ノックアウトオプションは、FXと異なる商品性を持っています。そして、とても分かりやすい面があります。
すなわち、初心者でデイトレードをしたい場合、FXよりもノックアウトオプションの方が適している可能性があります。
その理由と注意点を、考察しましょう(この記事では、IG証券のノックアウトオプションを対象にします)。
ノックアウトオプションと初心者
ノックアウトオプションがデイトレードをしたい初心者の選択肢になる理由は、大きく分けて4つになります。
初心者向きな理由
- ルールが分かりやすい
- 初心者が陥りがちな失敗を回避
- 豊富なトレード対象
- キャンペーン
ルールが分かりやすい
ノックアウトオプションとFXは、似たような使用感で取引できます。しかし、分かり易さは異なります。以下の通りです。
「分かりやすい」とは?
- 「強制ロスカットで借金」にならない
- 必要資金はいくら?が分かりやすい
- スリッページしないで損切り
- 損益が分かりやすいチャート
順に見ていきますが、最も重要なのは1.です。
これにより、FXに比べて、損切りで借金になるような大損を回避しやすくなります。
1:「強制ロスカットで借金」にならない
FXと比較して、ノックアウトオプションは資金管理をしやすいです。
と言いますのは、「1回のトレードの最大損失額は、取引開始時に確定している」からです。損失額に上限があるため、損切りで借金になるトレードはできません。
一方、FXの場合、1回のトレードの最大損失額を事前に確定できません。
さらに、FXはレバレッジの大きさを自由に決められるため、いつの間にか高レバレッジ取引になり、「強制ロスカットで借金」という例も出てしまいます。
FXの強制ロスカットで口座残高をすべて失い、さらに借金まで背負うのは、あまりに厳しいです。
資金管理:
ノックアウトオプションの方が容易
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この差が出てくる理由を含めて、以下確認しましょう。
2:必要資金はいくら?が分かりやすい
FXの証拠金の計算は、複雑です。取引例を元に、ノックアウトオプションとFXの違いを確認しましょう。
米ドル/円=100.00円で1万通貨取引。1円の含み損(米ドル/円=99.00円)になっても、強制ロスカットにならないようにしたい。
ノックアウトオプションの場合
まず、1万通貨で1円の含み損になっても耐えられる資金(1万円)を準備します。
さらに、オプションプレミアムと呼ばれる保証金を準備します。取引例の場合、平常時は数百円です(取引画面で確認できます)。
合計で、取引に必要な資金は「10,000円+数百円」です。この金額は取引画面に明示されますので、誰でも明確に分かります。
ちなみに、支払ったオプションプレミアムは、決済後に返金可能です。
FXの場合
FXの場合、少々ややこしいです。
まず、必要証拠金は、取引金額の4%です。すなわち、100円×1万通貨×0.04=4万円です。
そして、1円の含み損になってもポジションを維持したい、と考えています。そこで、1万円を追加します。合計で5万円必要です。
これが基本です。
ところが、強制ロスカット基準がFX会社ごとに異なるため、本当に必要な資金額は、相場状況によって様々です。これが難しいです(慣れれば大丈夫ですが)。
同じ効果を狙った取引ですが、FXの必要資金の方が多くなります。
必要な資金:
- ノックアウトオプション:想定する含み損+オプションプレミアム
- FX:想定する含み損+必要証拠金(取引額の4%)
3:スリッページしないで損切りできる
ノックアウトオプションの場合、「ノックアウト価格」と呼ばれる為替レートで損切りすると、絶対にスリッページしません。
なぜなら、そういうルールだからです。その結果、最大損失額が事前に確定します。
一方、FXは、スリッページを完全排除することはできません(そういう仕組みだから)。
スリッページで損失額が膨らむと、ストレスが大きいです。ストレスは、トレード成績に悪影響を及ぼします。
例えば、100円のときに1万通貨買って、99円で損切りすれば、損失額は1万円です。しかし、本当に1万円になるかどうかは、決済してみなければ分かりません。
2015年のスイスショックのような巨大なスリッページ(1,000銭クラス)が発生すると、損失は10万円前後にもなります。1万円の損のはずだったのに。
スイスショックの例は極端すぎる感がありますが、損失額が事前に決まっていないのは確かです。
スリッページ:
- ノックアウトオプション:ノックアウト価格で、スリッページなしで決済可能
- FX:スリッページあり
4:損益が分かりやすいチャート
これは、IG証券のツールの話になりますが、利食いや損切りの位置がチャートに表示されるので、とても分かりやすいです。
下は、IG証券の取引画面です。チャート部分に、4本の横線があるのが分かります。
意味は、上から順に以下の通りです。
- 利食いレート(指値決済)
- 現在値
- 損切りレート(逆指値決済)
- ノックアウト価格
ノックアウト価格で決済すると、損切りになります。
決してスリッページしませんが、この為替レートで約定すると、オプションプレミアムは返金されません。
損切りの逆指値注文は、発注してもしなくても構いません。逆指値注文で決済すると、オプションプレミアムは返金されます。
初心者が陥りがちな失敗を回避
ウェブサイトを検索すると、初心者が失敗しがちな例がいくつも出てきます。
その中の一つ、「損切りできない」というのが、初心者が損失を広げてしまうパターンの1つになっています。
失敗例
米ドル/円=110円で買い。損切りは米ドル/円=109円に設定。
ところが、実際に円高になると損切りが嫌になったので、逆指値注文を108円に移動。
すると、さらに円高になってきたので、損切りが嫌で逆指値注文を削除。以下、さらに円高になると、含み損が大きすぎて損切りできず、塩漬け確定。
この失敗例をやってしまうと、たった1回の損切りで大きすぎる損失を計上してしまい、FXを継続できなくなる場合があります。
なぜ、こんなことをしてしまうのでしょうか。その回答は、損切りしたくないからでしょう。
ところが、特にデイトレードの場合、損切りを避けて通れません。
どれだけ上手な人でも損切りするのに、初心者が損切りしたくないのでは、上の例になってしまうのは仕方ないように思います。
取引開始後、ノックアウト価格を変更できない
この失敗を回避しましょう。すなわち「損切りの決済注文の位置を変更できない」なら、上の失敗例をしなくて済みます。
ノックアウトオプションでは、取引開始時にノックアウト価格を設定します。設定したノックアウト価格は、決して移動できません。
そして、為替レートがノックアウト価格に到達したら、損切りです。
すなわち、初心者がやってしまいがちな失敗を、強制的に排除できます。これが、ノックアウトオプションが初心者向きだという理由の一つです。
ちなみに、逆指値注文は、取引開始レートとノックアウト価格の範囲内で、自由に移動できます。
豊富なトレード対象
世の中には、トレード対象は豊富にあります。
- 株式(現物、信用、オプションなど)
- FX
- 暗号資産(仮想通貨)
- 外貨預金
- 投資信託
- 債券
- 貴金属
- 商品 など
それぞれのトレード対象ごとに、ルールが異なります。また、全ての金融商品に強いという会社は、おそらく存在しないでしょう。
その結果、何かに関心を持ったら、その場でルール等を調べて口座を作ります。
ところが、金融商品ごとにルールを覚えるのは、ハードルが高いです。あるいは、何かに興味を持ったら、その場で取引してみたい場合もあるでしょう。
そのような場合、IG証券のノックアウトオプションが候補になります。
と言いますのは、ノックアウトオプションのルールを使って、下の銘柄の取引ができるからです。
- FXの通貨ペア
- 日経225など株価指数
- WTI原油など商品
現物株は、投資の基本的な対象ですから、別途勉強する価値があるでしょう。しかし、商品先物などを本格的にやるのは、一般的にはハードルが高いです。
そういう時に、ノックアウトオプションが使えます。基本的なルールは、投資対象に関わらず同じです(取引可能時間は、投資対象によって変わります)。
何かに興味を持ったら、その場でトレードに取り組めるのがメリットです。
キャンペーン
そして、口座開設キャンペーンも見逃せません。
多くのFX会社では、新規口座開設キャンペーンを実施しています。証券会社も同様です。しかし、条件が難しい例が少なくありません。
例えば、「数百万通貨(数億円くらい)の取引でキャッシュバック」という場合、初心者には金額が大きすぎて難しいです。
その点、IG証券はハードルが低いうえに、キャッシュバックも好条件です。
キャッシュバックの条件は、以下の通りです。
- 5,000円:口座申込後30日以内に、取引
- 15,000円:さらに、累計50回以上の新規取引
- 45,000円:累計100回以上
- 10,000円:他社の取引報告書の提出
取引1回で、5,000円です。これはハードルが低い条件ですから達成しやすいです。
また、他のFX会社等で取引した経験があれば、その取引報告書を提出すると10,000円というのも、好条件です。初心者でも達成可能です。
初心者が取引する際の注意点
以上、初心者にとってのメリットを紹介してきました。では、メリットばかりか?といえば、そうでもありません。
デメリットと言いますか、注意点があります。
注意点
- 外国製の取引ツール
- 取引期限
外国製の取引ツール
外国製の取引ツールでも構わないのですが、問題になりうるのは、「日本居住者向けに特化したツールではない」ということです。
IG証券の本社は、イギリスです。そして、世界中でビジネスを展開しています。
よって、世界どこでも通用するツールになっています。ということは、日本に住んでいる人の感性に沿った取引ツールだとは言えません。
このため、特に初心者にとっては、初めは少々難しく感じるかもしれません。
取引可能なトレード対象は、ノックアウトオプション以外を含めると万の単位になります(個別株のCFDが豊富)。
この点は、使って慣れるのが早道だと言えそうです。
取引期限
また、ノックアウトオプションには取引期限があります(最長で1年間ほど)。これにも注意が必要かもしれません。
中長期の場合は、FXが有利な場面があるでしょう。FXには、取引期限がないためです。
その一方、デイトレードならば、取引期限を無視できますので問題ありません。
下のリンクは、IG証券へのインタビュー記事です。ノックアウトオプションを使う顧客の多くが、デイトレードをしていると分かります。
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ノックアウト・オプションの顧客層
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よって、多くのユーザーにとって取引期限は無視できますが、中長期トレードをしたい場合は取引期限を事前に確認しましょう。
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