原油価格が暴落しています。日経平均株価や豪ドル円と比べ物にならない勢いです。
そこで、原油先物相場の現状を確認しつつ、この動きを生かしたトレード手法を考察します。
原油先物チャート(日足)
最初に、日足で原油先物のチャートを確認しましょう。
下のチャートは、CFD価格です。よって、先物そのもののチャートではありませんが、ほぼ同じ値動きをします(TradingViewから引用)。
軸の数字が小さいので、適宜文章でご案内します。
上のチャートで、原油先物価格が最も高くなったのは、2018年9月ごろ(チャートの中ほど)です。1バレル=72ドルを超える高値を付けました。
2020年になった直後は、60ドル弱でした。
ところが、2020年3月末になると、20ドルを割り込むか?という勢いになっている様子が分かります。大雑把に見て、価格は3か月で3分の1になりました。
恐ろしい動きです。
バレル
先に進む前に、余談です。原油取引を考える場合、量の単位はバレルです。バレルとは、ワインの樽です。およそ159リットルになります。
アメリカで原油の生産が活発になった19世紀、原油を輸送するために使われたのは樽でした。すぐに調達できて液体を輸送できますから、ちょうど良いです。
その流れで、現在もバレルが使われています。
原油先物チャート(長期)
さて、相場の全貌をざっくりと把握するには、日足では全く不十分です。
ゆったり為替の場合、可能なら、為替レートは1973年以降を最初に確認します。外国為替取引が現行制度になって以降を確認したい、という意図です。
というわけで、原油先物についても、できる限り古いデータから確認しましょう。
今回の記事で引用させてもらった TradingView では、1986年くらい以降のデータを確認できます。およそ35年間のチャートを見られますから、十分でしょう。
下の通りです。
上のチャートを見て分かることは、何でしょうか。
- 1986年~2000年くらい:20ドルくらいでレンジ
- 2000年~1014年くらい:暴騰と乱高下
- 2014年くらい以降:価格下落
最近1年~2年を見ていると、大暴落にしか見えません。しかし、長期で考えると、「1990年代の価格水準に戻っただけだ」と言えます。
下のチャートは、レンジを作っていた部分を赤枠で囲んだものです。
1990年代の値動き
今後の値動きは不明ながら、1990年代の様子が再現されるかもしれません。そこで、上の赤枠部分について、週足チャートで確認しましょう。下の通りです。
補助線を2本追加しています。10ドルと22ドルです。実際のレンジよりも、やや下側に線を引きました。
これは、レンジで取引する場合、この範囲内で取引するのが良いのでは?という意図です。
22ドルよりも高値で買うと、その後の下落が厳しいかもしれません(売りで取引するなら、もっと高値から取引できます)。
逆に、10ドルになったことはないので、ここまで下落を見込んでおけば大丈夫なのでは?というプランを作れます。
絶対損切りしたくない!という場合は、9ドル、8ドル…と最安値の想定価格を引き下げていきます。
値動きの特徴
ここで、レンジでの値動きの特徴を確認しましょう。
安値と高値の差が大きい
冒頭のチャートでは、70ドルを超えた水準から20ドルになった様子を確認しました。このため、10ドルと22ドルという数字を見ても、何も感じないかもしれません。
しかし、10ドルと22ドルという数字を見ますと、その差は大変なものです。10ドルを2.2倍して、ようやく22ドルになります(しかも、22ドルというのは、レンジの上限ではありません)。
というわけで、原油先物は値動きが大きいといえそうです。
1990年頃の急騰
週足チャートでは、概ねレンジとなっています。しかし、1990年頃に、不自然な急騰と急落があります(週足チャートで、やや左にある部分)。これは湾岸戦争の影響です。
1990年8月、イラクがクウェートに侵攻して併合しました。湾岸地域で急激に緊張が高まりましたので、原油供給に支障が出る可能性がありました。
よって、原油価格が暴騰しました。
米軍などが介入してクウェートを解放したのは、1991年2月です。原油価格は、元の位置に戻りました。
当時、原油価格の急上昇で日本は騒然となったのですが、それでも最高値は40ドルくらいだったという…。その後の高値(140ドル)と比べると、とても安く見えてしまいます。
中心価格帯
レンジの中心価格帯は、14ドル~23ドルくらいだと分かります。今回の急落後の値動きは不明ですが、同じくらいの範囲で動いても対応できる準備をしたいです。
トレード手法を考察
以上の考察を経ますと、トレード手法が見えてきます。
過去の安値での値動きを見ると、レンジでした。よって、レンジ再現に備えて、レンジが得意な手法が良さそうです。
また、今後の値動きは、どうなるか分かりません。価格が上昇する可能性もある一方、現在の20ドルからさらに下落する可能性もあります。
しかし、原油価格はゼロにならないと想定できます。さらに、原油は生活するうえで必要不可欠な資源です。景気が回復すれば、原油価格も上昇すると想定できます。
以上から、買いでの取引が中心になるのでは?と想定できます。
- レンジが得意な手法を使う
- 買いで取引する
リスク考察
この考え方について、リスクを考察しましょう。
この手法を採用した後に急騰したらどうする?ですが、その場合はOKです。といいますのは、何回かトレードができていて、しかも全部利食いになっているからです。
損切りなしで、全て利食いというのは最高です。
逆に、原油価格がさらに落ち込む場合はどうする?です。上の週足チャートで判断する限り、とりあえず10ドルを見ておけば大丈夫そうだと言えそうです。
安全度を完璧にしたい場合は、1ドルを割り込んでもOKという設定にします。
とはいえ、原油価格が1ドルというのは、あまりに想定しづらいです。生産コストに全く見合わない額なので、原油生産企業の撤退が相次いでしまうでしょう。
すると、供給が絞られて、原油価格は上昇するでしょう。どこまで安値になりうるか?と考えて行動するか。それは、トレードする人の考え方次第です。
2020年4月21日追記
NY原油先物価格が、マイナスに転落しました。まさかのマイナスです「NY原油先物、初の価格「マイナス」 5月物投げ売り殺到」(日経新聞)。
マイナス価格は想像も難しいのですが、現実になりました。その昔、マイナス金利は思考実験としてはあり得ても、現実にそうなるとは思えませんでした。
それと同じ事が、今起きているということでしょう(このマイナスは、期近物に限られています)。
では、原油ETF価格はどうなっているか?ですが、NY証券取引所のUSO(United States Oil Fund, LP)を見ますと、プラスを維持しています(yahoo!financeから引用)。
これは、2020年4月21日が期近物の清算日であり、先物の価格形成があまりに特殊だったことを反映しているのかもしれません。
期先の先物価格は、プラスで推移しています。
どの業者を使うか
次に考えるのは、どの業者で取引するか?です。原油先物CFDを取引できる主な業者は、以下の通りです。
- トライオートETF(インヴァスト証券)
- IG証券
- GMOクリック証券
それぞれ長所がありますが、ここでは、トライオートETFを見てみましょう。
トライオートETF
トライオートETFの最大のメリットは、自動売買ができることです。特定の価格になったら買い、別の価格になったら売る、を繰り返します。
放置していても、スマホやPCの電源を落としていても、自動で売買してくれます。
下は、イメージ動画です。米ドル円で解説していますが、原油に置き換えて考えられます。
下は、取引画面です。
なお、画像を縮小していて見づらいですが、縦軸の数字が小さいことが分かります。原油先物と同じではありません。
これは、アメリカで上場している原油先物ETFを原資産としているためです。よって、取引可能時間も、米国ETF現物市場の取引時間とほぼ同じです。
値動きそのものは、原油先物に連動します。