長期保有の定期収入と言えば、株式投資なら配当、FXならスワップポイントです。
そして仮想通貨でも、ステーキングや貸暗号資産で定期収入を得られるようになりました。そこで、仮想通貨の長期保有について検討します。
仮想通貨の長期保有で狙う収益
長期保有で狙う収益は、主に2種類です。
- 価格の上昇(キャピタルゲイン)
- 定期収入(インカムゲイン)
キャピタルゲイン
一度に大きな収入を得たい場合、キャピタルゲイン狙いで安い時に買って、高値で売ります。これが期待通りになれば、資産が大きく増えます。
ところが、実行するのはとても難しいです。下のビットコインの月足チャートを使って、その難しさを確認します(チャートはDMM Bitcoinから引用)。
チャートの右端部分で、価格は600万円を超えています。すなわち、この大相場の前(2020年末まで)に買って長期保有すれば、全員含み益になりました。
しかし、2020年末までに大損になった人も大勢いることでしょう。と言いますのは、価格下落局面があったからです。
価格上昇後に過去を振り返ると「損切りしないで保有していれば良かったのに」ですが、それは2021年の600万円という数字を知っているから言える話です。
2017年末に250万円で買って、その後40万円台まで下落し続けた状況でも保有し続けるのは、精神的に大変なことです。この過程で損切りするのは、仕方がありません。
このように、保有中に価格が上昇するかどうかというのは、運の要素や精神力も関連してきますので、キャピタルゲイン狙いで安心感を得るのは難しいです。
また、期待通りに利食いできたとしても、手元から仮想通貨がなくなってしまうという問題があります。すなわち、売った後は収入がありません。
こういった問題点があるとはいえ、成功すれば大きな果実(=利食い)を得られますので、大勢が狙っています。
インカムゲイン
次に、今回の中心であるインカムゲインに移ります。インカムゲインとは、定期的な収入です。保有しているだけで収入がありますから、含み損益は脇に置いて考えられます。
また、仮に含み損になっても、インカムゲインの蓄積でマイナスを解消できるのが魅力です。
含み損益:△10万円
インカムゲイン:+15万円
この場合、10万円の含み損があっても合計で5万円のプラス。
さらに、「いつ売れば良いか?」とチャート分析する必要もありません。定期的な収入ですから、時間がたてば自動的に得られます。
キャピタルゲインのような、短期間の巨大な収益は期待できませんが、安心して日々を過ごせるメリットがあります。
以下、仮想通貨のインカムゲインである「ステーキング」と「貸暗号資産」を概観します。
ステーキング
ステーキングとは、ビットコインでいうマイニングに相当するものです。すなわち、新規にブロックを作成し、報酬として仮想通貨をもらいます。
ビットコインの場合、マイニングのために必要な機器のスペックが高くなりすぎて、個人は気軽に参入できなくなってしまいました。
しかし、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)と呼ばれる方式を採用している仮想通貨は、少数しか保有していない個人でも参加することができます。
下の解説図は、テゾス(Tezos、XTZ)の例です。
右下にある Validators(バリデーター)と呼ばれる人々が、ブロックを作って報酬をもらいます。私たちは、自分が持っている仮想通貨の権利をバリデーターに貸して、獲得した仮想通貨から分配を受けます。
この手続きでは、仮想通貨そのものは自分の手元に置いたままです。権利だけ貸しますので、仮想通貨を盗まれてしまう心配はありません。
では、ステーキングをするにはどうすれば良いか?ですが、そのための作業が必要なのが一般的です。
ところが、多くの場合、ステーキングのために勉強するのはハードルが高いと感じるでしょうし、株式投資のように、保有しているだけで勝手に収入となって欲しいです。
そこで、いくつかの仮想通貨においては「何もしなくても保有するだけでOK」が可能になっています(以下の一覧)。
仮想通貨 | 取引所(販売所) |
テゾス(XTZ) | GMOコイン |
リスク(LSK) | コインチェック |
ビットフライヤー |
上の仮想通貨については、右側に書いてある取引所(販売所)で保有するだけでOKです。煩雑な仕事は、取引所(販売所)がやってくれます。
また、報酬をもらうために必要な数量は、とても少ないです。
GMOコインの場合、1か月間の平均保有数量が1XTZ以上でOKで、コインチェックとビットフライヤーの場合は、1日あたり10LSK以上を保有すればOKです。
このように、最低数量(最低金額)がとても小さいのも特徴です。
なお、これらの仮想通貨は他社でも取引可能ですが、長期保有で自動的に収入を得たい場合には、上の会社で取引します。
テゾスの長期保有の考察につきまして、下のリンク先の記事で検討しています。
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また、トロンの場合もご案内しています。
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ステーキングサービスの今後
ちなみに、メジャーな仮想通貨としては、イーサリアムがステーキングの機能を実装しました(イーサリアム2.0)。2021年2月時点で、既に300万ETHがステーキングされている模様です。
このため、イーサリアム2.0への移行が完了して以降、国内取引所(販売所)でイーサリアムのステーキングができるようになると期待できます。
各取引所等の発表を待ちましょう(もしかすると、イーサリアム2.0への完全移行が実現する前に、ステーキングサービスが始まるかもしれませんので、要チェックです)。
貸暗号資産
次に検討するのは、貸暗号資産です。誰が誰に貸すのか?ですが、私たち顧客が取引所(販売所)に貸します。そして、貸出しの対価として手数料をもらいます。
イメージとしては預貯金の感覚ですが、実際には消費貸借契約ですので、預金保険の対象外です。
このサービスを実施しているのは、下の各社になります。
- GMOコイン
- コインチェック
- ビットバンク
概要は、以下の通りです。
GMOコイン
- 仮想通貨:11種類
- 貸出期間:1か月、3か月
- 利率(年率):1%~3%
コインチェック
- 仮想通貨:15種類
- 貸出期間:14日間、30日間、90日間、180日間、365日間
- 利率(年率):1%~5%
ビットバンク
- 仮想通貨:7種類
- 貸出期間:1年間
- 利率(年率):1%~3%
いずれの場合も、数多くの仮想通貨で貸出し可能です。また、GMOコインとコインチェックでは、貸出期間が長いほど利率が高いです。ビットバンクの場合は、貸出し数量が多いと利率が高くなります。
主な注意点は、このサービスは消費貸借契約であり、もし取引所(販売所)が経営破綻すると、自分の仮想通貨が戻ってこない可能性があることです。
また、貸出期間中は、その仮想通貨を売却したり送金したりできません。この点も要注意です。
例えば、より大きな手数料が欲しいからという理由で、ビットコインを1年間貸したとしましょう。その後、2021年1月以降の大相場がやってきたとします(下のチャートは再掲)。
1年間預けるという場合、こんな一気の上昇がやってくるとは考えていないことでしょう。この大相場だったら、売って利益を確定したいと思うかもしれませんが、満期が来るまでは売れません。
貸暗号資産サービスで利率が高いのは、借りた側が長期間使えるからです。いつでも売却できるようにしたい場合は、短期間のサービスを使用します。
ステーキングと貸暗号資産の比較
以上の通り、ステーキングと貸暗号資産は、定期収入があるという点以外は異なる点ばかりです。
最も大きな違いは、ステーキングは仮想通貨自体の仕組みであるのに対し、貸暗号資産は顧客と取引所(販売所)の間の消費貸借契約だという点です。
その他、下のような違いがあります。
項目 | ステーキング | 貸暗号資産 |
数量 | 制限なし | 制限あり |
売却 | いつでもOK | 満期まで待つ |
送付 | いつでもOK | 満期まで待つ |
期間 | 制限なし | 制限あり |
申込 | 不要 | 必要 |
分別管理 | 対象 | 対象外 |
報酬 | 変動制 | 固定 |
利便性が良いのは、ステーキングです。貸暗号資産と違って、仮想通貨自体に組み込まれた機能を使いますので、取引所(販売所)が経営破綻しても、自分の仮想通貨は確実に戻ってきます。
また、テゾスの場合、ステーキング報酬は年率で3%~6%と想定されています(GMOコインが公表した数字)。さらに、売りたいときにいつでも売れますし、いつでも送金することもできます。
これらを総合的に考えますと、ステーキングに軍配が上がります。
ただし、取引所(販売所)に預けておけば自動的にステーキングしてくれるという仮想通貨は、この記事を書いた時点で下の2種類です。
仮想通貨 | 取引所(販売所) |
テゾス(XTZ) | GMOコイン |
リスク(LSK) | コインチェック |
ビットフライヤー |
よって、その他の仮想通貨の長期保有では、貸暗号資産サービスを使うことになります。
また、ステーキングで報酬を得られるのは、PoSと呼ばれるシステムを採用している仮想通貨のみです。PoWを採用しているビットコインやライトコイン等では、この報酬を得られません。
(ビットコインで報酬を得たい場合は、別途、自分でマイニングに参加することになりますが、技術的にも金銭的にもハードルが高いです。)
ステーキングができて、同時に貸仮想通貨もできるという観点から、取引所(販売所)としてはコインチェックとGMOコインが有力です。
株式の配当、FXのスワップポイントと比較
最後に、仮想通貨のステーキングを、株式の配当・FXのスワップポイントと比較します。これら3つは全く異なるものですが、定期的に収入になるという点で同じです。
株式
株式の場合、東証1部上場銘柄の平均配当利回りは2%前後です。最低は0%で、高配当の場合は4%になるものもあります。
また、配当はマイナスになることがなく、年に1回~4回に分けて実施されます。
レバレッジを利かせる、すなわち信用取引をすることで、配当(配当落調整金)を増やすことも可能ではありますが、金利支払いが必要ですし、一般的でないでしょう。
FX
FXの場合は、金利が低い通貨を売って金利が高い通貨を買えば、スワップポイントをプラスにできます。逆にすると、支払いになります。
また、スワップポイントの受け渡しは毎日ありますので、スワップポイントが大きい場合は「毎日が給料日」状態にすることも可能です。
さらに、多少のレバレッジを利かせることで、安全を確保しながら収入を多くすることも可能です。
しかし、昨今の低金利情勢を受けて、スワップポイント狙いのトレードは絶滅危惧種のような状態です。
また、プラスのスワップポイントだったはずが、金利情勢の変化を受けてマイナスに転落してしまう場合があるのも、スワップポイントの特徴です。
仮想通貨
仮想通貨の場合、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用している銘柄でステーキング可能です。
得られる報酬の大きさは銘柄ごとに異なりますが、GMOコインでテゾスを保有する場合、年率3%~6%になると見込まれています。
また、報酬を受ける頻度は銘柄ごとに異なりますが、株式とFXの中間になります(GMOコインでテゾスを保有する場合、報酬受取は毎月)。
なお、レバレッジと利かせると、報酬は受け取れず、逆にレバレッジ手数料を支払うことになります。
現物取引の場合、報酬がマイナスになることはないのは、株式と同じです。
比較のまとめ
以上の比較を見ますと、仮想通貨のステーキングは、どちらかと言えば株式の配当に近いと言えそうです。
すなわち、毎回の収支がマイナスになることはなく、レバレッジを利かせることもなく、定期的だが毎日ではない頻度で報酬をもらえるためです。
その状態でありながら、株式の配当利回りよりも高い利率を期待できます。
このため、株式の配当に不満を持っている、FXのスワップポイント狙いができないから別の何かで定期収入が欲しいなどの場合に、資金の一部を使った仮想通貨のステーキングを検討できます。
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