメージとしては、「損切りしたい位置を指定して、プレミアムを少し支払えばOK」です。
「含み損の最大値+プレミアム」ぐらいを準備すればOKということは、FXのような証拠金(取引額の4%)は不要です。
すなわち、より少ない資金で大きな取引が可能です。
オプションFXの場合は、バニラオプションのルールを知っておく必要があります。ここが、少ししんどいかもしれません。
もちろん、ノックアウトオプションについても、ルールを知っておく必要があります。しかし、馴染みのあるFXのルールを背景にして考えられるか、そうではないか、という差は大きいです。
利幅の得やすさ
この項目も重要でしょう。回答としては、「どちらが有利か、一概に言えない」です。つまらない回答になりますが、これは仕方ありません。
円安なら成功になる米ドル円のオプションを買う場合について、場合分けして考えます。
大幅円安で終わる場合
大幅円安の場合、ノックアウトオプションでもオプションFXでも、利食いになります。
ノックアウトオプションの場合、購入時点の為替レートと満期時の為替レートの差が利益になります。
オプションFXの場合は、権利行使価格と満期時の為替レートが基準になります。
取引開始の為替レート付近で、満期を迎える場合
ノックアウトオプションの場合、利食いになる可能性があります。プレミアム(手数料)は、通常は1銭~数銭というレベルです。
よって、少しでも円安に動いていれば、最終的にプラスで終われる可能性があります。
オプションFXの場合は、どの権利行使価格を選択したかによって、大きく変わってきます。
しかし、プレミアムの額は、通常時で数銭~数十銭以上というイメージです。取引開始レート付近で満期を迎えると、損になりそうです。
大幅円高で満期を迎える場合
この場合、どちらも損になります。しかし、FXのように、損失が無限に拡大する可能性はゼロです。最大損失額は、あらかじめ決まっています。
ちなみに、オプションFXで、権利行使価格が現在値よりも大幅に円高のオプションを買えばどうか?と考えるかもしれません。
この場合、円高で終了しても、権利行使価格よりも円安ならOKということになります。
しかし、この場合、プレミアムがとても大きいです。プレミアムを考慮すると、マイナスになるでしょう。
以上の通り考えますと、ノックアウトオプションの方が有利です。といいますのは、手数料に相当する額が、圧倒的に異なるからです。
- ノックアウトオプション:数銭くらい
- オプションFX:数銭~数十銭以上
ただし、オプションFXの方が有利な場合があります。相場が乱高下する場合です。
乱高下する場合
2019年1月3日、米ドル/円が大暴れしました。下の週足チャートは、IG証券からの引用です。真ん中あたりで、巨大な下ヒゲが出ています。
2018年12月は110円を上回っていたのに、この日の最安値は104円を割り込んでいます。
ノックアウトオプションの場合、ノックアウトレベルによっては、この下ヒゲでロスカットになっていたことでしょう。
一方、オプションFXの場合は、ロスカットになりません。満期時の為替レートを基準にするためです。
よって、為替レートの乱高下が予想される場合は、オプションFXの方が有利かもしれません。
問題点があるとすれば、このような乱高下は、1年のうちに何回あるだろうか?です。それほどないと思うなら、この点はあまり考慮しなくてもOKという判断になるかもしれません。
取引画面の分かりやすさ
なお、取引画面の分かりやすさですが、IG証券に工夫が見られます。下は取引画面の一部です。赤枠と数字(1~3)を追加しています。
赤枠1部分で、現在値と取引数量が表示されます。赤枠2部分で、ノックアウトレベルと、これが実現する場合の損失額が表示されます。そして、赤枠3で、プレミアムが明記されています。
為替レートがどこまで動いたら損になるのか、プレミアム(手数料)はいくらなのか、パッと見て分かります。
分かりやすいというのは、極めて重要です。
オプションFXで改善できる点
ゆったり為替は、ノックアウトオプションの方が優れていると結論づけました。そこで、オプションFX(SBIFXトレード)で改善できる点を考察します。
通貨ペア数の拡大
取引可能な通貨ペアが米ドル/円だけだと、ツライです。主要通貨ペアを網羅してほしいと思います。
オプションの売り
バニラオプションは、売りもできないと価値が大幅に減ると思います。よって、売りもできたらいいな、と思います。
ただし、一般のユーザーが売りをするのは、リスクが大きすぎると思います。一定の条件を満たしたユーザーにのみ許可する、といった施策が必要になりそうな気がします。
プレミアムを安く
ブラック・ショールズ方程式で算出されるプレミアムに、自社の収益を追加した額がプレミアムになっているでしょう。プレミアムを安くするのは難しいかもしれません。
しかし、ノックアウトオプションのプレミアムの安さと分かりやすさと比較すると、オプションFXは劣勢だと言えそうです。
満期
ノックアウトオプションの満期は、最大で1年です。すなわち、デイトレーダーにとっても、中長期のトレーダーにとっても、全く不満がありません。
オプションFXの満期は、最長で1か月くらいです。これだと、満期までの期間が短くなるにつれて、満期を気にしながらの売買になります。
FXを基準とするユーザーから見ると、少々厄介です。
まとめ
比較のまとめをします。ゆったり為替は、FXを主戦場にしています。その視点で見ると、ノックアウト・オプションが有利かと思います。
- 取引銘柄数の多さ
- ルールの分かりやすさ
- プレミアム(手数料相当額)の分かりやすさ
- ノックアウト・オプションの場合、プレミアム不要な取引ができる
- 2019年1月3日のような急変が起きる頻度は、高くない
銘柄数の差が、決定的だと思います。皆様は、いかがでしょうか。
オプションで長らく活躍されてきた方ならば、オプションFXの方がやりやすいかもしれません。今まで何をしてきたかというのは、とても重要な要素でしょう。
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