トラリピは、放っておいても利食いを繰り返してくれるのがメリットです。しかし、デメリットもあります。
そのデメリットを確認したうえで、決済トレールの有効性を見ていきましょう。
決済トレールがない(通常の)場合
デメリットとは、例えば、以下の場合です。
- 買いのトラリピをしているときに、相場が急上昇
- 売りのトラリピをしているときに、相場が急降下
本当は大きな利食いを狙えるのに、実際に得られるのは一定額です。下の図は、これをイメージしたものです。青の曲線は為替レートの動きです。
一番左の「買い」で、ポジションを持ちました。そして、「利食い」の位置で決済します。
これで、トラリピは成功です。しかし、その後も、為替レートは上昇し続けたとします。この場合、右端部分で決済できればいいな…と感じます。
トラリピは、一定の含み益ができた時点で利食いします。そういうシステムですから、これは仕方ありません。
トラリピに限らず、この問題はどのリピート系FXにも存在します。また、利食いできたのでOKと考えます。
しかし、大きな利食いが欲しいです。
決済トレールとは
この問題を解決するツールがあります。「決済トレール」です。
トラリピで注文する際に、選択できます。仕組みは、以下の通りです。買い注文の場合で考察します。
為替レートが上昇するとき
上の絵の1で買ったとします。そして、通常は2で決済しますが、決済しません。
為替レートが2よりも20銭高い3になったら、2の位置で、決済注文が逆指値で発注されます。さらに、為替レートが3から4に上昇したら、逆指値注文は2から3に移動します。
すなわち、利食いの大きさが20銭大きくなります。
さらに為替レートが20銭上昇したら、決済注文も20銭上昇します。以下、繰り返しです。この注文のメリットは、円安局面で利食い額を大きく伸ばせることです。
為替レートの上昇が止まるとき
そして下図のように、為替レートが5に到達する前に反落するとします。この時点で、決済注文は2の位置でなく、3の位置に上昇しています。
よって、3で決済します。2のレートで決済するよりも、有利に終了できました。そして、再び1の為替レートで買い注文を出します。
決済トレールを使うと、為替レートが大きく動く場面で有利にトレードできます。
デメリット
では、この決済トレールに弱点はあるでしょうか。あります。以下の場合です。
為替レートが3まで進んだら、2で逆指値注文を発注します。しかし、3まで行かないで1~2を往復するときです。
この場合、決済トレールを使っていると、決済注文がありません。すなわち、利食いできません。通常のトラリピならば、利食いを繰り返します。
具体的に、チャートで確認してみましょう。豪ドル/円の日足です(マネースクエアから引用)。
3か月間を表示していますが、比較的狭い範囲で動いていることが分かります。縦軸の1メモリは50銭です。
このような動きの場合は、通常の利食い決済の方が効果的でしょう。
デメリットの回避方法
このデメリットを回避するには、通常のトラリピと混ぜて発注すればOKです。
例えば、通常のトラリピ注文を8割、決済トレールを2割にします。そして、円高の範囲の注文は決済トレール注文を多めにします。逆に、円安水準の注文は、通常のトラリピを多くします。
というのは、決済トレール注文は、大きく円安になるときに効果を発揮するからです(買いの場合)。
豪ドル/円の月足チャートで確認しましょう。
1992年からのチャートです。55円から108円の範囲で動いていることが分かります。
仮に、為替レートが105円のときに、決済トレールを使うとしましょう。今後の豪ドル/円の値動きは不明ですが、今までと同じような範囲で動くとします。
この場合、決済トレールを使っても、大きな利食いは難しそうです。なぜなら、上のチャートの範囲では、円安の上限は108円だからです。
逆に、円高の位置で使えば、大きな利幅を期待できると分かります。
よって、決済トレールは、円高の部分で多く使うのが良いと分かります。
2009年以降のチャート
上のチャートでは、為替レートの範囲が広すぎて良く分からないかもしれません。そこで、もう少し表示範囲を狭くしてみましょう。2009年以降の値動きです。
左端は、2008年のリーマンショック後安値(55円くらい)です。その後、72円くらいにサポートラインができました。
10年くらいに渡って機能しましたので、大変な長期です。
しかし、チャート右側にある矢印部分で、一気の円高&円安が実現しています。新型コロナウイルス問題を契機とした値動きです。
2020年の値動き
赤矢印部分を、日足チャートで拡大してみましょう。下の通りです。日足ですが、縦軸の目盛りは250銭(2.5円)です。
大変な動きだったことが分かります。
このような値動きで、通常のトラリピ(50銭~100銭くらい?)の利幅で利食いするのは、少々もったいないかもしれません。
こういう時に、決済トレールが大活躍します。
問題があるとすれば、「大きな値動きになるのはいつなのか、誰にも分からない」という点です。
そこで、先ほどご案内しました通り、円安部分では通常の利食いで決済し、円高部分で決済トレールを使う案が出てきます。
狭い範囲のトラリピでは使わない方が良さそう
以上の考察から、決済トレールを使えそうな相場が見えてきました。
- 大きな範囲で取引する場合で、
- 円高部分で買うとき
- 円安部分で売るとき
ということは、比較的狭い範囲でトラリピをする場合は、決済トレールは使わない方が良いのでは?と想定できます。
取引範囲が狭いので、大きな円安・大きな円高を想定していません。その状況で、大きく動いたら有利な決済トレールを採用しても、利食いできるかどうか分かりません。
取引範囲が広い場合に使う手法だと言えそうです。
留意事項
次に、留意事項を確認しましょう。
決済トレールは、20銭ごと
上の解説では、逆指値決済の発注や移動は「20銭」を基準に書いています。
この20銭という数字は、トラリピで固定された数字です。10銭や50銭などに変更できません。
正確には、成行注文
上の説明では、分かりやすさ重視で逆指値注文という表現を使っています。実際には逆指値注文でなく、「決済予定価格を下回ったら成行で決済」です。
逆指値注文とほぼ同じイメージで考察可能ですが、スリッページが発生する可能性があります。
これらの留意事項がありますが、値動きが大きいときにメリットがある取引です。相場状況を考えながら、決済トレールで取引しましょう。
注文方法
決済トレールの注文方法を確認しましょう。いたって簡単です。下は、トラリピの注文画面です。
下から2番目の「決済トレール」をクリックするだけです。有効になると、左側のチェックボックスが青くなります。上の画像は、有効にした状態です。
右側に、(トレール値幅0.200円)とあります。これは、20銭ごとにトレールしますよ、という意味になります。
通常のトラリピと決済トレールを混ぜる
最後に、通常のトラリピと決済トレールを混ぜて発注する方法を、確認しましょう。例えば、以下の通りです。
50銭ごとに買い注文を出しています。そして、通常のトラリピと決済トレールが、交互になっています。
- 110.00円(通常)
- 109.50円(決済トレール)
- 109.00円(通常)
- 108.50円(決済トレール)
- 108.00円(通常)
- 以下続く
この注文は、以下のように2分割すると楽です。
通常のトラリピ
- 110.00円
- 109.00円
- 108.00円
決済トレール
- 109.50円
- 108.50円
- 107.50円
発注したら、後は利食いするのを待ちます。
通常、相場の大波乱は困ります。しかし、決済トレールがあると、大波乱が待ち遠しくなるかもしれません。
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