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仮想通貨(暗号資産)

DAO(分散型自立組織)の理想と現実

仮想通貨プロジェクトの世界ではDAO(分散型自立組織)が大流行していて、DAOは理想だという感覚さえあります。しかし理想と現実は一致しないものであり、DAOも同様のようです。

DAOとは

DAOはdecentralized autonomous organizationの略称で、分散型自立組織と訳されます。仮想通貨の世界は分散という言葉が大好きで、分散は中央集権型の対義語として使われています。一般的なイメージ図は下の通りで、DAOは参加者すべてが同じ権力を持っている一方、中央集権型は特定の参加者が強大な権力を持っています。

DAO

DAOの場合、「事業の方向性はみんなの意見を集約して決めましょう」というのが建前で、参加者による議論を経てから投票で意思決定します。議論を省略する場合も多々あります。

DAOは理想としては良いのかもしれませんが、逐一議論していては時間がかかりますし責任の所在もぼんやりしますので、現実世界では中央集権型が広く普及しています。

例えば銀行システムの場合、銀行という権力者が口座保有者の情報をすべて握っており、口座保有者は自分自身の口座についてのみ情報を見たり送金したりできます。また、会社では社長や部長などと階級があり、権力はそれぞれ異なります。

DAOの意思決定の仕組み

DAOの意思決定の仕組みは簡単です。まず、その仮想通貨プロジェクトに参加したい人は、指定の仮想通貨を保有します。そして、議題が出てきたら投票し、賛成票を最もたくさん集めた案が採用されます。

得票数の判定基準はひとり一票でなく仮想通貨の数量で決まり、この点は株式と同じです。

メリット

インターネットゲームを題材にして、中央集権型と比較しつつDAOのメリットを紹介します。

従来のゲームは中央集権型ですから、ゲーム制作会社とユーザーは明確に区別されています。ユーザーがゲーム制作の現場に口出しすることは一般的に難しいですし、制作会社が募集する場合に意見の一つとして出せるくらいです。その意見も、どのように扱われるか全く不明で、すべては制作会社の考え方次第です。

一方、DAOのゲームの場合はユーザーがゲーム内容について意見表明できますし、その気になれば制作側に入ることもできます。また、自己資金を投入してゲームの仮想通貨を買えば、ゲームを支援する資本家になることさえできます。

ゲームの制作側もユーザーの積極的な参加を望んでおり、ユーザーがゲームアイテム等を自由に作れる例もあります。こうして、ユーザーの自由な発想を生かして盛り上げます。

このように、DAOのゲームの場合は役割分担があいまいで、自分の希望に応じて役割の間を行き来したり同時に複数の役割を担ったりできます。下の絵は、この様子を示しています。ユーザーとして参入してもよいし、同時に開発チーム等に加わっても良しという関係です。

(なお、DAO型でなくてもこの関係を築くことは可能で、DAOの例とするのはやや不適切かもしれませんが、直感的に分かりやすいので例としました。)

DAOの役割分担

DAOの現実

DAOは理念としては素晴らしいものの、実際の様子を見ると理想通りには進んでいない例がいくつか見つかります。

意思決定の遅さとコミュニティの分裂

みんなの意見を集約して仮想通貨プロジェクトの意思決定をするというのは、建前としては素晴らしいですが何事にも時間がかかってしまいます。それが緊急を要する事態であっても。

また、時間をかけても意見を集約できず、コミュニティが分裂することさえあります。例を2つ紹介します。

例1:BNBチェーンからトークンが流出

これは、DAOでないからダメージが少なくて済んだという例です。

2022年10月、BNBチェーンから仮想通貨が不正流出しました。BNBチェーンはバイナンスや関連機関が管理運用しており、流出事件が起きた際のBNBチェーン公式の対応は迅速でした。

すぐにブロックチェーンを停止し、不正流出した仮想通貨の多くを回収し、再び不正できないようにブロックチェーンをハードフォークしたのです。不正発覚からハードフォークまでの期間は1週間もなく、きわめて迅速な対応だったため被害を抑えることができました。

公式の下のツイートでは、ノード(コンピュータ)のアップグレードが迅速に完了したこと報告しています。

DAO形式のブロックチェーンの場合、ブロックチェーンの停止は困難ですし、どう対応するかをめぐって大きな混乱が生じます。仮想通貨を盗んだ犯人は、その間に悠々とマネーロンダリングできますし、実際に多額の仮想通貨が何度も盗まれてきました。

例2:ビットコインの分裂

ビットコインもDAOの一種です。ビットコインのあり方についてマイナー(採掘者)が議論し、投票して全体の方向性を決めます。

議論が合理的・建設的に進むうちは問題ないですが、イデオロギーや感情に基づく対立になると、どうにも収拾がつかなくなります。その代表例が2017年の大混乱で、ビットコインのコミュニティは2つに分裂してビットコインキャッシュが新しく誕生しました。

強大な権力者がいる場合にはこの種の分裂は起きづらく、権力が分散しているから起きる事態です。

保有している仮想通貨の多さが重要

意思決定は人数でなく特定の仮想通貨の数量で決めますから、少数の人々が大半の仮想通貨を持っていると、その少数の意見ですべてが決まってしまいます。

この場合、事実上の独占・寡占ですが、投票というプロセスを経ていて参加者全員の意見を反映したというお墨付きが与えられてしまいます。仮想通貨を多数持っている少数者にとって、DAOはやりたい放題できるので大変便利な仕組みです。

この問題は一部のDAOのみの問題でなく、広く一般的です。従来のDAOの仕組みでこの問題を解決するのは困難であり、何か新しい仕組みが開発されるかもしれません。

実はDAOを望まない開発チーム

世の中には仮想通貨プロジェクトが無数にあり、開発を終了・撤退した例も数えきれないほどあります。仮想通貨プロジェクトの開発チームにとって、ユーザーをいかに集めるかが重大な関心事です。

そこで、DAOでユーザーが主役だとアピールして集客するのですが、本心としてはユーザーの介入を快く思っていない例も多そうです。ゆったり為替が見てきた例としては、こんな感じです。

  • 重要な内容について投票せず、決定事項として発表
  • 投票してしばらく経過したのち、投票結果を覆す内容を発表
  • ユーザーの意見を受け付けない
  • DAOなのに、非公開情報が多数ある

これは珍しいことではなく、実はDAO形式を望んでいない開発チームが相当数あると予想できます。DAOは集客手段に過ぎないという位置づけです。

特に4つ目は一般的にみられる傾向で、開発チーム等はDAOを謳っておきながら、ユーザーから深い質問を受けると非公開とする例は珍しくないようです。ゆったり為替がAMAを視聴した際にも遭遇しました。この場合、DAOの理念はどこかに飛んでいて、中央集権型と変わりません。

用語:AMA

Ask Me Anything(なんでも質問してOK)という意味で、プロジェクト開発チーム代表者とユーザー等が意見交換する場です。開発チームにとってはユーザーの生の声を聴く機会であり、ユーザーにとっては、自分の意見を開発チームに直接届ける貴重な機会となります。

下の再掲図の通り、DAOの参加者は全員が同じ立場です。これを実現するのは簡単なことではありません。

DAO

DAOの意味を取り違えている場合

また、DAOの内部にいる人がDAOの意味を少々取り違えている場合もあるようです。すなわち、参加者はみな対等だから、プロジェクト内のどの分野であっても自由に発言してよく、かつ、自分の意見は尊重されるべきだと考えている事例です。

確かに、DAOは中央集権型と違って参加者は対等ですが、この考えを持ち込まれると組織を維持するのがとても大変になります。

参加者全員が同意できる事項はたくさんあるわけではなく、多かれ少なかれ意見の差異が生じるものです。そのハードルを乗り越えて組織を運営していくために、役割分担したり、分野ごとに取りまとめの人物を配置したりします。

上下関係だけでなく役割分担も半ば否定し、かつ何でも意見してOK、さらに自分の意見を尊重して!となると、大混乱です。

それがDAO内にとどまっているうちはまだ良いのですが、外部にもその姿勢が示されると、そのDAOのビジネスパートナーは閉口してしまいます。

DAOの成熟には時間が必要

仮想通貨の世界でDAOという言葉が出てきたのは最近のことですから、いろいろな問題が出てくるのは自然なことです。これらの問題はいつか解決されるかもしれませんし、解決できなくても今より良い姿に発展することはできるでしょう。

その姿がどういうものか現時点では不明ですが、今後の発展を見守っていこうと思います。

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