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欧州

スペイン・フェリペ2世支配下のオランダで発行された銀貨【貴重】

2021年10月16日

アンティークコイン市場は世界中に広がっていますが、貴重品なのになぜか長らく売れない、そんなコインが出ることがあります。

今回は、そんなコインをご紹介します。時代は1584年、当時のオランダは世界最強のスペインに支配されており、独立戦争を展開していました。その時代にオランダで発行された銀貨です。

オーファーアイセル州で発行された銀貨

下が今回ご案内する銀貨ですが、まずは画像で両面をご覧ください。

オランダの銀貨

オランダの銀貨

直径は39mmで重量は28.95g…500円玉の大きさは直径26.5mmで重量7.0gですから、とても大きな銀貨であり、手に取ってみるとズシリと重量感があります。

銀貨は時間の経過とともにトーンと呼ばれる変色(灰色っぽい色)が出てきますが、これは空気中の硫黄分などと化学反応して生じる自然のものですから、決して磨いたり汚れを取ったりしないでください。磨くと、価値が確実に暴落します。

なお、(株)ダルマでの販売価格は23万円です。アンティークコインの世界の基準で見れば高額でも安価でもない、よくある価格ですが、これと同種の銀貨の市場価格と比べると、これはとても高価です。

その理由は、これほど製造時の姿をとどめている銀貨は、世界全体を見渡しても見つからないからです(上の銀貨は未使用品)。少なくともゆったり為替がウェブサイトをくまなく調べた範囲では、これよりも傷ついた銀貨しか見つかりませんでした。

例えば、下はロッテルダム美術館が所蔵している同種のコインです。これが博物館級のコインですから、コインの知識がなくても上の銀貨が飛びぬけて高品質であることが良く分かります。

ロッテルダム美術館の銀貨

まあ、500年も前の銀貨で、しかも発行されたのがオランダの1つの州(オーファーアイセル州)を中心とする地域ですから、流通用の銀貨とはいえ製造枚数が少なかったと容易に想像できます。すなわち、現存数もわずかでしょう。

オーファーアイセル州の位置

ここで、現在のオーファーアイセル州(Overijssel)の位置を確認しましょう。下のgoogleマップで赤枠が書かれているのがオランダで、そのすぐ南側にベルギーがあります。16世紀中ごろ~後半、スペインがこの地域を支配していました。

オランダの地図

そして、下がオランダの地図で、赤い部分が現在のオーファーアイセル州です。

面積は3,400平方キロメートルくらいで、日本でいえば鳥取県と同じくらい…そして16世紀後半(1500年代後半)と言えば、日本だと豊臣秀吉が天下統一を成し遂げた時代ですから、その時代の銀貨が未使用で残っているのは素晴らしいことです。

オーファーアイセル州

当時のオランダの歴史

アンティークコインは単なる金属の塊でなく、当時の世界で流通し、人々の手に触れたものです。すなわち、アンティークコインは歴史そのものであり、それを所有するとは自分の物にするというだけでなく、歴史の生き証人であるコインを後世に伝える役割を担うということでもあります。

そこで、このコインが発行された時代をざっくりと振り返りましょう。

時は大航海時代。他国に先駆けて米大陸を支配下に置いたスペインは、圧倒的な経済力を手にしました。フェリペ2世の父親である神聖ローマ皇帝カール5世のヨーロッパにおける領土は、以下の通りです(斜線がある部分と、神聖ローマ帝国部分。引用元は maps etc)。

カール5世の領土

現在のドイツ・スペイン・イタリアの半分・オーストリア周辺・ベネルクス三国(オランダ・ベルギーなど)を支配下に置いており、その権勢は圧倒的です。そして息子のフェリペ2世は、ベネルクス地方やスペインを中心とする地域を相続しました。

この頃のヨーロッパは、宗教改革の真っ最中で旧教と新教が対立しており、ネーデルラント(ベネルクス地方)は新教徒が強い一方でフェリペ2世は反宗教改革派…というわけでフェリペ2世の弾圧とそれへの反抗から独立戦争となり、現在のオランダに相当する部分が1581年に独立を宣言しました(ベルギー部分は旧教徒が強く、フェリペ2世の懐柔策に乗って独立せず)。

「ふ~ん…」という感じかもしれませんが、ここで、コインの発行年号が1584年になっていることに気付いた方がいらっしゃるかもしれません。

独立宣言は1581年、コイン発行年は1584年。そして、独立した地域でこのコインが流通していて、コインに描かれたデザインは完璧にスペイン仕様です(コインにフェリペ2世の王冠があり、さらにはスペインの最高勲章である金羊毛勲章頸飾(下の絵)も描かれています)。

金羊毛勲章

というわけで、現実は歴史教科書のように「〇〇年まではA、その後はBです」というように単純に分割できないことが分かります。ちなみに、1648年のウェストファリア条約にて、オランダ独立がヨーロッパ全体で正式承認されました。

言葉の意味

コインのデザインが出てきましたので、コインに書いてある言葉の意味を確認しておきましょう。まず、年号がある側から。

オランダの銀貨

「PHS D G HISP REX N O TRS ISSV」とあります。何だこれは?ですが、ラテン語を短縮した表記です。短縮しない表記にしますと、(自信ないですが)「Philippus Dei Gratia Hispaniarum Rex Novum Belgium Overijssel Transissulania」といったところか。意味は「神の御加護により、フィリピン、スペイン、ネーデルラント、トランシルバニアを統治する」という趣旨でしょう。

ラテン語、大変…しかも短縮形だし。

そして、スペインの最高勲章と紋章のある側。こちらは「DOMINVS MIHI ADIVTOR」とあり、英語で「The lord is my helper」となります。これは聖書に深くかかわる文章で、「主は私の救世主です」という感じだろうか。

わざわざコインに刻むくらいだから重要な言葉のはずであり、詳細は、キリスト教を深く知っている人に聞くのが良さそう。

なぜか売れずに残っている

さて、このコインが(株)ダルマで売りに出されたのは、何年も前のことです。しかし、誰も買わない…。日本で売っているというのが、その理由かもしれません。

ゆったり為替調べでは、このコインでこれだけの品質を持ったものは世界を見渡してもどうしても見つからず、オークション結果を見ても鑑定会社のデータを見ても見つかりませんでした(しかし、どこかにあるかもしれません)。

もしかしたら、オランダで売ったら売れるかもな…などと考えています。例えば、良質な佐渡小判金がオランダで売られていたとしたら、オランダから見たら「変な形の金貨だな」くらいでしょうが、日本だったら「うぉぉぉ!これは佐渡小判金!しかもこの品質!なぜここで売っているんだ?!」という感じになるかも。

この辺は想像なので何とも分かりませんが…。

歴史的価値・コインの品質・残存枚数といった点で好条件が揃っていても、必ずしもコレクター誰もが欲しがるというわけでないのが、アンティークコインの面白いところです。

なお、このコイン面白そうだから買ってみようかな、という場合は、ダルマに照会していただく際に「ゆったり為替から情報をもらった」と伝えていただくと幸いです。その情報は(株)ダルマから私に伝えられますので、私のブログがどれくらい役に立っているのか判断できます。

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