スワップポイント狙いのトレードにとって、各国の政策金利は重要な指標です。
と言いますのは、外国の金利が上昇して日本との差が大きくなれば、その分だけスワップポイントが大きくなると期待できるからです。
この考え方には、「政策金利差とスワップポイントの大小には明確な関連がある」という前提があります。
これが正しいか、それとも怪しい思考なのか、公開データを元にして確認しましょう。
各国の政策金利
最初に、各国の政策金利の推移を確認しましょう。下のグラフの通りです。
2008年のリーマンショック辺りを境にして、政策金利が一気に大きく引き下げられた様子が分かります。
リーマンショック前、オーストラリアやニュージーランドは高金利通貨の代表格でした。今では、ゼロがもう目の前という位置まで低下しています。
日本はどうかと言えば、ゼロ近辺で安定(?)して推移していることが分かります。
よって、スワップポイント狙いという場合、多くは円売り外貨買いとなります。
日米の政策金利
国・地域の数が多すぎますので、米国と日本の政策金利を抜き出しました。下の通りです。
上のグラフの期間において、一貫して米国の政策金利の方が高かかったことが分かります。
よって、リーマンショック後の一時的な例外を除き、米ドル円を買って保有すると、スワップポイントはプラスで推移しました。
政策金利とスワップポイント
ちなみに、政策金利差とスワップポイントは一致しません。
と言いますのは、政策金利を使って決めているわけではないからです。よって、数字の大きさは、毎日のように変化します。
スワップポイントの大きさは、日々の短期金利と、FX業者の営業政策で決まります。
日々の短期金利は、政策金利の影響を大きく受けます。よって、取得しやすい政策金利を使って、スワップポイントの検証をするのが効率的です。
このため、当ブログでは、しばしば政策金利が登場します。
そして、FX業者の営業政策を反映して、日々のスワップポイントが決まります(FX業者ごとにスワップポイントが異なることになります)。
これは、スプレッドも同様です。
本来の(=インターバンク市場の)スプレッドは、目まぐるしく変化します。それを、FX業者の裁量で原則固定に近くしています。
こうすることで、顧客に分かりやすい取引環境を作っています。
FX業者ごとにスプレッドの広さが異なるのも、この営業政策によります。
米ドル円の政策金利とスワップポイントの関係
では、米ドル円について、政策金利差とスワップポイントの関係を見てみましょう。
スワップポイントは、FX業者ごとに数字が異なります。そこで、くりっく365の数字を使います。
くりっく365は、公的な取引所です。すなわち、営業政策による数字の調整がないと期待できますので、より正確な分析ができます。
また、営業開始以来のデータを公開しており、透明性がとても高いです。
(下のグラフは、1万通貨を買った場合です。政策金利の縦軸は左側、1か月あたりのスワップポイントの縦軸は右側です。)
上のグラフを見ますと、スワップポイントと政策金利には、明確な関係があると分かります。
南アランド円の場合
上のような明確な関係は、他の通貨ペアでも存在するでしょうか。
高金利通貨ペア・新興国通貨ペアという視点で、南アランド円について見てみましょう。
南アランド円は、2008年11月から取引可能になりました。よって、スワップポイントは、それ以降の表示になっています。
取引単位は10万通貨ですので、グラフは10万通貨を買った場合の数字です。
南アランド円でも、明確な関係があると言えます。
トルコリラ円の場合
その一方で、やや様相を異にするのが、トルコリラ円です。
(くりっく365でのサービス開始は、2015年です。よって、グラフもそれ以降になっています。)
下のグラフの通り、他の通貨ペアと比べますと、政策金利差とスワップポイントの大きさの連動が、やや弱いように見えます。
これは、スワップポイント算定の基礎となる短期金利と政策金利の間に、乖離があったためでしょう。
営業政策が反映される場合
上の数字を見ますと、トルコリラ円はやや例外的ですが、政策金利差とスワップポイントの大きさの間には、大きな関連があると分かります。
では、営業政策が反映される場合は、どうでしょうか。
くりっく365以外のFX業者は、相対取引です。すなわち、スワップポイントの大きさは、FX業者の営業方針で自由に決められます。
これを検証するのは大変です。と言いますのは、各FX業者は、スワップポイントの長期時系列データを公開していないからです。
しかし、ヒロセ通商は、2008年以来のスワップポイントの数字を公開しています。素晴らしい透明性です。
そこで、南アランド円について、ヒロセ通商とくりっく365を比較しましょう(同じ基準で比較するため、10万通貨を買うとします)。
先ほどの南アランド円のグラフと比べて、右側の縦軸の数字が変わっていますので、ご注意ください。
ヒロセ通商の南アランド円データは、2008年1月29日から利用可能です。グラフは、2008年2月以降で表示しています。
概ね、政策金利の推移と同じだと分かります。
しかし、くりっく365の場合と比較しますと、政策金利差との連動性が弱いように見えます。
具体的には、南アフリカと日本の政策金利差は、2014年から拡大に転じています。その拡大は、2016年初めまで続きました。
しかし、ヒロセ通商のスワップポイントは、この間も縮小を続けています。
そして、2016年7月に、突如として上昇しました。その後、同水準を継続しています。
この結果、2018年半ば以降、ヒロセ通商のスワップポイントは、くりっく365を上回る数字で推移しています。
スワップポイント狙いで取引する場合のFX口座
以上の考察から、以下のことが言えそうです。
- スワップポイントは、FX業者ごとに大きく異なる場合がある
- スワップポイント狙いをする場合は、業者選択が重要
スワップポイントを比較する際の基準値は、くりっく365で良いかと思います。くりっく365に比べて、スワップポイントが有利かどうかで判断します。
しかし、相対取引をするFX業者(=くりっく365以外の業者)にとって、くりっく365の数字よりも大きな数字を出すのは大変です。
と言いますのは、相対取引のFX業者のスワップポイントは、買いと売りで数字が異なるからです。下は、例です。
くりっく365の場合の例:
- 買い:50円の受取
- 売り:50円の支払
相対業者の場合の例:
- 買い:50円の受取
- 売り:60円の支払
というわけで、相対業者の場合、同一通貨ペアで同数を両建てすると、証拠金が毎日減ります。この差は、FX業者の収益になります。
この状況で、FX業者の利幅を確保しつつ、買いの数字を、くりっく365よりも有利にするとしましょう。すると、くりっく365に比べて、売りの数字で大幅に負けることになります。
よって、くりっく365よりも有利な条件を提示するのは大変そうです。
という状況で、ヒロセ通商は、南アランド円について、2018年半ばからくりっく365よりも有利な数字を出しています。
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