チャートを見るとき、どの時間軸を中心にするでしょうか。
統計はないでしょうが、多くの場合、1時間足や日足になるでしょう。スキャルピングをする人なら、5分足や10分足も多いかもしれません。
では、週足はどうでしょうか。週足を使う人は、少数派だろうと思います。
そこで、週足を使うトレードの有効性・価値について検討します。
週足チャートの特徴
週足の有効性を考えるために、週足チャートの特徴を考えます。
FXで代表的な通貨ペアである、米ドル円とユーロ米ドルを並べました(トライオートFXからの引用)。
米ドル円:
ユーロ米ドル:
特徴はたくさんあるでしょうが、いくつか挙げてみます。
- 1つの足ができるのに、1週間かかる
- トレンドが継続しやすい
- 大きな損益幅
- ファンダメンタルズをどのように扱うか
1週間で1つの足ができる
週足チャートですから、1つの足ができるのに1週間を要するのは当然です。そして、この特徴が、トレードに際して大きな影響を与えます。
例えば、1時間足でトレードする場合、1時間ごとにローソク足ができます。すなわち、1日に数回はチャートを確認して、トレードを考えることになります。
週足の場合、始値は月曜日の朝、終値は土曜日の朝です。週末にのんびりコーヒーでも飲みながらチャートを検討できます。
すなわち、土日が休日である社会人にとっては、1時間足よりも週足の方が都合が良い可能性があります。
土日は、相場が止まっています。すなわち、動くことがないチャートを見ながら考えられるのも、メリットです。
1時間足などで取引する場合は、現在動いているチャートを見ながら考えることになります。精神的なプレッシャーが多少なりとも大きくなります。
トレンドが継続しやすい
また、週足はトレンドが継続しやすい、という特徴があります。
上の米ドル円の場合、上昇トレンド・下落トレンド共に、半年から1年弱くらいの間継続しています。
ユーロ米ドルの場合は、1年半以上に渡ってずっとトレンドが継続しています。
ということは、短い時間足に比べてトレンドの把握が容易だと言えそうです。
トレンドの把握が容易だということは、その分だけトレードしやすいという意味でもあります。
利幅を大きくできる
週足トレードの場合、やたらと大きな利幅を狙えるのが特徴です。
例えば、冒頭の米ドル円のチャートを見てみましょう。安値は105円くらい、高値は115円弱です。その差は1,000銭くらいにもなります。
完璧な底値で買って完璧な高値で決済するのは、現実的な話ではありません。そうはいっても、その半分、500銭くらいは狙える値動きです。
ユーロ米ドルのチャートの場合、2018年1月から、継続的に下落が続いています。
そして、チャート内の安値は1.10弱、高値は1.26弱です。その差は1,600pipsにもなります。
EU問題のゴタゴタを反映したトレードに取り組んでいたら、1,000pips級の利幅を狙うことも可能だったでしょう。週足は、このように大きな利幅を狙えるのが特徴です。
損失も大きくなりうる
大きな利幅を狙えるということは、うっかりすると、損失幅も大きくなるということです。
そこで、損切りレートを設定するに際して、あまりに損失が大きくならない工夫が必要でしょう。例えば、以下の例を挙げられます。
- 「利大損小」を徹底する。
- 利幅は週足で考えて、損切りは日足で考える。
2つ目ですが、利幅を週足で考えると、目標値は遠くなります。週足だからです。
そして、損切り位置は日足で考えます。すると、週足で考える場合よりも、損切り位置はずっと近くなるでしょう。なぜなら、日足だからです。
すると、「利大損小」が極端な形になります。「利は巨大、損は少し」という具合です。これがうまく機能すると、良いトレード成績を期待できます。
ファンダメンタルズをどのように使うか
週足の場合、チャートのみを見てトレードするのは、難しいかもしれません。
長期足になると、ファンダメンタルズが為替レートに反映されやすくなり、無視しづらいからです。
直近の例で見ますと、イギリスのEU離脱問題、米中貿易戦争といった時事問題があります。また、景気動向や政策金利動向もあります。
月足ほどではないですが、一定の配慮が必要です。
ここでいう配慮は、数か月程度から1年程度の視野で見る場合、どのように影響するだろうか?という意味です。ジワジワと効いてくる部分を考えます。
短期トレードのように、ヘッドラインニュースだけで為替レートがピョンと飛んでしまうのとは、少し違うイメージです。
なお、ファンダメンタルズの完全無視が不可能なわけではありません。といいますのは、そのようなファンダメンタルズを反映したのが、現在の為替レートだからです。
「ファンダメンタルズをいくら考えても、良く分からない。だったら、相場に意見を聞いてみよう。」という具合です。
週足チャートの人気度
このような特徴があるなら、週足に人気が集まっているか?ですが、お世辞にも人気だとは言えないように思います。
その理由は、退屈すぎるからでしょう。
日足チャートだったら、ローソク足が毎日できます。1時間足だったら、1日で24本もローソク足が作られます。
よって、毎日のように変化するチャートを前にして、トレードを楽しむことができます。
しかし、週足チャートは、大きく異なります。月曜日に始まって土曜日の朝まで待って、ようやくローソク足ができます。退屈すぎます。
情報を発信するメディア側としても、週足は使いづらいでしょう。
- ある日のニュース:週足チャートを見ると、大きな変化はありません。
- 次の日のニュース:昨日と同じ…。
- その次の日のニュース:…。
これでは、ネタ切れも同然です。というわけで、人気度は高くないと分かります。
週足のトレード方法
しかし、人気度がないからといって使わないのは、もったいないです。トレンドを把握するのは大変なのに、週足を見れば分かりやすくなります。
そこで、週足を使ったトレードを考えます。
ゆったり為替のスイングトレード
ゆったり為替のスイングトレードは、日足・週足・月足を使います。この3つをいつも使うというわけではありません。
組み合わせは自由です。「週足と日足」「月足と週足」という具合です。
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月足と週足の組み合わせでトレードチャンスが出現する場合、期待できる利幅はとても大きくなります。スイングトレードの比ではありません。
週足は、スイングトレードでもポジショントレードでも活躍できます。
ピンバー
ピンバーは、プライスアクショントレードの一つです。
週足だけでなく、日足、1時間足、10分足など、何にでも応用が利く優れものです。
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リピート系注文
そして、リピート系注文でも週足が活躍します。リピート系注文とは、トラリピに代表されるトレード手法です。
ただし、リピート系注文の本家トラリピでは、週足は少々使いづらいかもしれません。
その理由を、下のユーロ米ドル週足チャートで確認します。
このチャートで、高値は1.2500くらいです。安値は1.1000を割り込んだところです。今後も下落するかもしれない?そんな形です。
このチャートでトラリピを使う場合、どうしましょうか。
おそらく、売りで取引することでしょう。
では、どの範囲で取引しましょう。1.1000~1.2500の範囲全体にトラップ(注文)を仕掛けるのは、範囲が広すぎます。1,500pipsもあるためです。
そこで、ある程度の範囲に限ってトラップを仕掛け、為替レートがトラップの下に移動してしまったら、注文を再設定して取引します。
リピート系注文は、自動売買できるのがメリットの一つです。為替レートの動きに合わせて設定を変更し続ける必要があるとすれば、少々不便です。
そこで、相場の動きに合わせて、取引範囲を自動で変化させていくツールが望ましいです。
候補になるのは、トライオートFXやループイフダンあたりでしょう(もちろん、MT4も)。
スワップポイントが気になる
なお、週足で取引するにあたっては、スワップポイント動向が気になります。
スイングトレードだったら、スワップポイントがマイナスでも、お構いなしに取引可能です。取引開始から終了までの期間は、せいぜい数週間だからです。
ところが、週足の場合、何か月もポジションを維持する場合があります。さすがに1年というのは珍しいでしょうが、スイングトレードに比べて長期間の保有になります。
すると、スワップポイントがマイナスだと、気になります。
為替差損益がどうなるか、終わってみないと分かりません。しかし、スワップポイント損は毎日確実です。精神衛生上、あまりよくありません。
よって、可能なら、スワップポイントがプラスになる方向で取引したいです。
日々のマイナススワップがあまりに大きくなる場合は、取引したいのを我慢して見送るのも、有力な選択肢になるでしょう。
リスク管理は、週足でも必要
また、週足でも、リスク管理は大変重要です。米ドル円の週足チャートを改めて確認しましょう。
矢印部分に、巨大な下ヒゲがあります。
これは、2019年1月3日午前7時過ぎ~午前8時前の30分間ほどで、作られました。一気に500銭くらい急落&反発という相場でした。
この値動きで、口座残高以上に損失を抱えた人が多発しました。すなわち、借金を背負ってしまいました。
どれくらいの人が、どれくらいの借金を背負ったのでしょうか。FXの業界団体である金融先物取引業協会によると、以下の通りです。
- 借金を背負った人数:6,389名
- 借金の額:808,000,000円(8億800万円)
正月気分真っただ中の1月3日朝、口座残高を全て失い、さらに借金を背負うことになったのが、6,389名です。正月気分は一気に吹き飛んだことでしょう。
ここまで極端な相場変動は珍しいですが、いきなり大きく相場が動くのは、毎年のように発生します。
1時間足や日足では大きな値動きに見える場合でも、週足にすると、どこで大きく動いたのかわからないという例が少なくありません。
週足は高値と安値の差が大きいので、1時間足の値動きは誤差のようになってしまうためです。
しかし、あまりに大きな値動きが発生すると、週足でもはっきりわかるようになります。大きな値動きで大損失にならないよう、資金管理を万全にしたいです。
週足を使うトレードのまとめ
最後に、週足のまとめです。
人気はあるとは言えないけれど、トレンド把握には都合が良いです。そこで、トレンドに強いトレード手法で取引する案が考えられます。
ただし、1つの足ができるのに1週間かかりますから、のんびりやるのがコツです。