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USD(米ドル)

読者の皆様のお便り:ドル切り下げについて

2019年8月12日

今回は、久しぶりに読者の皆様のお便りから考察してみます。

米ドルは切り下げるか

はじめまして。いつも参考にさせていただいています。

サイトを見ていて、なるほど、と思うことが多いのですが、一点、全く触れられていない「ドルの切り下げ」のリスクをどう考えているか、教えていただけないでしょうか?

最近、ファンドマネージャーの・・・さんなどがトランプ大統領はドルの切り下げをやるのでは?などどという話をしています(ゆったり為替注:氏名を伏せました)。

プラザ合意の時の値動きを見ると、二度と戻ってこないくらいの変動を起こしている通貨ペアも多いため、長期の投資をするのに、ドルストレートや対円の通貨ペアはどうかなぁと思っているのですが、対円の通貨ペアを結構やっていらしゃるようなので。

Sさん、お便りありがとうございます。なるほど。世の中では米ドル切り下げが話題になっているんですね。

ゆったり為替は、経済指標や中銀ステートメント等は読みます。しかし、いわゆる専門家の話は一切見聞きしないので、世の中の流行を全く知らないという状態です…。

米ドル円の長期推移

最初に、米ドル円の推移を確認しましょう。1973年以降の長期チャートです。

米ドル/円の長期チャート

1971年までは、米ドル円=360円の固定相場制でした。日本やドイツの急成長ぶりがすさまじく、360円を維持できなくなったため、変動相場制に移行しました。

そもそも、米ドル円=360円は日本に有利な為替レートでしたし、米国も強かったですし、この時は「基軸通貨としての米ドルが崩壊するかも?」と危惧する向きは多数派ではなかったと予想しています。

(すみません、このあたりは勉強不足で断定的に書けません。)

そして、円高になった後の1980年代前半。米ドル円=360円に比べれば、超円高です。

しかし、これでも経済力を反映しきったレートだとは言えないというわけで、1985年に先進各国が協力してドルを弱くしました。1985年に一気に円高になっているのが、それです。

プラザ合意と呼ばれています。

これを機に、円高不況、バブル経済、失われた〇〇年と続いて現在に至ります。

プラザ合意は、おそらく適切

その後の為替レートの推移を見ますと、この米ドル切り下げは、経済状態を反映した適切な行動だったと評価可能です。

経済力と逆の方向に無理に進ませた場合、経済が均衡するように、為替レートが徐々に戻されます(10年単位の時間が必要でしょうけれど)。

チャートを見ると、2019年に至っても、プラザ合意前のレートに戻ろうという動きが見えません。すなわち、広い意味での国力を適切に反映した政策だったと言えそうです。

また、上のチャートを見ますと、継続的にドルが安くなり続けていることが分かります。

よって、「ドル弱体化(切り下げ)は40年以上、現在進行形で続いている」という表現も可能です。

ドル高は米国の利益であるっ!

なお、米ドルが弱くなったのを契機として、毎度おなじみのイベントが繰り返されることになりました。

市場:米国はドルを切り下げようとしているのでは?(動揺)
米国:「ドル高は米国の利益であるっ!」(毎度の発言)
市場:ホッと一息(イベント終了の安ど感)

お便りでいただいたドルの切り下げの話は、決して目新しい話ではありません。何度も何度も繰り返されてきました。

世界の中心が失われると、世界が混乱します。世界の中心(=米国)は、頑丈で強くなければなりません。

米国の本心としては、緩やかであっても米ドル安に持っていきたいんだろうと思います。しかし、それをやってしまうと、基軸通貨としての地位を失いかねません。

基軸通貨とは、世界の中心となる通貨です。そのような中心的な通貨は、信頼度も強さも抜群でなければなりません。

米国は、ドルが基軸通貨であることから、極めて大きな利益を得ています。金額で表現するのは難しいですが、経済学者が試算した数字がチラホラとあるはずです。

年間で兆円の単位は余裕だと思います。二桁兆円以上かもしれません。

米国は世界の中心じゃあ!

例えば…日本の場合、米ドル円レートがいくらなのかという情報が、毎日のように一般向けのニュースで流れます。それは、日本の経済を考えるうえで必須の情報だからです。

親分は米ドルです。円は、世界四大通貨の一角を占めていますが、米ドルの脇役です。1円の上下動が、各企業に与える影響はとても大きいです。

一方、米国から見れば、1ドルは1ドルです。自分が中心なので、日本ほどには為替レートに敏感である必要はありません。

米国人が、「日本人は為替レートに敏感すぎるぞ!」とゆったり為替に言ってきたことがあるのですが、「それは強者の驕りだぞ!」という感じです。

同様に、「なぜあなたは英語に堪能じゃないんだ?英語を流ちょうに使えて当然だろう?」という対応をされたこともあります。

この種の驕りは、米国が世界の中心だからこそ可能なワザです。

ドルの通貨価値を劇的に引き下げるということは、米国が世界の中心であることをやめるという意味に近くなります。それをするかなあ。

やるなら、こっそりと

大っぴらに劇的に米ドルの切り下げをすると、米国にとって長期的なダメージが大きすぎるのでは?と思います。

そこで、少なくとも表向きは「ドル高は米国の利益であるっ!」がメインシナリオになるのでは?と思います。

ただし、ドル安の方がありがたいのも事実なので、表現を変えながら実行する可能性はあると思います。

例えば、「中国は経済力に見合った為替レートを実現すべきである!人民元をもっと強くすべきだ!」という感じで、米ドルという単語を使わず、米ドル安と同じ効果を得るという具合です。

実際のところ、「ドル高は米国の利益であるっ!」が繰り返されてきたのに、上の米ドル円チャートを見ますと、継続的にドル安です。

米ドル円はどうなる?

では、米ドル円はどうなるでしょうか。ゆったり為替の超長期見通し(10年~30年以上)としては、ドル高円安の一手です。

為替レートは、通貨の交換比率です。人気投票と同じです。「米ドルがいいわあ!」という人が増えれば、ドルが強くなります。「円の方がいいわああ!」という人が増えれば、円高です。

ここで、日本の状況を確認しましょう。

  • 毎年、人口は数十万人以上減少中
  • 少子高齢化
  • 増税
  • 財政赤字は巨大でどうしようもない

総人口が減り、高齢者が増えて若い人が減るという事実だけで、十分でしょう。保育園の増設で地域住民から反発が起きるような国です。保育士の給料が安く据え置かれるような国です。

有史以来、人口が減る国が栄えた例があるでしょうか。

10年~30年以上の超長期で見て、日本円が欲しいと考える人は減ると予想しています。すなわち、円安です。

なお、円安になる過程で、超円高になる可能性はありうると思います。ゆったり為替は、2011年~2012年当時、米ドル円=50円台まで想定していました。

今後どうなるか不明ですが、円高トレンドになる場面がありましたら、そのときに再び考えようと思います。

追記(2019年8月24日)

2019年8月23日のFRB議長講演を受けて、トランプ大統領がツイートしています。

We have a very strong dollar and a very weak Fed. とあります。「我々には、とても強いドルととても弱いFRBがある。」という趣旨です。「強いドル」はトランプ大統領においても健在だと分かります。

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