株式の世界で、時折話題に出てくるインサイダー取引。FXの世界でもあるでしょうか。
インサイダー取引とは
インサイダーとは、「内側・内部者」という意味です。すなわち、インサイダー取引とは、企業の内部者による取引です。
何か重要情報が公開されるとしましょう(まだ公開されていません)。この情報は世の中を驚かせる可能性があり、自社の株価は跳ね上がると期待できます。
そこで、情報が公開されていないうちに株式を買いこんでおけばOK。情報公開後に高値で売れば儲かります。
しかし、これは違法です。
期待通りにいかず、インサイダー取引をして見たけれど損してしまったという場合であっても、違法です。
FXの世界のインサイダー取引
では、FXの世界にも、インサイダー取引はあるでしょうか。
世界を見渡すと、株式の銘柄数は万の単位になります。未公開情報は数えきれないほどありますし、全ての上場企業が注目を集めているわけではありません。
というわけで、どこかでインサイダー取引が行われているかもしれません。
一方、通貨の種類は、全世界で数百に満たないです。
その中で、FXの取引対象になる通貨に限定しますと、とても少なくなります。市場参加者も膨大ですし、変なことをすれば、すぐに明らかにされそうです。
しかし、遠い過去まで振り返ると、疑惑が何件かありました。そこで、その内容を振り返ります。
スイス中銀総裁の妻が大儲け?
時は、2011年です。2007年のサブプライムローン問題や2008年のリーマンショックを契機とした不景気は、ヨーロッパを直撃していました。
その結果、ユーロの脆弱性が注目を浴び、安全資産であるスイスフランに資金逃避が起きていました。
すなわち、ユーロ/スイスフランの売り浴びせ状態です(下の週足チャートは、セントラル短資FXからの引用です)。
上下動を繰り返しながらも、大変な速度でスイスフラン高が進行している様子が分かります。
2010年3月には、ユーロ/スイスフランは1.46台でした。ところが、2011年8月には、1.007台まで急落していることが分かります。
あまりにスイスフラン高の速度が速かったため、スイス国立銀行は、ユーロ/スイスフラン=1.20の下限値を設けました。
上のチャートで、いきなり為替レートが跳ね上がっているのは、これが理由です。
さて、この暴落&急騰相場ですが、スイス国立銀行総裁の夫人が稼いだ模様です。総裁と夫人の間に相場情報のやり取りがあったかどうか不明ですが、何もなかったと断定するのも難しいです。
この影響で、スイス国立銀行の総裁は辞任に追い込まれました。
NZの経済指標の漏洩
2016年4月14日に公表された文書によりますと、ニュージーランド準備銀行は、2016年3月に政策金利を引下げましたが、その情報が事前に外部に漏れていました。
政策金利を変更するという情報は極めて重要であり、それが事前に漏れていたとなれば、その情報を元に稼ぐことも可能でしょう。
そして、稼いだお金はどこからやってくるの?と言えば、外為市場、すなわち私たちのトレード資金です。
今回の情報漏えいで、誰かが稼いだかどうかわかりませんし、公開文書によると、金融市場にインパクトを与えた証拠はないそうです。
AUD/NZD(豪ドル/NZドル)の日足チャート
では、AUD/NZD(豪ドル/NZドル)の日足チャートを確認しましょう。
赤矢印部分が、2016年3月9日です。大きな陽線になっていることが分かります。これは、ニュージーランド準備銀行が政策金利を引下げたことを受けたものです。
他の日足と比べて大きな値動きになっており、市場に与えたインパクトの大きさが分かります。
インサイダーは存在しないという前提で取引
以上、インサイダー疑惑を2つ確認しました。
為替相場でのインサイダー取引という場合、中央銀行や経済指標の担当者などが内部者になります。
私たちとしては、国家機関は一般企業よりも監視体制が厳しい(だろう)と期待して、インサイダー取引は存在しないものとしてトレードするほかなさそうです。