自己資金30万円でトラリピをしたい、という意見をいただきました。そこで、どんな設定ができるか、検討しましょう。
30万円という制約について
30万円でトラリピしたい場合、大きく分けて2つの意味があるように思います。
- 分散投資の一環として、30万円をトラリピに向けたい
- 全力で集めた30万円を、トラリピに投入したい
分散投資の一環だったら、比較的安全です。トラリピは数多くの利食いを繰り返しますが、いつも勝てるわけではありません。
分散投資だったら、トラリピが不調だったとしても、他のトレードと合計して損益を考えられます。
一方、全力投球で30万円行きます!という場合、緊張感が大きいです。
損切りを避けるか、損切りしても利食いとの合計でプラスを目指します。難易度が高いです。できることなら、「分散投資の一環として30万円」が望ましいです。
とはいえ、分散投資であっても損して良いわけではありません。そこで、長期取引・短期取引に分けて、損失リスク回避を重視するスタイルを考えます。
30万円で長期のトラリピ設定
長期という場合、1年以上継続してトラリピすることだとしましょう。1年間は長いです。すなわち、その間に、為替レートは大きく上下動します。
例えば、米ドル/円の1年間の値動きの大きさは、以下の通りです。高値と安値の差です。
- 2014年:21円(2,100銭)くらい
- 2015年:10円(1,000銭)くらい
- 2016年:23円(2,300銭)くらい
- 2017年:11円(1,100銭)くらい
- 2018年:10円(1,000銭)くらい
- 2019年:8円(800銭)くらい
今後、1年間でどれくらい動くか分かりません。絶対に損切りを回避したい場合は、2014年や2016年のような、20円の値動きを想定した資金管理が必要です。
そして、値動きの大きさと必要な証拠金額の関係は、以下の通りです(概算)。50銭ごとに1,000通貨を買う場合です。
- 値動きの大きさが5円の場合:8.5万円くらい必要
- 値動きの大きさが10円の場合:21万円くらい必要
- 値動きの大きさが15円の場合:40万円くらい必要
- 値動きの大きさが20円の場合:60万円くらい必要
すなわち、20円の値動きを想定すると、30万円では全然足りないということになります。そこで、対策を3つ考察します。
対策1:注文の幅を広くする
50銭ごとに買うと、30万円を大きく超える資金が必要だと分かりました。
ならば、100銭ごとに買って100銭の含み益で利食いさせれば、必要な資金は半分くらいになります。1年で20円くらい動いてもトレードを続けられます。
問題点があるとすれば、利食い頻度が小さくなることです。その分だけ、退屈かもしれません。
その場合は、利食いやスワップポイントで資金が蓄積するのを待ちます。ある程度増えたら、注文を1つ追加します。
そうすれば、追加した注文の前後については、50銭ごとになります。利食い幅も100銭から50銭前後に変更することで、頻繁な利食いを期待できます。
対策2:高値を避け、安値で取引する
上の試算は、値動き全体で取引するという前提があります。しかし、それはリスクをはらんでいます。
と言いますのは、高値で買った後に急落したら、高値のポジションは大幅含み損になってしまうからです。
そこで、考え方を少し変更します。「高値では取引しない」です。カナダドル/円の月足チャートで、具体例を見てみます。
チャート左下にある矢印部分は、2008年のリーマンショック後安値です。およそ68円くらいの水準です。
そして、この記事を書いている時点の為替レートは、80円台です。その差は、12円くらい。
カナダドル/円=100円といった為替レートでトラリピを始めると、リーマンショック後安値との差は32円にもなります。
しかし、現在値が「そこそこ」の位置にある通貨ペアを選ぶと、安値までの距離が短くなります。
こういう通貨ペアを探すと、必要な証拠金を少なくできます。
対策3:為替レート水準が低い通貨ペアを狙う
さらに、別の考え方もできます。
「どんなに下落しても、20円の下落があり得ない通貨ペアだったら?」です。たとえば、南アフリカランド/円です。
南アランド/円は、10円に満たない為替レートです。すなわち、20円の下落を想定しなくてもOKです。10銭や15銭ごとに買うという設定でも、安全度を高くできます。
ただし、新興国ならではのリスクがあります。
リスクを並べるよりも、チャートで確認した方が早いでしょう。下の長期チャートは、2006年以降の南アランド/円です。
上のチャートで明らかなとおり、円高傾向です。南アランド/円に限らず、新興国通貨ペアは長期的に円高傾向です。
今後もこの傾向が続くなら、買ったまま利食いできないポジションができてしまいます。この対処法は、主に3つです。
- 円安の注文を徐々に減らす
- 今までの利益の一部を使って、損切り
- スワップポイント狙いに切り替え
順に見ていきます。
円安の注文を徐々に減らす
円安の位置で買って、利食いを繰り返すとします。しかし、為替レートが円高傾向ならば、いつの日か利食いできない日がやってきます。
そこで、最も円安の注文を利食いしたら、その注文は取りやめにして、円高部分に注文を移動します。
こうすれば、買ってみたけれど利食いできずに含み損…というリスクを緩和できます。
今までの利益の一部を使って損切り
円安で買って利食いできなくなったポジションについては、今までで得た利益の範囲内で損切りします(損切りしても、トータルではプラスを維持します)。
損切りは嫌かもしれません。しかし、損切りすると、ポジションが減った分だけ、証拠金に余裕ができます。その証拠金を使って、現在値あたりに新規にトラップを仕掛けます。
こうすれば、再び利食いを繰り返してくれると期待できます。
スワップポイント狙いに切り替え
どうしても損切りしたくない場合は、スワップポイント狙いポジションとして維持します。
為替レートは0以下になりませんから、含み損の大きさには上限があります。その一方、スワップポイントには上限がありません。
含み損の最大値以上にスワップポイントを蓄積すれば、どれだけ円高になっても損しないポジションとなります。
30万円で短期のトラリピ設定
以上、長期トレードの場合を考察しました。次に、30万円で短期の取引設定を考察しましょう。取引期間は、おおむね1年未満です。
トラリピが最も活躍するのは、相場がレンジになっているときです。そこで、レンジになっている部分を探してトラリピ実行です。
なお、ここでは短期トレードを考察していますから、比較的短い期間でトレードが終了します。すなわち、為替レートが都合の悪い方向に突き進む場合に備えて、損切り注文が必須です。
下のチャートはイメージです。円安部分の買い注文と、円高部分の買い注文も表示しています。
どの買い注文も、利食い幅は一定です。しかし、為替レートがレンジを外れて損切りになる場合、損切り額は異なることを示しています。
円安のポジションの方が、損失額が大きいです。
同じ利幅を狙うのに、円安部分では大きなリスクを取り、円高部分ではリスクが小さいという設定になります。そこで、リスクを減らします。
「レンジの下限部分でだけ、トラリピする」です。
こうすれば、損切りになっても、損失額は少なくて済みます。そして、「損切りになるときの損失額よりも、利食いで得た合計額を大きくする」ことに全神経を集中します。
実現すれば、その後に円高になっても円安になっても、トータルで損することはない完璧な取引設定が完成します。
なお、この方法を採用すると、為替レートがレンジの上の方で動くときに、全く約定しません。つまらないですが、ここは我慢です。損切りで損することを考えれば、じっと待つ方が良いです。
また、レンジの上限で、売りのトラリピをするという方法もあります。こうすれば、取引機会が2倍になります。
ハーフ&ハーフとは違う
なお、この方法は、M2Jがリリースしている「ハーフ&ハーフ」とは異なります。ハーフ&ハーフのイメージ図は、下の通りです(M2Jから引用)。
レンジの上半分で売り、下半分で買います。ゆったり為替は、この方法を採用したことはありません。ここで想定している方法は、下の通りです。
2か所、赤で「取引OK」と書きました。この部分でのみ取引します。上部分は、売りのトラリピです。下部分は、買いのトラリピです。
こうすることで、損切りするときの損失額を限定的にできます。
また、この取引設定を使う場合、広い範囲にトラップを仕掛ける必要がありません。すなわち、手元資金30万円でも、問題なくトラリピを実行できます。
レンジを読めるか
なお、この方法ですが、成否は「レンジを読めるか」にかかっています。
レンジで取引すべきとする裁量トレードは、少数派でしょう。その理由は2つ。
1つは、トレンドの方が大きな利益を狙えることです。もう一つは、適切なレンジを見つけるのは大変だ、ということです。
よって、レンジを見つけてトラリピする方法は、難易度が高いかもしれません。レンジを探す場合、上値と下値の両方の目途が分かる必要がありますし。
それは大変ですから、下値支持線(サポートライン)を見つけて買いだけ、あるいは、上値抵抗線(レジスタンスライン)を見つけて売りだけやる方が、成功確率が高いと期待できます。
関連記事 リスク・失敗パターン 長期運用 通貨ペア分析 リピート系FXの比較