ただ今、ゆったり為替はパンケーキスワップ(PancakeSwap)やヴィーナス(Venus)などの分散型金融(Defi)に多くの時間を投入しています。
そこで、これらのリスクと対処法について概観します。
Defi(パンケーキスワップなど)とは
Defiはブロックチェーン上のサービスで、仮想通貨の流動性を供給したりトレードをしたりすることで仮想通貨を稼ぐことができます。
その中で、確実度が高くて利回りが良いとユーザーに評価されているのは、主に下の方法です。
- 取引所に流動性を供給して報酬をもらう
- 仮想通貨をステーキングして稼ぐ
- 仮想通貨を貸して稼ぐ
ここでは、リスクを考察するために必要な部分についてのみ考察し、さらに深い詳細につきましては、既に多くのブログ記事が溢れていますので割愛します。
この記事で主に注目するのは、1つ目の「取引所に流動性を供給して報酬をもらう」部分です。
流動性の供給
(可能な範囲で専門用語を排して考察します。)
取引所で仮想通貨を売買する場合、例えば「ビットコインを売ってイーサリアムを買いたい」という場合、その取引に応じてくれる相手が必要です。
すなわち、「そのビットコインをもらって、代わりにイーサリアムをあげてもいいよ」という人の存在です。
日本国内の販売所の場合、顧客が売買したいと希望すれば販売所がそれに応じてくれます。しかし、運営主体がいないブロックチェーン上では、その取引に応じてくれる人がいるとは限りません。
そこで、ビットコインとイーサリアムの両方をあらかじめ募集して貯蔵庫にため込んでおき、取引したい人がいたら、その仮想通貨を使って時価で売買する考え方が考案されました。
こうすれば、「ビットコイン→イーサリアム」という取引も「イーサリアム→ビットコイン」という取引も、円滑に実行できます。
そして、仮想通貨を貯蔵庫に提供してくれた人に対して、取引手数料の多くを報酬として分配します。
なお、仮想通貨を提供するには、2つの通貨を同時に提供し、かつ、それぞれの金額が同等になるようにします。片方の通貨に偏ると、円滑な売買ができない可能性があるためです。
また、この提供は、いつでもやめることができます。
(ちなみに、実際にはビットコインとイーサリアムという組み合わせでなく、この取引サービスのブロックチェーンに対応した仮想通貨のみ交換可能です。)
リスク
では、以下順にリスクを見ていきます。全部概観するのは無理な話なので、大きな点に絞ります。
リスク1:仮想通貨の暴落
上の考察で、仮想通貨をペアにして提供するという話を書きました。では、2つのうち片方の仮想通貨が暴落したらどうなるか?です。
例えば、草コインとBNB(バイナンスコイン)の組み合わせで、それぞれ同額の流動性を供給したとしましょう。
その後、草コインの価値が暴落したとします。すると、世の中の人はその草コインを保有したくありませんから、BNBと交換しようと殺到します。
すなわち、貯蔵庫にあるBNBは枯渇して草コインだけが満杯になります。そして、最終的にその草コインの価値は0円近くになったとします。
その間、流動性を供給していた人はボーっとしていて、流動性を供給したことを忘れていました。
ふと気づいて流動性供給を止めて仮想通貨を取り戻したところ、BNBはごくわずかで草コインが大量に手元に戻る…そんな可能性があります(貯蔵庫にあるのは草コインばかりで、BNBの在庫はほぼゼロだから)。
報酬があるとはいえ、価値がほとんど無い草コインが戻ってきても困ってしまいます。これがリスクの一つです(これは極端な例ですので、実際にこれが起きるかどうかはやってみないと不明)。
対策
こんなリスクがあるなら、草コインの流動性を供給する人はいないのでは?となりますが、そこは報酬額の大きさで調整しています。
例えば、リスクが高い仮想通貨を供給してくれる人には、年率数百%といった高い利率の報酬があります。
そこで、リスクが顕在化するまでは巨大な利率で稼ぎ、リスクが顕在化するかも?となったらサッサと逃げるという対策を取れます。
また、上手に逃げられるかどうか分かりませんので、逃げるのに失敗しても「仕方ない」と諦められる金額で実行することも大切です。
リスク2:その他多数のリスク
上で考察したリスク1を徹底的に回避するには、どうすれば良いでしょうか。
考えられる方法の一つは、「常に米ドルと価値が同等になるように調整された仮想通貨(=ステーブルコイン)のペアで流動性を供給する」です。
仮想通貨は、短期間で価値が何倍にもなったり、逆に数分の1になったりするのが魅力です。しかし、安全という視点ではデメリットになります。
そこで、ステーブルコインを使用します。これなら価値の暴落がなく、暴落する時はすなわち米ドルが暴落する時です。
一般的に、米ドルが暴落して価値が0円近くになるとは想定できませんから、安全度は抜群です。
このような仮想通貨のペアの例は、USTとBUSDの組み合わせです。これらはステーブルコインですから、暴落はありません。
暴落がないということは、その分だけ安全だから報酬も少ないだろう…と思いきや、下の赤枠部分の通り、年率で17%以上の報酬が設定されています。
本当にリスクがないならば、この報酬はおかしな事態です。
例えば、米国などで米ドルを使って生活している人は、米ドルで預貯金を持っているでしょう。そして、利息はとんでもない低さです。
この状況で、価値が米ドルに連動している仮想通貨であり、いつでも米ドルに戻すことができて、しかも利率が17%もあるなら、合理的な人ならば皆この取引に参加するはずです。
そして、この取引への参加者が多くなれば、それに伴って利率が下がっていき、リスクと報酬が見合ったところで落ち着きます。
しかし、年利17%で放置されていますので、この理由を考察します。
理由1:仮想通貨の知名度
単純に、仮想通貨がまだ十分に世の中に知れ渡っていないから、という理由です。
「仮想通貨=怪しい」という図式で考えている人は、世の中に数えきれないほどたくさんいるはずです。そういう人にとっては、安全度が高くて利回りが高いサービスがあっても手出し無用と考えるでしょう。
また、内容を吟味することなく、「利回りが高いとはすなわち詐欺だ」と直感的に考えて逃げることもあるでしょう。
そういう人が大多数ならば、高い利率で放置されていてもおかしくありません。
ただし、仮想通貨にどっぷりハマって楽しんでいる人も、何百万人~何千万人といることでしょう。これだけの人数がいれば、安全で年率10%超という内容に惹かれて、大勢集まるはずです。
そう考えると、高い利率で放置されている理由を仮想通貨の知名度に求めるのは、やや不適切な感があります。
理由2:Defiの知名度
理由1と被る面がありますが、Defi(分散型金融)の知名度の低さです。
ゆったり為替はDefiという名前は知っていましたが、放置して勉強してきませんでした(それが原因となり、巨大な機会損失を生むことになったのですが)。
ゆったり為替と同様の状態の人は、数多くいるでしょう。このような人々がDefiの世界に参加するようになれば、やがて利率は下がってくるだろうという考察です。
理由3:バグ
バグが発生して自分の仮想通貨が失われる可能性…これもあるでしょう。
Defiという言葉が誕生してから、まだ大した年月は経過していません。そして、技術は日進月歩で発展しています。
すなわち、バグの発生は当然のように想定できますし、致命的なバグが顕在化して自分の仮想通貨が盗まれるなどしたら、ダメージが大きいです。
そこで、Defiの世界に自分の仮想通貨を投入するなら、そのリスクに見合った報酬をもらいたいという発想です。
ただし、このリスクがあるのは事実ですが、この理由だけで年率10%台後半が正当化できるとも思えません。そこで、さらに別の理由も考察していきます。
理由4:本当に米ドルに連動しているか
ここではステーブルコインを例にしていますが、その仮想通貨は本当に米ドルの価値と同等なのか?という問題です。
ステーブルコインは、発行主体があることが通常です。そして、その発行主体は、発行した仮想通貨の金額と同額の米ドルを保有しています。
この裏付けがあるから、その仮想通貨は常に米ドルと同価値になっています。
では、実はその発行主体は適切な量の米ドルを保管しておらず、米ドルに連動しているというのが幻想にすぎないとしたら、どうでしょう?人々が幻想から覚めたら、その仮想通貨は暴落します。
これが具体的に問題となったのは、テザー(USDT)です。米国で不正会計が疑われて訴訟となり、結局、テザー社は和解金として1,850万ドルを司法当局に支払うことで決着しています。ちなみに、不正会計があったのかどうか不明なままです。
こういった不信感も、利率に反映されていることでしょう。
ただし、全てのステーブルコインが問題含みというわけではなく、例えばBUSDはバイナンスが他社(PAXOS)と組んで発行していますが、米ドルとBUSDの残高を毎月公開しています。
理由5:開発者は誰?
一般的に、Defiは誰が開発・運営しているのか、よく分かりません。
ということは、開発者が悪意を持っている場合、Defiで資金を集めたところでシステムをいきなり閉じて仮想通貨を全て持ち逃げすることが可能です。
一般的に、パンケーキスワップはDefiの中で安全度が高いとみなされているはずですが、国内取引所のような安全度はありません。
そこで、利率には開発者が不明というリスクも反映されているでしょう。
理由6:利用する仮想通貨の種類の多さ
例えば、パンケーキスワップでUSTとBUSDの組み合わせで流動性を供給するとしましょう。これを実行すると、以下の仮想通貨が登場してきます。
- UST
- BUSD
- BNB
- CAKE
USTとBUSDは、流動性供給で使用します。BNBは、このサービスを使うための手数料支払いで使います。そして、CAKEは報酬でもらえる仮想通貨です。
4つの仮想通貨を、同時に管理することになります。正確な情報を随時得ながら、適切に管理できるでしょうか。
ビットコインやイーサリアム等と異なり、バイナンスを使っていない人には馴染みがない仮想通貨ばかりです。これも、ユーザーにとってのハードルとなります。
種類を減らしたいなら
管理する仮想通貨の種類を減らしつつ高利回りを得たい場合、通貨ペアの流動性供給でなくCAKEのステーキングでCAKEを稼ぐ方法が使えます。
下は、その様子を示しています。
ここで登場する仮想通貨は2種類です。
- BNB(手数料支払い用)
- CAKE
BNBはごくわずか(1,000円分?)くらい準備しておいて、残りは全てCAKEで運用です。運用した結果もらえるのはCAKEです。こうすれば、CAKEの動向にだけ注力すれば良いということになります。
リスク3:日本特有のリスク
次に、日本特有のリスクについて見ていきましょう。ここで想定しているのは、日本に住んでいて英語は得意でないというユーザーです。
法制度
パンケーキスワップに限らず、有名なDefiは海外で運営されています。すなわち、日本の法律の効力は及びません。
この状態で何かトラブルがあるとしましょう。さて、どうやって仮想通貨を取り戻しますか?という問題です。
金融庁や国民生活センターに申し立てても、成果はないでしょう(海外の話だからどうしようもない)。
では、Defiと直接交渉するか?ですが、英語を自由に使えなければ、苦情を適切に伝えることさえできません。そもそも、Defiに苦情受付窓口なんてあるでしょうか。
受付窓口があるとしても、英語を適切に使えることが前提になるでしょう。
適切な最新情報を得るには英語が必須
仮想通貨の世界で最新情報を得るには、英語が必須です。日本語のブログ等でも情報を得られますが、英語に比べると薄っぺらくなりがちです。
その理由ですが、以下の通りではないか?と予想しています。
結果として、同じような内容の記事が溢れかえることとなり、情報に奥行きがありませんし速報性に欠けることとなります。
そこで、「英語にも仮想通貨にも精通している人」が積極的に掲載している記事を中心に読むことによって、より良い情報の取得に努めることになります。
ただし、そのような人であっても、全ての英語情報を日本語にしているわけではありません。よって、仮想通貨を本当に理解したいなら、英語は必須です。
そこまで理解する必要はないし稼げればOKという場合は、自分にとって有効な情報を発信してくれる人を見つけて、読み込むのが良さそうです。
税制
日本の仮想通貨に関する税制は懲罰的な上に、仮想通貨の取引実態を反映しているとは到底思えない内容です。
その結果、日本の税制を遵守しながらパンケーキスワップ等のDefiで運用していこうという場合、困難に遭遇することになります。そこで、収入は給与所得だけだという場合、仮想通貨の年間収入は20万円以内に収めるのが楽です。
それを越えてしまいそうな場合は、あらかじめ税制を確認してから実行すべきでしょう。
投入金額が大きい場合、ある仮想通貨から別の仮想通貨に交換したり複利運用したりする際に税制に対応できるか?を確認しておかないと、ひどい目に遭う可能性があります。
まとめ
以上、パンケーキスワップを題材にしながらDefiのリスクを概観しました。
リスクばかり書いていますが、それはこの記事がリスク考察を目的としているからであり、それを補って余りあるメリットがあるのも事実です。
よって、多くの人々が注目しています。
数多くのリスクが転がっているこの世界では、「分からなければ他人に聞けばOK」という他人依存的な状況でいると、いざという場合に対応できずに冷や汗をかく可能性があります。
そこで、他人任せにせず、常に自分が主体となって行動するように心がけたいです。
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