1か月という期間は長いと思っていたが、あっという間に過ぎてしまうものだ。1か月後にサリーの授業を受けることになっていたが、もうその日が来てしまった。
→ 小説:伝説のFXトレーダー

今回も有給休暇をとってサリーのオフィスへ行く。

「こんにちわ。タケシです。サリーとの約束で来ました」
「タケシさんですね。お待ちしていました。こちらの会議室でお待ちください」

前回と同じ受付の人に案内されて会議室に入った。前回とは違う部屋で、とても明るくて開放感がある。

会議室

「こんにちわ、タケシ。元気だった?」
「こんにちわ。おかげさまで元気にしています」
「そう、それは良かったわ。じゃあ、今日の授業を始めましょう」
「はい」

「その後、どうだった?」
「まだトレード方法は固まっていませんが、少しずつ前に進んでいる感じです」
「とても良いことだわ」


どうやら、今回も”気付き”を教えてくれるだけのようで、サリーから具体的な話を始める感じではない。そこで、タケシは自分から話を始めることにした。

「今の状況を説明しますので、”気付き”が必要だと思うことがあったら指導をお願いします」
「分かったわ」

「まず、俺はレバレッジ25倍の規制が不満でした。十分な資金がないのだから、しっかり稼ぐにはレバレッジが大きくなければならない。そこで、レバレッジ100倍の業者を見つけて口座を作りました」
「100倍・・・!!」
「サリー、何かありました?」

「・・・。”気付き”の授業を始めましょう」
「え?もうですか?参ったなあ。」

いきなりツッコミが入りそうで困ったが、サリーの顔も困惑しているような感じに見える。


「最初に確認させて。あなたは株式会社を設立したの?」
「え?何を言っているんですか?俺にそんな能力はありません」
「じゃあ、そのFX会社は金商法の登録を受けている?」
「キンショーホー?金賞?僅少?」
「そうよね、金商法を知っていればその会社で口座を作らないものね。レバレッジ100倍のその業者は違法業者よ」
「い・・・違法?」
「正確に言えば、日本の居住者に対してFX取引のサービスを提供する会社は、金商法に基づく登録をしなければならないの。登録をすれば登録番号が発行されるわ。番号がなければ、違法に日本国内で営業しているということになるの」


===== 解説 : 金商法 =====

金商法とは、金融商品取引法の略称。
金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、利用者保護ルールを徹底させるなどの目的のために制定されました。業務内容により、第一種と第二種に分けられます。管轄官庁は金融庁です。

登録業者は概ね、業者ウェブサイトに「金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第○○号」といった表示をしています。金融庁ウェブサイトでも、業者一覧を閲覧できます。

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「はあ、法律に違反とか、面倒なことには関わりたくないな。でも、レバレッジ100倍って魅力だしなあ」
「そうよね。じゃあ、無登録の海外業者で取引してトラブルになる場合を考えてみましょうか」
「はい」

「例えば・・・いきなりタケシの口座が凍結されてしまって、お金を引き出せなくなった。理由を確認すると、”不正な取引”があったとメールで知らせが届いていた。さて、どうする?」
「怒ります」
「誰に?」
「その会社に」
「どうやって?」
「たぶんメールです」
「タケシって、英語が堪能だったかしら?」
「あ・・・。でも、日本人相手に商売しているのだから、日本語でも受け付けてくれるのでは?」
「運がよかったらね」
「・・・」

「じゃあ、英語で抗議することができたとして、その会社はまともに対応しないとしましょう。どうする?」
「金融庁?などに助けを求めるかな」
「相手は外国に拠点のある会社よ。金融庁は日本の機関よ。問題となっている額が10万円とか100万円といった状態で、何かしてくれるかしらねえ」
「うーん・・・じゃあ、弁護士に相談する!」

「それはいいかもね。この内容に対応できる弁護士を探して、1時間あたり10,000円の相談料を支払って、文書作成の度に数万円支払って、何か月もかかって、結局お金を取り戻せるかどうか分からないけどね」

「あちゃー。駄目だ。それじゃあ、お金を取り戻せても赤字になるかも」
「そうね」

「でも、本当にそんなトラブルってあるのかなあ」
「インターネットで検索してみましょう」

サリーは、慣れた手つきで検索を始めた。

「検索すると、ヒットするわね。どれだけの人が問題を抱えているか分からないけれど、問題が起きていそうだということは分かるわね」
「あと、海外の業者も、日本で登録すれば営業できるのよ。登録しないというのは、登録できない理由があると考えるべき。レバレッジで不満があるのは分かるけれど、日本の法律に従う業者で取引しないと、変なリスクを抱えたまま取引するということになるわね」
「FXの取引はそもそもリスクがあるのよ。なのに、変なリスクをさらに背負う必要ってある?」

滑り出しでいきなりの駄目出し。これは、先が思いやられるなあ。

→ 海外業者とのバイナリーオプション取引にご注意ください!(国民生活センターHP)
→ 儲かってるのに出金できない?!海外FX取引をめぐるトラブルにご注意(国民生活センターHP)


「そういえば、サリーはさっき、株式会社を設立したのかって聞いたよね。あれはどういうこと?」
「ああ、あれね。レバレッジ25倍規制は個人にのみ有効なの。法人向けサービスだったら100倍でも合法なのよ」
「そうかあ、じゃあ法人を作るという手もあるな」

・・・と思いましたが、タケシはサラリーマンです。タケシの会社は副業を禁止しており、会社を作るとクビになる可能性があるかもしれません。会社を作るという話は、FXで儲けて退職してからのお楽しみ、ということにしましょう。

「滑り出しから少し空気が重くなったわね。このビルの喫茶店に場所を変えてやりましょうか」
「はい、お願いします」


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→ (FX小説その1)小説:伝説のFXトレーダー
→ (FX小説その3)タケシ、トラップ系の取引をしたくなる