仮想通貨の新規上場で気になるのは、値動きです。なぜなら、価格が上昇すればうれしいし、下落するなら買いたくないからです。
そこで、過去の実績を確認します。
上場前後の値動き
ここでは、2019年以降に日本で新規上場した仮想通貨の値動きを確認します。
といいますのは、日本の合法な会社で取引して、安全を確保したいからです(海外取引所なら、事例は多数あります)。
また、2017年に日本で数多く上場しましたが、当時は熱狂的な雰囲気が充満していて、何かあったらすぐにお金が集まる(=価格が上昇する)状態でした。
それを現在に当てはめるのは少々無理があるので、2019年以降としています。
では、6つの仮想通貨について、時系列順に確認しましょう。
ステラルーメン(XLM)
- 上場年月日:2019年11月12日
- 販売所名:コインチェック(coincheck)
2017年の熱狂的な仮想通貨価格の上昇により、仮想通貨は犯罪集団の格好のターゲットになりました。そして、仮想通貨の盗難事件が相次いでしまい、新規上場は事実上不可能となりました。
それを打ち破ったのが、コインチェックのステラルーメン(XLM)上場です。これにより、新しい時代が始まりました。
そこで、値動きの様子を下のチャートで確認しましょう。上場した時点を、矢印で示しています(CoinMarketCapから引用、表示期間は2019年8月~2020年3月)。
「日本で初の新規上場=価格大幅上昇」を期待してしまいますが、実際にはそこから下落に転じている様子が分かります。
この様子を価格で見ますと、上場時は8円台で、そこから下落が継続して5円くらいになっています。ざっくりと見て、4割くらいの下落です。
上のチャートでは表示範囲が少々広いので、表示期間を短くした下のチャートで確認します(表示期間は2019年10月~2019年11月)。すると、矢印部分の上場時から、価格が下落している様子が分かります。
では、なぜ価格が下落したのか検討します。
仮想通貨において日本は大市場ですから、価格は上昇しても良いのでは?という印象ですが、現実は逆です。この理由は、ビットコインの影響が大きいでしょう。
下は、同期間のビットコイン価格の推移です(矢印部分で新規上場)。この値動きを見ますと全体的に下落トレンドで、矢印部分はさらにここから急降下しますよ…という状態です。
これに引っ張られる形で、ステラルーメンの価格も下落したのでは?と予想できます。
クアンタム(QTUM)
- 上場年月日:2020年3月12日
- 販売所名:コインチェック(coincheck)
次に、クアンタムを概観しましょう。
コインチェックは、ステラルーメンに続き、クアンタム(QTUM)の取り扱い開始に成功しました。
下のチャートの矢印部分を見ますと、急落下している様子が分かります。この部分で新規上場となりましたから、クアンタムにとって波乱の幕開けです。
ただし、取引可能になって130円前後で買った場合、同年8月には500円前後になりましたので、4倍弱に上昇しました(上のチャートは260円くらいまでの表示ですが、その先も上昇トレンドが続きました)。
この価格推移をもう少し詳しく見るために、チャートの表示期間を短くします。下を見ますと、まさに急落下中だと分かります。
ただし、その後は価格を維持できている様子も分かります。そして、上のチャートで確認しました通り、上昇トレンドを形成しました。
すなわち、このタイミングは絶好の買い場だったということです。
では、なぜクアンタムの上場時に急落が起きたのでしょうか。ここでもやはり、ビットコイン価格が大きく影響している模様です。
下のビットコインチャートを見ますと、大幅下落している様子が分かります。
ビットコイン価格が110万円から50万円まで一気に下落する過程ですから、これに逆行して大幅上昇を期待するのは、少々難しい展開でした。
以上のことから、買う際にはビットコイン価格のチェックも必要だと言えそうです。
ベーシックアテンショントークン(BAT)
- 上場年月日:2020年3月18日
- 販売所名:GMOコイン
クアンタムの上場からほどなくして、ベーシックアテンショントークン(BAT)がGMOコインで取引可能となりました。
この値動きを見ますと、クアンタムに似ていることが分かります。すなわち、上場時は下落トレンドながら、そこから上昇に転じるパターンです。
どれだけ上昇したかを見ますと、上場時は12円くらい、そして数か月後には30円弱ですから、2倍以上になっています。
今までと同じように、短期間を表示したチャートで確認しますと、下の通りです。
こちらは、上場してほどなく価格が反発している様子が分かります。
12円台で買って、すぐに17円という感じですから、この時に買えた人は満足だったことでしょう。
こうなると、どこで売るか?が問題になります。とはいえ、どこで売れば大きな利幅を得られるかという話ですから、贅沢な悩みです。
オーエムジー(OMG)
- 上場年月日:2020年7月22日
- 販売所名:GMOコイン
BATに引き続き、GMOコインでオーエムジーの取扱が始まりました。
こちらは、この記事を執筆した2021年1月時点において、GMOコインでのみ取引可能になっています。
上のチャートを見ますと、新規上場時に買った人は大成功という形をしています。
最初は200円弱で横ばいでしたが、いきなり急騰して800円を超えています。すなわち、4倍以上の値上がりです。
ただし、その後は概ね400円弱で推移しています。2021年1月はビットコインを中心に価格が急騰しましたが、OMGの反応は鈍いです。
すなわち、ビットコインとの価格連動性が比較的弱い可能性があります。
アイオーエスティー(IOST)
- 上場年月日:2020年9月8日
- 販売所名:コインチェック
次に、アイオーエスティー(IOST)を確認しましょう。
下の赤矢印部分を見ますと、価格が乱高下しています。乱高下というと怖いイメージかもしれませんが、価格が動くということは利食い機会に恵まれているということでもあります。
そこで、取引金額を小さくして損する際のダメージを抑えつつ、積極的に利食いを狙いに行くことを検討できます。
なお、上のチャートを見ますと、全体としては横ばいで推移しているように見えます。
そこで、短期トレードをした場合にどうだったか?を見るために、表示期間を短くしたチャートで確認します。
上場時に買っていたら0.6円台くらいで、そこから1週間もしないうちに0.9円台を付けました。すなわち、50%くらい上昇したということですから、買った人は満足でしょう。
ここでもまた、いつ売るか?が問題になりますが、早めの売りが正解だったということになります。
テゾス(XTZ)
- 上場年月日:2020年12月8日
- 販売所名:ビットフライヤー
最後に、テゾス(XTZ)を確認しましょう。これは、ビットフライヤーで取扱が始まり、この記事を書いた2021年1月現在では2社でのみ取引可能です(もう一社はGMOコイン)。
上のチャートを見ますと、あまり良い値動きになっていません。というのは、赤の矢印以降を見ますと、下落トレンドになっているからです。
具体的に見ますと、新規上場時の価格は240円弱くらい、そして1か月もしない間に200円を割り込んでしまいました。
その後、チャートの右側で大きく上昇していますが、これはXTZ単独の理由というよりは、ビットコインを始めとする仮想通貨全体の上昇に伴う動きなのでは?と想定できます。
値動き等のまとめ
以上、2019年以降に日本で新規上場した仮想通貨について、値動きをざっくりと見てきました。その結果、いくつか注目点があります。
いつ買うか
一つ目は、新規上場したら盲目的に買うというのは良くないだろう、という点です。
上の6つのうち4つまでは、すぐに買っても利食いできました。しかし、ステラルーメンやテゾスについては、即買いしていたら苦しい場面が続いたかもしれません。
そこで、即買いしたい場合は、投入資金を絞るという選択肢があります。
例えば、10万円まで投入可能という場合、購入額は最大でも数万円までにしておきます。こうすれば、価格が上昇すれば良し、仮に高値を掴んでしまっても、残りで次の機会を狙えます。
なお、高値を掴んでしまっても、後日上昇するかもしれません。実際、2021年初頭の急上昇により、上の6つの仮想通貨はいずれも価格が上昇しています。
ただし、2021年初頭の急上昇をいつも期待するのは、少々都合が良すぎますから、期待外れになってもOKな金額で取引します。
ビットコイン価格にも注意
また、日本で初めて上場する、すなわち資金の流入が見込めるといっても、ビットコイン価格を無視できないという点も重要です。
なぜなら、ビットコイン価格が下落トレンドの場合は、それに引っ張られてしまう可能性があるからです。
とはいえ、価格が上昇するか下落するかというのは、事前に分かりません。この記事でご案内したQTUM、BAT、IOSTについて、新規上場時のトレンドは下落でした。
しかし、そこで買うのが最良だったのですから、価格上昇を確認してから買うのでは遅いと感じるかもしれません。
この場合に使える方法もやはり、資金の分割です。全部で10万円分買いたいと思ったら、一気に全額投入するのではなく、1万円~数万円ごとに徐々に買います。
こうすれば、買った後に大幅上昇したら含み益になりますし、逆に大幅下落しても、自己資金の一部だけ使っていますのでダメージを小さくできます。
利用する取引所・販売所
さらに、利用する取引所・販売所も重要です。
なぜなら、新規上場後の価格上昇を狙いたい場合、「日本で初めて」が重要だからです。
例えば、ある取引所がビットコインの取り扱いを始めたとしましょう。これを受けてビットコイン価格は上昇するか?と言えば、おそらく何の影響もないはずです。
といいますのは、ビットコインはどこでも売買できる仮想通貨ですから、改めてその取引所で買う必要性がないからです。
ところが、日本初という場合は違います。「その仮想通貨を買いたいけれど海外取引所は嫌だ」という大勢の顧客が集まって、買ってくれます。
その金額はいくらか不明ですが、相当額になるでしょう。すなわち、その仮想通貨の上昇要因になります。
この視点で上の6つの例を見ますと、「日本初」に意欲的で取扱銘柄数が多いのはコインチェックだと分かります。
取引所・販売所 | 新規上場 | 取扱銘柄数 |
コインチェック | 3 | 15 |
GMOコイン | 2 | 10 |
ビットフライヤー | 1 | 12 |
ということは、あらかじめコインチェックで口座を開設しておけば、新規上場狙いの買いをしやすいと言えます。
新規上場情報が発表されてから慌ただしく口座開設すると、間違いの元です。いつどんな情報が出てきても対応可能な状態で待つと、落ち着いて考えることができます。
なお、2021年1月26日、コインチェックでエンジンコイン(ENJ)が新規取引開始となりました。上の6通貨の多くの場合と同様の結果になるでしょうか。注目です。
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