本日は、久しぶりに読者の皆様のお便りを元に、米ドル/円の見通しを考察します。
(中略)
先月記されていた、ドル円為替相場上限104.75円前後というのに着目していますが、根拠はないのですが更なる円安になるような予感がしています。
円安=ドル高の方が、世界的に大きく貨幣価値が下がる(ハイパーインフレになる)前に日本の健全な(?)資産を購入しやすいのかも?といった考えに影響されすぎかもしれませんが、貨幣価値が劇的に下がる≒新円切替になる前に、金余り株価高で膨らんだ金融資産価値が目減りせぬように、世界的にじゃぶじゃぶのお金が次に向かう先によっては上限突き抜けた円高になるのか?といった感じです。
こういった思惑のあるやなしやといったことに思い巡らしながら、次回ドル円為替相場の展望を待っています。
バリトモさん、お便りありがとうございます。
米ドル/円の超長期展望
チャート分析の前に、ゆったり為替の超長期展望(10年~30年を視野)をご案内します。ズバリ、円安になると考えています。その理由は単純です。
日本は、確実に人口が減少します。現在でも毎年数十万人以上減少しており、これは中規模の都市が毎年消滅しているのと同じです。さらに少子高齢化ですから、活力が失われるでしょう。
ざっくりとですが歴史を調べますと、「人口が継続的かつ大幅に減り続けていながら、その国の通貨は長期的に強くなった」という例が見つかりません(もしかしたら、あるかもしれませんが)。
今回の日本円だけ例外だ!…と考えるのは無理があるのでは?と考えています。
なお、為替レートは2国間の通貨のやり取りですから、日本だけの視点で決まるわけではありません。
そこで、米国はどうか?ですが、米国も問題山積ながら、日本よりはマシだろう(人口は減っていないし、イノベーションも日本より速いだろう)と見込んでいます。
すなわち、超長期では円安と考えています。
余談ですが、人口問題を解決するために多数の移民を受け入れようというのは、ヨーロッパと同じ問題を抱えることになりますので、ゆったり為替は賛成できません。
米国大統領選挙後の米ドル/円
さすがに10年~30年は長期すぎますので、2021年に限って検討します。今回のキーワードは「米国大統領選挙」です。
過去、大統領選挙が実施された次の年の米ドル/円は、どうなったでしょうか。
以下、時代を遡りながら月足チャートを確認しましょう(チャートはDMMFXから引用)。
2012年、2016年の選挙
下のチャート右側の矢印は、2016年11月です。すなわち、大統領選挙直後から一気の円安が実現した様子が分かります。
しかし、円安は長期間継続せず、次第に円高に転換していきました。
左の矢印は、2012年11月です。こちらも大統領選挙の直後ですが、円安になっています。この時はアベノミクス時代であり、円安になりやすい雰囲気で満たされていました。
この支援もあって、70円台だった米ドル/円は、最終的に125円前後まで円安になっています。
2004年、2008年の選挙
次に、2008年を見ましょう(下のチャートの右側です)。この時は、2007年のサブプライムローン問題に始まり、2008年のリーマンショック発生と、散々な時代でした。
しかし、矢印部分(2009年2月)に急反発して10円も円安になっている様子が分かります。
もう少し詳しく見ますと、2008年11月は円高が継続しましたが、年末に下落が止まりました。地合いは明らかに円高でしたが、円安への反発力が凄まじいです。
とはいえ、全体的な趨勢には逆らえず、再び円高になった様子が分かります。
そして、左側の矢印(2005年1月)周辺を見ますと、大統領選挙直後は円高でしたが円安に転換した様子が分かります。
1996年、2000年の選挙
さらに確認しましょう。右の矢印は、2000年11月です。大統領選挙直後から円安になっている様子が分かります。そして、翌年まで円安が継続しています。
左側の矢印は、1996年11月です。既に円安傾向でしたが、さらに継続しています。1997年に一時的に大きな円高がありましたが、円安トレンドを維持した模様が分かります。
1988年、1992年の選挙
あと1回確認し、これを最後にしましょう(これよりも昔に遡ると、米ドル/円=200円~300円台となってしまい、参考になるかどうか不明なため)。
右側の矢印は1992年11月です。
ここにきてようやく、円安らしい円安がないという例が出てきました。鈍い値動きが続いた後、1993年半ばにかけて円高が継続しました。
左側の矢印は、1989年1月を示しています。大統領選挙が実施された月辺りは、やや円高でしたが、1989年1月から継続的な円安になった様子が分かります。
値動きのまとめ
以上の値動きをまとめます。
- 2016年の選挙後:2か月で20円弱の円安実現後、円高
- 2012年の選挙後:1年以上の大幅円安
- 2008年の選挙後:数か月で10円以上の円安実現後、円高
- 2004年の選挙後:1年以上の大幅円安
- 2000年の選挙後:1年以上の大幅円安
- 1996年の選挙後:1年以上の大幅円安
- 1992年の選挙後:円高
- 1988年の選挙後:1年以上の大幅円安
大幅円安が実現せずに円高になったのは、1回しかありません。大多数は、1年以上の円安継続です。わずか数か月で円安が終わった場合もありますが、その場合は一気の円安となっています。
民主党候補が勝とうが共和党候補が勝とうが、どちらでも同じ。大まかな趨勢は「円安」です。
こうなると、1992年~1993年頃の円高の理由は?という話になりますが、バブル経済の崩壊でしょう。上のチャートを確認しますと、1990年から継続的に円高になっています。
まさに、バブル崩壊の時期と円高がリンクしているように見えます。
日本にとって、「失われた20年」「失われた30年」と言われるような巨大なイベントでしたので、これが米ドル/円にも反映されたのだと言えそうです。
それにしても、2008年のリーマンショック後の大統領選挙の時でさえ、一気の円安が実現したのに対し、1992年の選挙では見せ場なく円高に突き進んでいるのが興味深いです。
2021年の米ドル/円見通し
以上を受けて、2021年の米ドル/円見通しを考察しますと、円安という選択肢が自然です。そこで、直近の週足チャートで確認しましょう。
チャート内に、赤で補助線を引きました。これは、上値抵抗線です。そして、赤の矢印部分で、上方向に抜けたように見えます。これがダマシでないならば、円安になると見込めます。
そして円安になる期間は、過去の事例を踏襲するなら「数か月以内または1年以上」です。
ちなみに、以前のゆったり為替のツイートでは、米ドル/円は円高方向で云々…と書きました。これは、当時のチャートが円高示唆の動きだったためです。
しかし、上の週足チャートの右端で為替レートが上値抵抗線を突き抜けましたので、円安方向を重視して検討することになります。
なお、ゆったり為替の場合、ダマシが嫌なので、押し目を待ってから取引することが多いです。押し目を待たずに取引する場合は、取引額を小さくします。