毎年12月、特に年末を迎えるにつれて、為替レートの動きがおかしくなります。
すなわち、値動きが乏しくなったり、特にニュースがなくても為替レートが跳んだりすることがあります。
この理由として、世界的に流動性が乏しくなるからと言われます。流動性とは、取引量のことです。そこで、本当に流動性が落ちるのか、日本の公開データで確認しました。
月別の取引金額等
日本でのFX取引の様子を見るために、金融先物取引業協会の公開データを使って確認しましょう。データ取得期間は、2009年1月~2018年12月までの10年間です。
くりっく365を除く、国内FX業者の取引を網羅しています。よって、日本全体の取引の様子が分かります。
月別取引金額
最初に、月別の取引金額の平均値です。下のグラフをご覧ください。横軸は月、縦軸は取引金額(単位は兆円)です。
グラフを見ますと、1月の取引量が多いことが分かります。「新年を迎えたし、今年からトレードを頑張ろう!」ということかもしれません。
その後、月が進むと取引量が落ちる様子が分かります。8月が谷です。
確かに、お盆を中心とするあたりでは、取引が活発でないような気がします。
そして、9月から再び盛り返しています。12月を見ますと、特に取引数量が少ないようには見えません。特段に多いというわけでもなく、平均的な取引金額です。
月末の建玉金額
少し視点を変えてみましょう。月末に保有しているポジション(建玉)の金額です。
取引数量と比較しますと、大きな違いが分かります。
月末時点のポジションは、1月が最も少なく、12月が最も多いです。ということは、ポジションを持った状態で年末を越えて、1月に決済する例が多いことを示します。
ゆったり為替の場合、年末にポジションを持ち続けるのは、怖くてできません(長期トレードや長期リピート系注文を除く)。
為替レートが大きく跳ねる可能性があるからです。
実際、2019年1月3日の午前7時30分~8時頃にかけて、一気の円高&円安が発生しました。下の日足チャートは、米ドル円です(セントラル短資FXから引用)。
赤矢印のところで、大きな値動きが起きました。一気に300銭(?)くらい下落したこの動きで、多くの人が借金を背負うことになりました。
金融先物取引業協会によると、以下の通りです(個人のみの集計)。
- 借金になった人数:6,389名
- 借金の金額:8億800万円
年末年始に、いつも大波乱が起きるというわけではありません。しかし、安心できません。年末越えのポジションは、できるだけ少なくするのが安全です。
話がそれました。月末のポジション金額を見ても、12月に取引が少ないという感じはしません。
米ドル円の月別取引金額と建玉金額
上と同じ考察を、代表的な通貨ペアである米ドル円で確認しましょう。
最初に、月別取引金額です。
米ドル円の月別取引金額
米ドル円の場合も、取引は1月が最も活発で、8月が低調です。そして、12月にかけて盛り返している様子が分かります。
米ドル円の月末建玉金額
毎月月末のポジション金額を見ますと、全通貨ペアの場合とは少し形が異なります。
しかし、年始が最も少なく、その後上昇していくという傾向は、同じです。
12月に流動性が落ちる理由
以上のことから、「少なくとも日本の個人向けFX市場においては、12月もFX取引は活発である」と判定できそうです。
では、なぜ12月に流動性が落ちるのでしょうか。すなわち、取引は活発でなくなるのでしょうか。
FX業者のリリースを見ますと、日本のFX業者は、世界での取引高1位を競っています。世界1位を競うFX業者が日本に複数あるなら、12月の流動性が落ちるのは変なのでは?という感じがします。
以下、ゆったり為替の予想になります。
欧州・米州の流動性
欧州や米州では、実際に流動性が落ちるだろうと予想できます。なぜなら、クリスマス休暇があるからです。
プロの世界では、12月はまとまった休暇になるようです。ゆったり為替は機関投資家で働いた経験がないので、ここは伝聞になりますが、休暇期間は2週間以上の模様です。
そして、年末年始を越えたら、再びトレード開始!となります。
ということは、12月の流動性は落ちるよね…となります。
スポット取引のシェアが小さい
私たちが取引しているFXは、スポット取引と呼ばれるものです。
下のグラフは、国際決済銀行(BIS)が3年ごとに実施している調査です。世界での1日あたり取引高を示しています。
上のグラフを見ますと、スポット取引の割合は、全体から見れば小さいです。
よって、日本で12月もFXは絶好調ですよ!となっても、世界全体の取引から見ると影響力はない…かもしれません。
為替取引全体の傾向がスポット取引にどのように影響するか、ゆったり為替は把握していません。よって、これは単なる予想になってしまうので弱い考察です…。
マリー取引
また、日本国内の要因としては、マリー取引がありそうです。
マリー取引とは、顧客同士の注文をFX業者内で相殺することです。下は、スプレッドを無視したイメージ図です。
顧客Aが100.00円で買い注文を出し、顧客Bが100.00円で売り注文を出しています。この場合、FX業者としては、インターバンク市場でカバー取引するのは損です。
カバー取引をすると、外部業者にコストを支払う必要があるからです。
そこで、顧客AとBの注文を社内で相殺します。
その業者のFX取引高としては、顧客AとBの合計額となります。しかし、インターバンク市場から見ると、取引高はゼロとなります。すなわち、世界の流動性に貢献しません。
12月に日本で取引高が大きくても、世界の取引に大きなインパクトはないかもしれません。
なお、このマリー取引があるから、FX業者は、強烈に狭いスプレッドの提示が可能になります。私たちが利用しているスプレッドは、インターバンク市場よりも狭いことが少なくありません。
例えるなら、「卸売り価格よりも小売価格の方が安い」というイメージです。マリー取引が、これを可能にします。
(ちなみに、マリー取引は合法です。)
12月の取引は注意
以上、12月の取引が薄い理由について、バシッと決まる文章とはなりませんでした。
しかし、12月の流動性が乏しくなること、そして、為替レートが跳んでしまう例があったのは事実です。そこで、クリスマスから年末年始にかけてについては、特に注意が必要でしょう。
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