2017年以降、全般的に値動きが鈍い状態が続いています。
すなわち、値動きが小さいので、利食いしても大した利益になりません。逆に、損切りになっても、少額になります。
こんな時、「では、取引数量を大きくすれば良いのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、少なくともゆったり為替にとっては、取引数量を大きくすれば成績もよくなるとは言えません。その理由を考察します。
値動きが小さい(2017年以降)
最初に、2017年以降の値動きを簡潔に確認しましょう。下は、米ドル円の月足チャートです(セントラル短資FXから引用)。
チャートの左端は、2012年です。いわゆるアベノミクスで、大きく円安になりました。その後、大きく上下動しました。
赤の補助線を2本引いています。いわゆるペナントですが、値動きの範囲が徐々に狭くなっている様子が分かります。
特に、2017年以降の値動きが小さいです。
この記事を書いているのは、2019年12月です。すなわち、3年も値動きが小さい状態が続いています。多くの人にとって、トレードしづらい環境だと思います。
取引数量が小さい場合の損益
すると、この環境を改善するために、案が出てきます。「取引数量を大きくすれば良いのでは?」です。
例えば、現在のトレード状況は、下の通りだとします。
- 取引数量:1万通貨
- 利幅:50pips(利益0.5万円)
- 損失:40pips(損失0.4万円)
利大損小になっており、理にかなった方法です。
しかし、以前だったら200pipsの利幅を狙えたのに、現在は50pipsくらいしか狙えないとします。なぜなら、値動きが小さいからです。
値動きの大きさが4分の1しかないので、利食い額も4分の1になります。そこで、下のように変更します。
- 取引数量:4万通貨
- 利幅:50pips(利益2.0万円)
- 損失:40pips(損失1.6万円)
ここでは、取引数量を4倍にしています。
すると、値動きの大きさは狭いままですが、利益も損失も4倍になります。すなわち、値動きが大きい時と同じような損益額を期待できるという考え方です。
数量を大きくしても、以前のように稼げない
しかし、ゆったり為替がこの方法を採用するとき、多くの場合、成功しません。
その理由を考えると、以下の通りです。
取引数量が大きくてビビる
損益幅は従来と同じになるといっても、取引数量そのものが一気に何倍にもなります。
このときに、感情がついていけないことがあります。すなわち、ストレスです。
感情がついていけないので、焦り・興奮・恐怖・期待などが大きくなり、合理的な思考を妨げます。ということは、負けやすくなります。
値動きが大きい時と比べて、値動きが異なる
値動きが大きい時と小さい時を比較すると、全く値動きパターンが同じで動く距離だけが短い、というわけではありません。
値動きが小さいときには、それ特有の値動きをするでしょう。値動きが大きいときとは異なる場合も、少なくないです。
この状況で、値動きが大きい時を基準にして取引数量を設定しても、期待通りに収益を上げられない可能性があります。
値動きが元の大きさに戻るとき
そして、最も厳しいと感じるのが、値動きが小さい状態から、再び大きな状態に戻るときです。
- 値動きの大きさに心が追い付くには、一定の時間が必要
- 取引数量は、大きいまま
短時間とはいえ、相場の動き・心の動き・そして取引数量のバランスが崩れています。すなわち、一気に損失を計上する可能性があります。
分かりやすい例は、リピート系注文でしょうか。リピート系注文とは、トラリピに代表されるトレード手法です。
リピート系注文での損失例
下は、アイネット証券からの引用です。米ドル円の日足です。
上の赤枠は、110円台後半~114円台後半という、狭い範囲です。値動きの範囲は、最大で400銭しかありません。
そして、よく見ると、概ね200銭の範囲で動いていると分かります。しかも、値動きが鈍いです。
この状況で、50銭ごとに買って50銭の利幅で決済という方法を使うと、なかなか約定しません。約定回数が1週間に数回という感じになると、面白くありません。
そこで、10銭ごとに買って、20銭の利幅で利食いという設定にしたとしましょう。
すると、値動きが小さくても、どんどん約定します。ポジション数量は、従来に比べて最大で5倍になります。利食い額は5倍とはいきませんが、約定回数が多いので満足です。
値動きが大きくなる時がやってくる
そして、値動きが大きくなる時がやってきました。矢印1です。買い注文で取引しているとき、本来ならば、ここで損切りすべきでしょう。
しかし、取引数量を5倍にしていますので、この値動きでも含み損が大きくなっています。今までの利食い額を、全て吹き飛ばす勢いかもしれません。
また、値動きが小さい中での利食いという成功体験を、繰り返し体験しました。
すると、「再び円安に戻るだろう」という期待が勝ってしまう場合があります。
こうなると、損切りできずに時間が経過してしまい、赤矢印2で大損で終了となりかねません。
損になるか利益になるか、時の運に
ちなみに、上の例では、買いのトレードを想定しています。売りで取引していたら、大満足のトレードだったでしょう。
ということは、損益は時の運ということになってしまいます。為替レートが都合の良い方に動けば大満足で、反対ならば、大損だからです。
こうならないよう、取引数量を引き上げる場合には、損する場合のシミュレーションを厳密に実行する必要があります。
ゆったり為替の場合は、為替レート変動の大きさに関わらず、取引開始当初のシナリオを守る方針で取引しています。
値動きの大きさに関わらず、自分の軸を変化させない
ゆったり為替限定の話かもしれませんが、相場の全体の値動きに合わせて、自分の損益を確保したいために数量を変更するのは、うまくいかないことが少なくありません。
よって、値動きの大きさに関わらず、自分の軸をしっかりと確保し、損益に惑わされない姿勢が必要になると感じています。