どの手法にも、メリットもあればデメリットもあります。よって、「必勝法」というのは難しそうです。
しかし、そこを曲げて、両建ての必勝法を考察します。
両建ての必勝法が難しいパターン
最初に、裁量トレードで両建てになる(なってしまう)パターンを3つ考えます。
ゆったり為替が考える範囲ですが、この3つの両建ては難しいのでは?と思います。買い・売り共に同数を取引するとします。
買いポジションが含み損になってから売り
最初に、どこかの為替レートで買ったとします。その後、下落してしまい、買いポジションを保有したまま新規に売る場合です。
下の図の通りになります。
新規で売りになって以降、為替レートがどのように動いても、損益合計は常に含み損になってしまいます。これは厳しいです。
「両建て後、売りポジションを利食いした後、為替レートが上昇するのを待って買いポジションも利食い」というのは、ありうる話ですが困難です。
その技術があるなら、この両建てをしないでしょう。
売る時点で買いポジションを損切りします。そして、売りポジションを利食いした後で新規に買います。この方が、より大きな成功を得られるからです。
買いポジションが含み益になってから売り
次に、買った後に含み益になり、その時点で売りポジションを持つ場合を考えます。これも、両建てになります。
その後、為替レートがどのように動いても、ポジションの合計は含み益です。しかし、これはもったいないです。
為替レートが上昇すると、売りポジションの含み損が増えてしまいます。逆に為替レートが下落すると、売りポジションの含み益は増えますが、買いポジションの含み益が減少します。
この場合は、両建てにしないで、どこかの時点で買いポジションを利食いし、その後、下落すると思う時点で売る方が合理的です。
買いと売りを同時に実行
最後に、ある為替レートで買いと売りを同時に実行する場合です。これも、難しいです。
為替レートがどのように動いても、スプレッド分だけの損失が発生します。
「先に片方を利食いして、その後、もう一方のポジションを利食いする」という方法もあります。これは、最初に見た「買いポジションが含み損になってから売り」と同じ話になります。
すなわち、為替レートが動くと思う側にポジションを取り、利食いしてから、その逆のポジションを取るのが合理的です。
含み損が増える側に、わざわざポジションを持つ必要はありません。
買いと売りの価値が同じなのが問題
こうしてみると、裁量トレードの場合、どのように両建てをしても合理的でないという結論になってしまいます。必勝法とは程遠いです。
この考察で問題なのは、買いと売りで価値が同じということです。例えば、以下のようなことです。
- 買いと売りで同数を売買している
- 為替レートが上下どちらに動くか、確率に明確な違いがない
- 同じ時間軸で考察している
「同じ時間軸」ですが、例えば、買いも売りも日足で考えているという具合です。片方が月足で、もう一方は日足なら、別の時間軸となります。
何を言っているのか?ですが、下の両建て手法3つを考察すると、理解できるでしょう。
必勝法に近い両建て手法3選
以下、必勝法に近い両建てを3つご案内します。
「必勝」と断定できないのが残念ですが、相場ですので仕方ありません。上で考察した問題点3つを排除した手法です。
両建て手法1
この両建てを実行するには、以下の条件が必要です。
- 現在値は歴史的安値圏にあり、将来は上昇すると予想している。
- その通貨ペアを買うと、スワップポイントは継続的にプラスになる。
- 年単位では安値圏であるものの、日・時間単位では売っても良い状況。
すなわち、現在の為替レートが歴史的な安値圏にあるということです。例えば、下の豪ドル円ならば、概ね65円未満くらいで実行可能と思います。
下の米ドル円なら、90円未満で実行かな、と思います(80円未満の方が良さそうですが、そこまでは欲張らず)。
具体的な内容
上の3つの条件を満たしたら、両建てでポジションを保有します。
トレードしようとしている人は、何らかの理由で下落を予測し、売りたいと考えています。
一方、超長期(過去数十年)で見れば、現在は安値圏にあるため、長期で考えれば上昇するだろうとも予想しています。そこで、両建てです。
トレードが成功するとき
短期的には下落を予想しています。そこで、最初に売りポジションを決済できるでしょう。利食いです。
次に、買いポジションの利食いを狙います。売りポジションを利食いできた時点では、買いポジションは含み損になっています。
しかし、為替レートは上下動します。また、長期的には上昇を予想しています。よって、為替レートの上昇を気長に待ちます。
気長と言っても、意外に早く利食いできるかもしれません。どれくらいの期間が必要か不明ですが、その間はスワップポイント益をもらいます。
売りトレードが期待通りにならない場合
短期的には、為替レートが下落すると予想しました。よって、先に売りを利食いできるのですが、予想は外れる場合があります。
すなわち、売りポジションを利食いする前に、為替レートがひたすら上昇してしまうパターンです。
この場合、急いで決済する必要はありません。為替レートが下落するのをじっと待ちます。そして、下落して売りポジションが含み益になったら、利食いします。
その後は、買いポジションの利食いを狙います。
どうしても下落せず、為替レートが上昇一辺倒な場合は、買いポジションと売りポジションの両方を同時に決済します。
こうすれば、売りポジションの含み損と、買いポジションの含み益が相殺しあって、合計で損失はわずかになります。計算上は、スプレッド程度の実現損になります。
スワップポイントをどうする?
ここで問題になるかもしれないのが、スワップポイントです。と言いますのは、多くのFX業者では、買いと売りでスワップポイントの大きさが異なるからです。
例えば、以下の通りです。1万通貨を取引する時…
- 買いの場合:毎日50円のプラス
- 売りの場合:毎日60円のマイナス
こんな感じのFX業者が大半です。すなわち、買いと売りで同数のポジションを持ってしまうと、合計で毎日少しずつ損することになります。
ところが、買いと売りでスワップポイントが全く同じFX業者があります。くりっく365です。下の通りです。
- 買いの場合:毎日50円のプラス
- 売りの場合:毎日50円のマイナス
くりっく365なら、スワップポイント損を考えなくても済みます。
ただし、くりっく365の最低取引数量は1万通貨です。1,000通貨から取引したい場合は、みんなのFXが候補になります。
みんなのFXも、多くの通貨ペアで、買いと売りでスワップポイントが全く同じです。
デメリット
さて、なかなか良い感じに見えるトレード方法ですが、デメリットがいくつかあります。
デメリットの1つ目は、為替レートが歴史的安値圏にある場合だけ実行可能だということです。為替レートが歴史的安値圏にあるから、将来は上昇するだろうと予想できます。
また、歴史的安値圏で両建てするのですが、過去最安値を超えてさらに安値圏へ下落し続けてしまう場合に、問題含みとなります。
と言いますのは、売りのポジションは利食い済みですが、買いのポジションは持ち続けているからです。すなわち、含み損が膨らんでしまいます。
しかし、過去数十年の安値圏で買っているのですから、含み損はある程度限定的だろうと予想できます。十分に円高になってから実行できる方法です。
なお、ひたすら円高になり続けるような通貨ペアでは、この方法は難しいです。安定感のある先進国通貨ペアで実行可能です。
両建て手法2
両建て手法の2つ目に移りましょう。この両建てを実行するには、以下の条件が必要です。
- 現在値は歴史的安値圏にあり、将来は上昇すると予想している。
- その通貨ペアを買うと、スワップポイントは継続的にプラスになる。
- 年単位では安値圏であるものの、日・時間単位では売っても良い状況。
すなわち、両建て手法1の条件と同じです。これらの両建ては、何としてでも成功で終わらせたいという方法です。
よって、短期的な予想に加えて、長期的なトレンドも利用します。短期予想は下落、長期予想は上昇。複数の時間軸を使っています。
具体的なトレード方法
上の条件を満たしたら、大きめの買いポジションを保有します。
過去の円高記録が実現してもOKな証拠金を準備して、買いポジションを持ちます。また、できるだけ円高の位置で買います。
あとは、自由に新規売りして、利食いを繰り返します。
ただし、買いポジションの数量に比べれば、1回の取引で売る数量を十分に小さくします。売りポジションの合計数量も、買いより十分に小さくします。
買い数量:10万通貨
1回の売り数量:5,000通貨
売りは自由に実行するが、同時に保有する売りポジ合計は7万通貨まで など。
トレードしようとしている人は、何らかの理由で下落を予測し、売りたいと考えています。一方、過去数十年で見れば、現在は安値圏にあります。
すなわち、長期で考えれば上昇するだろうと予想できます。そこで、両建てです。
トレードが成功するとき
自由に売って取引します。成功すれば、小さめの利食いを数多く繰り返せます。
また、売ったポジションで利食いできず、為替レートが上昇する場合もあるでしょう。この場合、そのポジションは含み損を抱えます。
しかし、先に十分な量の買いポジションを持っています。これは含み益になります。
(売りの数量) < (買いの数量) ですから、上昇すればするほど、合計で含み益が増えます。
売りのトレードは含み損を抱えているのに、合計では含み益が増えています。買い数量を、売り数量よりも多くしているからです。
また、(売りの数量) < (買いの数量) ですから、毎日のスワップポイントは、合計でプラスを確保できます。
こうして考えると、売り取引を繰り返している最中に、為替レートが大幅上昇してしまってもOKという、素晴らしい状況になります。
デメリット
しかし、このトレード方法にもデメリットがあります。
買ったときのレートよりも低いレートで数多く売った後で、為替レートが上昇するときです。このときは、レートが上昇すると合計で含み損となる場合があります。
できれば、買ったレートよりも上で売ります。しかし、買いの数量が十分に大きいので、あまり神経質にならなくても良いかもしれません。
また、過去最安値を超えてさらに安値圏へ下落し続けてしまう場合、売りのポジションは利食い済みですが、買いのポジションは持ち続けています。
すなわち、含み損が膨らんでしまいます。よって、十分に円高の位置で買います。
両建て手法3
長期のリピート系FXで、両建てします。リピート系FXとは、トラリピに代表されるトレード手法です。
例えば、下のチャートはNZドル円です。長期間にわたって、40円台前半~90円台半ばで動いていることが分かります。
そこで、NZドル=50円台以下くらいで、10万通貨くらい買って、長期保有します(何万通貨でも構いません)。
そして、買値~95円くらいの間で、売りのリピート系FXを仕掛けます。全部で7~8万通貨くらいでしょうか。
すると、NZドル円が買値よりも上で推移する限り、どのように動いても含み益になります。しかも、値動きのたびに利食いしますし、スワップポイント益も入ります。
長期リピート系注文の両建てのデメリット
この方法のデメリットが顕在化するのは、2つの場合でしょう。
- 為替レートが30円台、20円台と進む場合
- スワップポイントが大幅マイナスに転じる場合
どんどん利食いすれば、証拠金が増えていきます。すなわち、円高になってもトレードを維持できます。
しかし、30円台や20円台になると、さすがに厳しそうです。
また、NZの政策金利が劇的に引き下げられて、NZドル円を買う場合のスワップポイントがマイナスに転じてしまう場合も、具合が良くありません。
利食いでカバーしてくれれば良いのですが。
両建てしないで、買いポジションだけで良いのでは?
以上、3つを考察しました。
これらの両建て手法は、歴史的に見て安値にある通貨ペアで行います。将来のレート上昇が見込めるから、というのがその理由です。
ならば、両建てしないで、買いポジションだけ保有すれば良いのでは?という疑問が出てきます。買いポジションを持って、スワップポイントを気長にもらい続けます。
そして、将来大きな利食いを期待します。
この疑問は的を得ていると思います。そのほうが簡単です。なのに、わざわざ両建てをする理由は、以下の通りでしょう。
- トレードするほうが、より多く利食いできる可能性がある。
- トレードするのが楽しい。
FXをする目的は資産の成長ですが、その過程も楽しみたいというのが本音でしょう。
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