前回記事のチェココルナに続いて、ポーランドズロチを長期トレードの視点から考察します。
ポーランドの位置
画像引用:Google Map
ポーランドの位置関係は上の地図の通りで、東側でベラルーシとウクライナ、北側でロシアと国境を接しています。直近の情勢を踏まえると穏やかでない位置関係ですが、NATOに加盟していて安全が確保されています。
また、西側ではドイツと国境を接しており、EU諸国との貿易が活発な様子が分かります。経済関係の結びつきの強さを受けて、時期不明ながら将来的にユーロを導入予定です。
ポーランドズロチの長期チャート
マイナー通貨ペアはスプレッドが広くなりがちで、米ドル/円のような流動性もありません。そこで、スワップポイントや長期の値動き狙いが主流となります。この視点で、ポーランドズロチ/円とユーロ/ポーランドズロチの長期チャートを確認します。
ポーランドズロチ/円の長期チャート
画像引用:みんなのFX
上の長期チャートは2000年以降の表示です。ゆったり為替は1970年代以降のチャートを好むものの、旧ソ連圏時代のチャートが仮にあったとしても使い道がなさそうで、経済が安定した2000年以降で十分でしょう。
画像引用:みんなのFX
上のチャート中ほどで為替レートがとびぬけて高くなっており、これはリーマンショック直前の2008年に記録しています。そして、リーマンショックを受けて真っ逆さま。その後はレンジで比較的安定した推移となっています。
よって、ポーランドズロチ/円のトレード手法として、レンジ内の安値圏で買って上昇したら売るか、あるいはスワップポイント狙いの長期保有が候補となります。
ユーロ/ポーランドズロチの長期チャート
画像引用:みんなのFX
ポーランドは日本よりもユーロ圏とのつながりが強いので、ユーロ/ポーランドズロチの長期チャートも確認します。
2008年に乱高下した部分を除きますと、概ね安定しているように見えます。ただし、じわじわとズロチ安(ユーロ高)になっている様子も分かり、これは少々おかしなことです。
ポーランドはユーロ圏加入を目指すことになっており、少しずつ経済を改革しています。すなわち、ポーランドの財政や経済状況は徐々に改善しているはずであり、ユーロに対して強くなることはあっても安定的に下落し続けるのはおかしいです。
この疑念の回答については、この記事の下部で紹介します。
画像引用:みんなのFX
長期トレードの視点でチャートを見ますと、直近で最高値5.0を記録していることが分かります。2000年代にも同程度の価格水準を記録しており、4.9~5.0あたりで強力なレジスタンスラインを確認できます。
このレジスタンスラインが機能するならば、ユーロ/ポーランドズロチを売ってスワップポイントを狙うのは合理的です。レジスタンスラインで大きく反落する場面があれば、利食いできます。
ポーランドの政策金利
ポーランドズロチは比較的穏やかな値動きをしていると分かりましたので、スワップポイント狙いができそうです。そこで、ポーランドの政策金利の推移を確認します。
スワップポイントは銀行間短期金利をもとにして決められており、政策金利が基準ではありません。しかし、銀行間短期金利データの取得は難しいですし、政策金利は短期金利に多大な影響力を持っています。そこで、政策金利を使っておおよその検討が可能です。
上のグラフのとおり、ポーランドの政策金利は1990年代から下落トレンドが続いたことが分かります。政治や経済が安定すると金利も低下する傾向にありますので、これは良い傾向です。
そして、直近で大きく跳ね上がっていますから、スワップポイント狙いもできます。
日本の政策金利
日本の政策金利は確認するまでもないと感じつつも、念のためチェックします。ほとんどゼロという感じで、直近の世界的な金利上昇トレンドにおいても政策金利は無風状態です。
よって、円売りの外貨買いをすると大きなスワップポイントを得られます。
ユーロ圏の政策金利
もう一つ、ユーロ/ポーランドズロチの売り取引でスワップポイントを狙えるかどうか、ユーロ圏の政策金利と比較します。グラフ中のECBとは、欧州中央銀行を示します。
ポーランドの政策金利はユーロ圏よりも恒常的に高いので、スワップポイント狙いが可能だと分かります。
ポーランドズロチのトレード手法(案)
以上の考察を受けて、トレード手法が見出せます。
ポーランドズロチ/円については、レンジの安値圏で買って上昇したら利食い。あるいは、チャート形状は重視しないでスワップポイント狙いで買います。
ユーロ/ポーランドズロチの場合は、4.9~5.0付近が高値になると期待して売ります。そして、スワップポイントをもらい続けると同時に反落したら利食いです。
ポーランドズロチの流動性
以下、チェココルナ記事と同様にポーランドズロチの流動性を確認します。スワップポイントと為替レートが良い感じで推移しても、ちょっとしたショックで取引が一時的に停止されるようでは安心して取引できません。
流動性が十分ならば、少々のショックがあっても取引停止になりませんし、スプレッドも開きづらくなります。
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取引高の割合
上のグラフは、BIS(国際決済銀行)の報告書から得たデータで、世界全体の金融市場でその通貨がどれくらい取引されたか、全体から見た割合を示しています。BISの調査は3年ごとに実施されており、グラフ横軸も3年ごとです。
また、比較対象があると分かりやすいので、チェココルナも同時に示しています。
チェココルナの場合、横軸と重なってしまって0%という状態でした。一方、ポーランドズロチは0%でないことが分かります。すなわち、ポーランドズロチはチェココルナよりも流動性が高く、その分だけショックに強いということです。
世界全体から見た割合の場合、0%付近に張り付いてしまって実態がよくわかりません。そこで、1日あたりの取引金額推移を確認します。
2022年において、ポーランドズロチは1日あたり540億ドルくらい取引されており、これはチェココルナの2倍弱という数字です。また、1998年にはゼロ近辺を記録しており、直近25年くらいでポーランドがいかに経済発展してきたのかが分かります。
よって、今後もこの推移を継続してくれるなら、ポーランドズロチは有望なトレード対象になると予想できます。
国家としての信用度
通貨の取引高推移を見れば、国家としての信頼度も上昇しているだろうと予想できます。そこで、格付会社による信用格付の推移も確認します。
2000年代前半にかけて一気に信用をつけ、それ以降は安定的に推移していることが分かります。credit ratingの視点で考えますと、日本と同程度の信用力ということになります。
ポーランドはユーロを採用するか
ポーランドがユーロを採用するとポーランドズロチは消滅しますから、その時点でポーランドズロチを使ったトレードも終わります。そこで、ユーロ採用の準備状況を確認したのですが、どうも雲行きが怪しいです。
平たく書くなら、「ユーロを採用すると宣言したけれど、今となっては採用したくないし、でも採用すると言っちゃったし、まあここは穏便にすごしましょう」という感じに見えます。
ポーランド中央銀行のホームページを確認したところ、ユーロ採用や準備状況に関するデータに到達しづらく、サイトがとても重いので調査をやめました。そして、政治面から確認したところ、第一党はユーロ採用反対です。その他の情報を見ても、ユーロを積極的に採用したいという動きが見えません。
一方、ユーロ側の報告書では、チェコなど他の国々と同様にポーランドを扱っていて、淡々と状況を書いています。
ユーロ/ポーランドズロチの長期チャートを見た時の違和感は、これを反映しているのでしょう。ブログ用記事だということもあり、ポーランドがユーロの採用条件をどれほど満たしてるか確認していませんが、どんどん前進しているわけではないと予想できます。
長期チャートを元にして考えると、準備状況はむしろ後退しているかもしれません。
トレードの可否
以上を踏まえますと、ポーランドズロチの長期トレードでは以下の評価ができそうです。
プラス面
- ポーランドの金利は日本やユーロ圏よりも継続的に高い。
- ポーランドズロチ/円はレンジであり、レンジ内の値動きで利食いを狙える。
- ユーロ/ズロチはレジスタンスライン付近にあり、下落すれば利食いも狙える。
注意点
ユーロを導入するために国内体制を整えるのは嫌なんでしょ?という状況で、これが争点になるとポーランドズロチが不安定化するかも。
なお、注意点は不安要素でもあり、同時にメリットでもあります。ポーランドがユーロを導入しなければ、延々とポーランドズロチを取引できるからです。
ユーロの導入是非が国際舞台で争点とならず、かつ、ポーランドズロチがユーロに対して弱くなりすぎなければ、ユーロ/ポーランドズロチの取引はメリットが大きそうです。
最後にお知らせ。みんなのFXではユーロ/ポーランドズロチを取引できますし、みんなのシストレではポーランドズロチ円のリピート系注文を売買可能です。