豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)は、2013年半ばから軟調に推移しています。
そこで、長期チャートを使って、過去から現在までの推移を確認しましょう。そして、今後どうなるか、長期的な見通しを考察します。
豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)の長期チャート
下は、豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)の長期チャートです。セントラル短資FXからの引用です。
大きく概観すると、値動きは3つに分けられそうです。
- 1990年代前半まで:下落
- その後、2013年~2014頃まで:レンジ
- レンジ終了後:下落
この様子を示したのが、下のチャートです。
赤い四角部分は、レンジになっています。その前は下落トレンドです。そして、赤枠を過ぎてからは、下落トレンド(または底値で推移)という状態です。
上のチャートの矢印1で、巨大な下ヒゲが出ています。2015年1月のスイスショックです。これを振り返りましょう。
このショックが直接のきっかけとなって、矢印2のような、軟調な推移となっています。
2015年のスイスショック【レンジ相場の終わり】
豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)のレンジ相場は、1990年代前半から10年くらい継続しました。
すなわち、世界を揺るがした下の諸問題をものともせず、為替レートは安定した推移でした。
- 2000年頃:ドットコムバブル崩壊
- 2007年以降:サブプライムローン問題
- 2008年:リーマンショック
- 2010年代前半:PIIGS問題
2010年代前半のPIIGS問題とは、ユーロ圏で財政問題を抱えた国の名前をつなげた造語です。連日、PIIGS問題が報道されていました。
一時期、ユーロ圏の崩壊が噂されるレベルでした。
- P:ポルトガル(Portugal)
- I:アイルランド(Ireland)
- I:イタリア(Italy)
- G:ギリシャ(Greece)
- S:スペイン(Spain)
資金がユーロから逃げた
ユーロ崩壊か?と言われている状況で、ユーロを持ちたくありません。では、どの通貨と交換しましょうか。
ユーロ圏の国々に囲まれて、世界最強通貨を持っている国があります。スイスです。というわけで、ユーロを売ってスイスフランを買う動きが活発化しました。
スイスフランの買い圧力があまりに強かったため、ユーロ/スイスフランは一方的に下落しました。
そこで、スイス国立銀行(中央銀行)は、行き過ぎた下落を回避するために、EUR/CHF=1.20の防衛ラインを設定しました。
すなわち、「為替レートを1.20よりも下落させない、スイスフラン買いには無制限で市場介入します!」という政策です。
スイス国立銀行の敗北
ところが、市場のユーロ売り・スイスフラン買い圧力があまりに強かったため、スイス国立銀行は、防衛ラインをいきなり放棄しました。それが、2015年1月15日です。
スイス国立銀行は、市場に負けてしまったのです。
FX市場は大混乱です。この影響で、アルパリなど複数のFX業者が経営破綻し、日本ではEUR/CHFのスリッページが1,000pips前後も発生しました。桁違いのスリッページです。
一気に4,000pipsほど急落したのですが、その後、急速に為替レートが戻りました。
豪ドル/スイスフランでも、同じような動きが起きました。矢印1の下ヒゲです。チャートが上の方になってしまいましたので、下に再掲します。
その後、赤矢印2の通り、為替レートは元のレンジの下限(またはその下)で推移しています。
豪ドルかスイスフランか
2015年以降、ずっと低迷している豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)です。
では、現在の低迷の原因は、豪ドルにあるでしょうか。それとも、スイスフランにあるでしょうか。
きっかけはスイスフランですが、その後の低迷は豪ドルに原因があるかもしれません。どちらに原因があるか、確認しましょう。
確認の方法は、2015年以降の、米ドル/スイスフラン(USD/CHF)の推移と豪ドル/米ドル(AUD/USD)の推移の比較です。
世界の為替取引は、米ドルを中心に行われます。そこで、米ドルに対して強くなっているか弱くなっているかを見れば、豪ドル/スイスフランの低迷の理由が見えてきます。
米ドル/スイスフラン(USD/CHF)
下の週足チャートを見ますと、米ドル/スイスフランはレンジで推移していることが分かります。
豪ドル/米ドル(AUD/USD)
次に、豪ドル/米ドルを確認しましょう。下の赤矢印の通り、下落が続いていることが分かります。
すなわち、2018年以降の下落の原因は、主に豪ドルにあることが分かります。
豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)の長期見通し
以上の通り考えますと、豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)の今後の上昇を期待するには、豪ドルが強くなる必要がありそうです。
今後も豪ドル/米ドルが弱くなるようですと、豪ドル/スイスフランも弱くなると予想できます。
豪ドルを基準にした見通し
では、豪ドルは、今後どうなるでしょうか。これを考えるのに使えるデータは、TWI(trade weighted index)です。TWIとは、豪ドルが強いか弱いかを簡単に確認できる指標です。
そして、TWIを見れば、「オーストラリアはどの国と貿易関係が深いか」についても、分かります。下のリンク先記事で、詳しく解説しています。
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オーストラリアは、資源輸出国です。すなわち、輸出先の景気が絶好調になれば、オーストラリアの景気も良くなります。
輸出が増えるからです。
景気が良くなれば、金利が上がります。景気が良くて金利も上がるなら、豪ドルも上昇しやすくなるという見通しが立ちます。
そこで、TWIでオーストラリアにとっての超重要国を確認しますと、ズバリ、中国だと分かります。
すなわち、中国が復活すると、オーストラリアも復活できると予想できます。
豪ドル/スイスフランの話ではありますが、この通貨ペアの上昇のカギを握るのは、中国だと言えそうです。
スイスフラン側の見通し
以上は、豪ドルを中心にした見通しですが、スイスフラン側を視点にした見通しも確認しましょう。
スイスは、先進国の中で財政の健全性などが素晴らしいです。
すなわち、スイスの財政がひどくなってスイスフランが弱くなり、それが原因で豪ドル/スイスフランが上昇…という流れは、予見できる範囲内では見込み薄です。
ここで注意したいのは、ユーロ圏で再び問題が起きて、スイスフランが強くなってしまうパターンです。実現するかどうか不明ですが、こんなあたりが注意かもしれません。
- イギリスのEU離脱をきっかけに、何かが起こる
- ギリシャの財政危機が再燃
- 移民問題が再噴出して、ヨーロッパが紛糾 など
ギリシャなどの財政危機問題は、まだ終わっていません。
以上から、スイス視点で見ますと、豪ドル/スイスフランを下押しするリスクの方が高そうだ、という感じがします。
見通しのまとめ
実際にどうなるか、あらかじめ確実に見通しを立てることはできません。よって、相場の動きに合わせてトレードすることになります。
とはいえ、豪ドルの視点、スイスフランの視点、いずれを基準にしましても、豪ドル/スイスフランの大幅高を期待できる材料に乏しいことが分かります。
予見できる範囲内では、今しばらく軟調に推移するのでは?と予想できます。
取引可能なFX業者
最後に、豪ドル/スイスフラン(AUD/CHF)を取引できるFX業者例を確認しましょう。
オーストラリアもスイスも先進国ですが、この通貨ペアはマイナーです。よって、取引できるFX業者は少ないです。
表のデータの調査日:2019年10月26日
FX業者 | スプレッド(pips) | スワップポイント | |
買い | 売り | ||
セントラル短資FX | 5.0 | 10 | △28 |
FXTF | 2.9 | 7 | △55.8 |
ヒロセ通商 | 3.0 | 5.5 | △60.2 |
YJFX! | 3.0 | 31 | △46 |
上の表を見ますと、スプレッドで最も有利なのはFXTFの2.9pipsです。僅差で、ヒロセ通商とYJFX!が追っています。
では、FXTFで常に取引すれば良いか?というと、そうでもありません。その理由は、スワップポイントです。
スワップポイントは、毎日徐々に変化します。よって、参考情報として見ていただきたいですが、それでも、買うときのYJFX!のスワップポイントは圧倒的です。
そして、売るときのマイナスが最も小さいのは、セントラル短資FXです。こちらも、他のFX業者と比べて差が大きいです。
すなわち、どのような取引をするかによって、区別が必要だと分かります。
デイトレード並みの短期取引をする場合は、FXTFです。スワップポイント狙いなら、YJFX!です。ただし、YJFX!は最低取引数量が1万通貨です。
そこで、1,000通貨から取引したい場合は、セントラル短資FXも有力です。売り取引の場合、最も有利なスワップポイントとなっています。