仮想通貨の上昇局面は現物買いでOKですが、下落局面でも取引したい場合、レバレッジ取引が欠かせません。しかし、現物取引と異なるコストが必要です。
そこで、このコストの大きさを比較します。
レバレッジ手数料(スワップポイント)の比較
ここでは便宜上、レバレッジ手数料(スワップポイント)という名称を使っていますが、取引所(販売所)ごとに名称が異なるのが厄介です。そこで、この違いも確認します。
また、スワップポイントには以下の通り2種類ありますので、それぞれについて検討しましょう。
- その1:顧客が取引所(販売所)に支払う
- その2:顧客同士で受渡しする
では、その1から見ていきます。
FXのスワップポイントと異なる
その1は、FX(外国為替証拠金取引)のスワップポイントとは全くの別物と認識する必要があります。
FXの場合
トレーダー間の金利調整。すなわち、買う側が支払う場合、売る側は受け取る。
仮想通貨の場合
事実上の取引手数料。すなわち、買っても売っても支払う。
ちなみに、FXでも稀に、買っても売ってもマイナスになる場合があります。これは、スワップポイントからFX会社が抜き取る金額が大きい場合に発生します。
(この抜き取った額は、FX会社の収益になります。)
買いの側が100円、売りの側が△100円、FX会社が抜き取る金額は200円の場合、買いは△100円、売りは△300円となる。
比較表
では、取引所(販売所)の比較をしましょう。下の表の「コスト」は、建玉金額(または評価額)に対して1日あたりいくら支払うか?を示しています。
名称 | 会社名 | コスト |
レバレッジ手数料 | DMMビットコイン | 0.040% |
GMOコイン | 0.040% | |
Huobi | 0.030% | |
建玉管理料 | ビットポイント | 0.035% |
スワップポイント | ビットフライヤー | 0.040% |
ポジション管理料 | Liquid | 0.100% |
日次手数料 | Zaif | 0.039% |
まず気づくのは、名称です。
上の表だけで5種類もあります。慣れれば何ともないですが、数多くあると分かりづらいので、業界で少しずつ統一してもらえたら…と感じます。
次に気付くのは、支払う金額です。0.030%~0.100%の範囲です。
例えば、100万円のポジションを持っている場合、1日あたりの支払額は300円~1,000円です。
100万円と比較して、ずいぶん小さな額に感じるかもしれません。しかし、これは大変な額です。分かりやすいように年率換算すると、10.95%~36.5%となります。
この数字の大きさを体感するために、(仮想通貨とは商品性が異なりますが)銀行の預貯金金利や消費者金融の上限金利を確認しましょう。
- 銀行の預貯金金利:0%くらい
- 消費者金融の上限金利:20%
仮想通貨のレバレッジ手数料(スワップポイント)がいかに大きな数字なのかが分かります。
レバレッジ取引は短期トレードで
仮想通貨は、価格変動率がとても大きいです。このため、毎日0.030%~0.100%のコストを支払っても、利食いできれば大幅にプラスにできます。
しかし、「利食いできれば」という条件が付いています。
- トレード:損益の行方は事前に分からない
- レバレッジ手数料:毎日確実に支払う
上の表の通り、トレードで利食いになるか損切りになるか、それは事前に分かりません。
その一方、レバレッジ手数料(スワップポイント)は、ポジションを保有し続ければ確実に支払います。しかも、その額は小さくありません。
この関係が成り立つ場合のトレードは、主に短期になるでしょう。
そして、レバレッジ手数料(スワップポイント)を支払わないようにトレードできるなら、素晴らしいです。
手数料の支払を回避しながらレバレッジ取引
レバレッジ手数料(スワップポイント)を支払わないようにする方法ですが、スキャルピングやデイトレードならば可能です。
このコストは、「特定の時刻をまたいでポジションを持っていた場合に支払う」という特徴があります。そこで、その時刻を避けて取引すれば良いということになります。
この考え方は、FXと全く同じです。
ただし、仮想通貨取引所・販売所の場合は、「特定の時刻」が会社ごとに異なります。これが、FXと比べた場合の大きな特徴です。
下の表は、このコストが発生する時刻をまとめたものです。
会社名 | 発生時刻 |
DMMビットコイン | 午前7時 |
GMOコイン | 午前6時 |
Huobi | 深夜0時 |
ビットポイント | 取引開始時及び午後4時 |
ビットフライヤー | 深夜0時 |
Liquid | 午前1時、午前9時、午後5時 |
Zaif | 取引開始時及び取引後24時間ごと |
上の表を見ますと、各社で大きく異なることが分かります。
コストを少しでも小さくしたいという場合、ビットポイントとZaifを選択しづらいです。なぜなら、取引開始時にレバレッジ手数料が発生するためです。
また、Liquidは徴収タイミングが1日3回あるのがデメリットです(0.1%を3等分して、それぞれの時刻に徴収されます)。
すると、候補はDMMビットコイン、GMOコイン、Huobiそしてビットフライヤーとなります。
この4社から選ぶ方法ですが、「この時間帯はトレードしません」という時刻がレバレッジ手数料(スワップポイント)発生タイミングになっている会社を選びます。
そうすれば、コストを支払わずに済みます。
暴利を取っているのか
(このパラグラフは、ゆったり為替の所感です。)
では、仮想通貨取引所各社は、不当に大きな手数料を顧客から徴収していると言えるでしょうか。おそらく、そうではなさそうです。
その理由は、顧客の取引金額です。
FXの場合、1取引で1万通貨~数万通貨の取引は珍しくないはずです。米ドル/円=100円とすれば、取引額は100万円~数百万円です。
10万通貨など、さらに大きな金額で取引する顧客も少なくないでしょう。
一方、仮想通貨において、顧客は1回にいくら発注しているでしょうか。これを正確に判断することはできませんが、注文板を見ますと、FXに比べて桁違いに少額なのでは?と感じます。
取引数量が多いビットコインでも、1回の約定で数百万円という頻度は高くありません。
そのような少額の取引で企業を維持・発展させていこうという場合、どうしても手数料水準が高くなりがちです。さらに、現物取引手数料無料やマイナス(顧客の受取)などの業者間競争もあります。
このため、取引高がさらに大きくなり、各社の体力がついてきて競争が激しくなったら、レバレッジ手数料(スワップポイント)は徐々に小さくなっていくかもしれない、と予想しています。
上の話は、FXのスプレッド競争と同じ構図で考えています。
FXにおいて、2000年代初めの米ドル/円のスプレッドは1銭~2銭が一般的でした。ところが今では、0.1銭~0.2銭くらいが多くなっています。
15年の時を経て、スプレッドは10分の1になったということです。
FX型のスワップポイント
以上、顧客が取引所(販売所)に支払う場合について確認しました。次に、顧客同士で受渡しする場合(その2)について確認します。
顧客同士で受渡しするというのは、FXと同じです。この方式を採用しているのは、下の2社です。
名称 | 会社名 | 大きさ |
Lightning FX SFD | ビットフライヤー | 最大2.000% |
スワップ手数料 | Zaif | 最大0.375% |
現物取引とレバレッジ取引では、顧客は同一ではありません。そのため、ある顧客層がレバレッジ取引で大きく買ったり売ったりすると、現物価格とレバレッジ価格で価格差が大きくなりすぎる場合があります。
これを是正するための仕組みです。
具体的には、「価格差が広がる方向に取引する場合は、手数料を徴収」「価格差が狭くなる方向に取引する場合は、手数料を付与」です。
トレード手法(案)
この仕組みを使うと、あるトレードができそうだと予想できます。具体的には、以下の通りです。
トレード(案)
- 現物価格とレバレッジ取引価格の関係を、詳細に調べる
- 価格差が広がった後、狭くなる時を狙って取引
この方法を使えるパターンを見つければ、利食いに加えてスワップポイントの受取(収益)を見込めます。
では、そのパターンは何だ?ですが、それを見つけるのが難しいのが問題です。2つのチャートを並べて、関係を見つける努力が必要です。
注意点
なお、このFX型のスワップポイントですが、受渡し時期に注意が必要です。ビットフライヤーは決済完了後、Zaifは2時間ごとですから、FXと大きく異なります。
例えば、ビットフライヤーでスイングトレードをして、利食いしたとしましょう。プラスの成績に満足して取引履歴を見たら、なぜかマイナスになっている…というのがあり得ます。
これは、スワップポイントが大幅マイナスになっている場合に発生します。
スワップポイントの上限は2.00%と巨大ですから、乖離が広がる方向にレバレッジ取引をする場合、注意が必要です。
有利な取引所(販売所)
以上、レバレッジ手数料(スワップポイント)について、取引所・販売所を比較してきました。結果、コスト面で見るならば、どこが最も有利でしょうか。
結論としては、Huobiでしょう。理由は、レバレッジ手数料が最も小さいからです。
ただし、留意点が2つあります。一つは、取扱通貨ペア数が少々少ないことです(5種類)。
もう一つは、朝出勤して夜帰宅するという生活スタイルの場合に注意が必要、という点です。なぜなら、手数料の徴収時刻が深夜0時だからです。
帰宅後に取引をしていて、レバレッジ手数料の支払がうっかり発生してしまったら、痛いです。こういう場合は、DMMビットコインやGMOコインが候補になります。
GMOコインなら、徴収時刻が午前6時なので、うっかりを回避しやすいです。ちなみに、GMOコインでレバレッジ取引可能な通貨ペアは、以下の通り種類が豊富です。
- ビットコイン/円(BTC/JPY)
- リップル/円(XRP/JPY)
- イーサリアム/円(ETH/JPY)
- ビットコインキャッシュ/円(BCH/JPY)
- ライトコイン/円(LTC/JPY)
- ネム/円(XEM/JPY)
- ステラルーメン/円(XLM/JPY)
- ベーシックアテンショントークン/円(BAT/JPY)
- オーエムジー/円(OMG/JPY)
ビットフライヤーも候補になりますが、FX型のスワップポイントが気になるという場合は、選択しづらいです。
最後に、取引そのものに必要なコスト(取引手数料)の確認ですが、ここで比較している各社は全て無料です。
すなわち、サービス維持に必要な経費は、主にレバレッジ手数料(スワップポイント)で賄っているということになります。
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