2016年7月6日、金融先物取引業協会は、最新のロスカット等未収金発生状況を公開しました。この数字は、借金に陥った顧客の統計情報を公表するものです。
そこで、EU離脱を問うイギリス国民投票(2016年6月24日)の結果を受けた状況を、確認しましょう。
イギリス国民投票でのロスカット等未収金発生状況
下の表は、金融先物取引業協会ホームページからの引用です。個人と法人別に、借金の発生件数と発生金額がまとめてあります。
上の表を見る前に、FXにおける借金とはどういう状況か?を確認しましょう。
顧客は、FX口座に証拠金を入金して取引します。そして、損しました。証拠金の範囲内で損する場合、口座残高が減ります。口座残高以上に損する時、借金となります。
すなわち、以下の通りです。
- 口座残高が0円になる
- さらに損する
踏んだり蹴ったりの状況だと分かります。
さて、表に戻りまして、イギリス国民投票は2016年(H28)6月です。上の表の一番下です。個人の結果を見ますと・・・
- 発生件数:2,047件
- 発生金額:193,553,000円(1.93億円)
- 1件当たり金額:94,554円
2,000人以上の人が、預入証拠金をすべて失い、かつ、借金を背負ったということです。一人当たり金額は10万円弱です。
ゆったり為替はこの数字を見て、「金額が小さい」と思いました。というのは、2015年1月のスイスショックの数字を記憶しているからです。
そこで、スイスショックの数字を確認しましょう。
スイスショックでのロスカット等未収金発生状況
2015年1月に発生したスイスショックの際には、以下の数字でした。
- 発生件数:1,137件
- 発生金額:1,948,000,000(19億4,800万円)
- 1件当たり金額:1,710,000円強
イギリス国民投票の結果と比べると、スイスショックは桁違いです。
イギリス国民投票は、いつ行われるか事前に分かっていました。このため、リスク管理を万全にする時間がありました。
しかし、スイスショックは突然発生しました。しかも、スイス国立銀行(スイスの中央銀行)のいきなりの政策転換で、FX業者がいくつも破綻してしまいました。
何が起きても対応できるように、取引金額は十分に小さくしたいです。
借金は、しばしば発生
再び、上の表に戻りましょう。よく見ると、イギリス国民投票以外でも、借金になった顧客が多数いることが分かります。
イギリス国民投票のように、いつもイベント発生前に時間があるというわけではありません。
リスク管理は常に万全にしたいです。
イギリス国民投票前の、ポジション状況
では、国民投票前において、顧客はポンド円をどれくらい保有していたでしょうか。この様子を見ますと、顧客のリスク管理状況が見えてくるかもしれません。
くりっく365では、かつて、毎週火曜日に顧客の売買動向を公表していました。この売買動向で確認しましょう。下のグラフです。
縦軸の単位は、万枚です。1枚は1万通貨です。
ポンド円の買いが、高水準で推移しています。概ね30億通貨です。大変な金額です。逆に、売りの数量は圧倒的に少ないことが分かります。2万枚といったあたりです。
6月24日のイギリス国民投票を控えて、ポジションを減らそうという動きを確認できないことが、分かります。
当時の雰囲気は、「EU離脱派と残留派が拮抗していることは承知しているけれど、なんだかんだ言って、最終的にはEU残留でしょう」という雰囲気がありました。
それを受けた数字でしょう。
スコットランドの国民投票
この雰囲気には、一定の合理性がありました。と言いますのは、大きな国民投票が、2014年にスコットランドで実施されていたからです。
その内容は、「スコットランドは、イギリスから独立すべきか」です。
国民投票実施前には、イギリスのみならず世界から注目されました。しかし、実際に投票してみると、独立反対が優勢となりました。
「あれこれ言われていたけれど、やっぱり現状維持か」という雰囲気です。
この流れが、2016年のイギリス国民投票にも影響した可能性があります。
国民投票の結果は、離脱
ところが、2016年のEU離脱を問う国民投票では、離脱が勝利しました。下は、ポンド円の1時間足チャートです(トライオートFXから引用)。
国民投票締切り直後に、残留派優勢との報道がありました。これを受けて、ポンド円は160円くらいになりました。
しかし、お昼には、離脱が確実となりました。その結果、ポンド円は130円くらいまで円高になりました。
わずか6時間で、30円(=3,000銭)近くの円高です。
ここで再度、ポンド円のポジション動向のグラフを見てみましょう。30億通貨の買いポジションのうち、多くが損失になったのでは?と予想できます。
そして、損が大きすぎた結果、借金になってしまった人が続出しました。
リスク管理は万全に
上の状況から、いくつかの教訓を得られそうです。
- 相場の大波乱が事前に分かっている場合、トレードしない
- ポジション数量は、常に控えめにする
イギリス国民投票のようなビッグイベントの際、トレードに参加しないでチャートを眺めるだけの方が、安全です。
また、いつ大波乱が起きても大丈夫なように、日ごろからポジション数量を控えめにするのも、大切でしょう。
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