新型コロナウイルス問題を受けて、各国とも財政出動しています。すなわち、財政状況は悪化します。
2020年4月8日、格付会社のS&Pは、オーストラリアの格付を「安定」から「ネガティブ」に変更しました。とはいえ、AAAですから抜群の健全度です。
そこで、下の4か国について、主な指標から財政健全度を見ていきましょう。また、経常収支の状況も概観します。
- 豪州
- スイス
- 米国
- 日本
格付会社の評価
「一般政府債務残高が~」などと言われても、正直なところピンとこない場合が多いでしょう。そんな時に分かりやすいのが、格付会社による評価です。
ここでは、自国通貨建て長期債務について、格付を見ていきましょう。
AAAが最上級(安全度が最も高い)、以下、AA、Aと続き、その下はBBBとなります。BBBまでが投資適格等級(投資しても大丈夫じゃないの?という最低ライン)です。
S&Pによる格付
- 豪州:AAA
- スイス:AAA
- 米国:AA+
- 日本:A+
豪州の見通しは引き下げられたわけですが、AAAです。世界最高水準の健全性を誇るという評価です。
新型コロナウイルス問題で、いきなり多額の支出を迫られ、収入激減は必至です。格付がマイナスになるのは仕方ありません。
ということは、日本やアメリカも、格付はマイナス方向になるでしょう(頑張っても維持)。
財政収支
次に、財政収支(対GDP比)を確認しましょう。2005年~2018年のデータです(OECDホームページからの引用)。2020年以降、数字が悪化すると見て良いでしょう。
紫色は、日本です。2008年のリーマンショック辺りで、財政収支赤字が一気に増えました。しかし、その後の財政再建努力を反映して、徐々に赤字が縮小してきたところです。
2020年以降、どこまで悪化するでしょうか。
財政収支赤字という視点では、日本よりも米国の方が、状況が悪いことが分かります。巨大な国力を有する米国ですが、どこかで財政健全化が必要になるでしょう。
スイスについては、概ね黒字で推移しています。素晴らしい財政健全度です。
一般政府債務残高
次に、一般政府の債務残高です。一般政府とは、中央政府に地方政府の債務を加えたものです。すなわち、国全体の公的部門の借金を示します。
日本が飛びぬけた数字だと分かります。この数字は、もちろん小さい方が望ましいです。
少子高齢化ですから、支出圧力が高まる一方、収入は伸び悩みます。財政健全化を達成するのは、容易なことではありません。
スイスは財政黒字ですから、一般政府の債務残高(対GDP比)が徐々に減っています。豪州は増加気味ですが、健全度が高いことが分かります。
米国は少々良くない位置にいますが、「日本よりも、ずっとマシでしょ?」という感じかもしれません。
経常収支
最後に、健全度でなく経常収支の様子を見てみましょう。経常収支黒字の方が、赤字よりは良いです(ただし、飛びぬけた黒字は、国家間紛争の原因となります)。
スイスの経常収支黒字が、飛びぬけて高いです。そして、日本も黒字で推移しています。豪州と米国は、赤字を少しずつ減らしている状態です。
スイスの経常収支黒字(対GDP比)は飛びぬけて大きいですが、ユーロ圏や米国と紛争になったという話は、ほとんど聞きません(実際にはあるのかもしれませんが)。
これは、スイスの経済規模が小さいからかもしれません(GDP比では大きくても、金額自体はそうでもないという状態)。
有事のスイスフラン
こうして見ると、スイスフランの強さが圧倒的です。
- 財政健全度は抜群
- 経常収支も大幅黒字
というわけで、世界的に有事になったら、スイスフランが真っ先に逃避先になります。
スイスの政策金利は-0.75%です。ゼロよりもずっと低い金利ですが、それでもスイスフランを求めて世界中の人が集まります。その理由は、圧倒的な安全度です。
ピンチになったら、日本にもお金が集合する傾向があります(よって、円高になります)。これは、経済規模と保有資産の巨大さを反映したものでしょう。