トルコリラ/円の長期チャート・リスク・トレード戦略

トルコリラ/円で取引する際、円高が大きなリスクとなるでしょう。

そこで、長期チャートなどを使ってトルコリラ/円の特徴を確認し、戦略を考察します。

トルコリラ/円の長期チャート【リスク重視】

最初に、リスクが良く分かる長期チャートを見てみましょう。1981年以降の表示です。

トルコリラ/円のチャート

桁が大きすぎて、何のことやら分からないかもしれません。縦軸の単位は百万です。

トルコリラは、2005年に百万分の1にデノミしており、それを反映したチャートです。

トルコリラは高金利通貨ですが、高金利である理由の一つは、物価水準の高さです。物価上昇率が高いため、通貨価値がどんどん落ちていきました。

そして、通貨の数字が大きくなりすぎたので、デノミを実施したという流れです。

しかし、物価上昇率が高いからこそ、政策金利も高く、スワップポイントも大きな値を期待できます。

2005年以降のチャート

さて、上のチャートは期間が長いですし、トルコの政情や経済が今よりも不安定だった時代のレートです。

トルコは2001年に通貨危機を経験しています。

政治や経済での混乱が大きかったのですが、IMF指導の下で復活を果たし、2005年のデノミ以降は以前よりも安定した状態になっています。

そこで、デノミ後のチャートに絞って考えましょう(トラリピからの引用)。

トルコリラ/円のチャート

2005年以降に絞って見ても、円高傾向に変わりはないことが分かります。

チャート左側では、99円を記録しています。しかし、最新の数字(2020年7月)は15円台です。通貨価値が85%近くも低下してしまいました。

トルコリラ/円の特徴

上のチャートを参考にしつつ、トルコリラ/円の特徴を確認しましょう。大きく見て、2つです。

  • スワップポイントが大きい
  • 円高になりやすい

トルコリラ/円を買うときも売るときも、大きなスワップポイントになります。

ならば、スワップポイントをもらった方がうれしいです。よって、トルコリラ/円を取引するという場合、買う人が圧倒的に多くなります。

下は、みんなのFXでの売買比率です(2020年7月17日取得)。

赤が買い、青が売りです。すなわち、「円を売って外貨を買う取引」が多いと分かりますが、トルコリラ/円(TRYJPY)は買いが圧倒的です(赤枠部分)。

売買比率

人数別で見て、全体の90%が買っています。取引数量別で見ても、85%が買っています。

これだけの割合で買いが圧倒的なら、円安であって欲しいです。ところが、既に見ました通り、長期的に円高に突き進んでいます。

トルコリラ/円のチャート

トルコリラ/円のリスク

以上の内容から、「トルコリラ/円のリスクは、円高だ」と結論付けたくなるかもしれません。しかし、それは正確でないでしょう。

円高がリスクというのは、買っている人から見た評価です。売っている人から見れば歓迎です。100銭でも200銭でも、いくらでも下落OKです。

また、トルコリラ/円に限らず、どの通貨ペアであっても為替レートは下落します。

よって、確かに円高になりやすい通貨ペアではありますが、円高はトルコリラ/円に限定されたリスクではありません。

(とはいえ、買っている人が多いので、円高がリスクだという表現は正しいです。)

トルコリラ/円特有のリスクとは

では、トルコリラ/円特有のリスクとは何でしょうか。

比較対象がある方が分かりやすいので、米ドル/円と比較してみます。米ドル/円と比べてリスクがとても大きいと言える内容は、以下の通りです。

情報の得やすさ

米ドル/円の場合、為替レートを大きく動かす原因は、主に米国と日本発の情報です。

日銀が政策金利を変更したり、米雇用統計で事前予想と大きく異なる数字が出たりする場合に、為替レートが大きく動きます。

情報を得るのは、比較的容易です。日本語と英語が読めれば十分ですし、英語ができなくても、様々な経路で情報が数多く発信されています。

ところが、トルコの場合は勝手が異なります。

英語よりもトルコ語の方が、より多くの情報を得られるでしょう。マスコミ等が情報発信してくれますが、アメリカ発の情報のように、質と量が十分というわけにはいきません。

すなわち、トルコリラ/円の場合は、情報の質・量ともに限定的にならざるを得ません。

政治的・経済的安定性

2016年、トルコでクーデター未遂事件が発生しました。トルコ東部では、クルド人問題を抱えています。南部では、シリア関連で問題を抱えています。

日本やアメリカも、数多くの問題を抱えています。しかし、トルコの問題は、少々質が異なります。

国家の転覆可能性や、武力紛争で数多くの人命が危険にさらされるレベルのリスクです。

すなわち、日米に比べて、トルコは政治的・経済的安定性に不安があります。この不安が顕在化すると、大きく円高になるかもしれません。

流動性

また、流動性リスクもあります。流動性とはすなわち、「買いたいときに買えて、売りたいときに売れるか」ということです。

トルコリラ/円が大幅に下落したときに、「今が買いだ!」と判断したとしましょう。そして、買おうと思ったら、売ってくれる人がいなくて買えなかった…というのは困ります。

ここで、国際決済銀行(BIS)の調査報告を見てみましょう。3年ごとに、通貨の取引高の調査をしています。

トルコリラが含まれる通貨ペアの取引高について、1日あたり取引高(10億ドル)と世界全体に占める割合(%)は、以下の通りです。

取引高(10億ドル) 割合(%)
2007 6 0
2010 29 1
2013 71 1
2016 73 1
2019 71 1

調査対象が世界ですから、取引高は大きな数字になります。しかし、世界全体から見ると、わずか1%しかありません。

このため、何か大きなショックがあって世界の為替取引が混乱すると、トルコリラの取引が期待通りにできない可能性があります。

例えば、スプレッドが大幅に広くなってしまったり、一時的に為替レートが配信されなくなったりする事態です。

FX業者は、インターバンク市場(銀行間取引市場)の為替レートを基に、顧客に為替レートを配信しています。下の図の通りです。

FXの仕組み

インターバンク市場で為替レートが配信されなくなれば、FX業者は顧客に為替レートを提示できなくなります。

流動性が低い状態で巨大なショックがある場合、取引したくてもできないというリスクが心配です。

相場の消滅

そして、取引したくてもできない状態が極端になると、相場が消滅します。相場が消滅すると、以下の事態になります。

  • 新規の売買ができなくなる
  • 現在保有しているポジションは、全て決済される

直近では、2008年のアイスランド・クローネが該当します。リーマンショックの煽りを受けて、相場が消滅してしまいました。

アイスランドとトルコでは、経済規模や人口があまりに違います。

よって、相場は消滅しないと期待したいですが、確率はゼロだと断定できませんので、留意したいです。

新興国全般に当てはまる

以上考察したリスクは、新興国通貨ペア全体に当てはまります。具体的には、南アフリカランド円などです。

リーマンショック当時、南アフリカランド円も相場が消滅するのでは?と警戒されていました。FX業者は、相場の消滅に関する注意を顧客に配信していました。

最終的に、南アフリカランド円の相場は維持されましたが、新興国通貨ペアの取引の際には、注意したいです。

新興国通貨ペアを取引するときの姿勢

以上、少々脅かすような話になりました。しかし、リスクがあるからこそ、利益を狙うチャンスもあります。

例えば、リスクが極めて小さい代表格は、預貯金です。しかし、預貯金でどれだけ稼げるか?というと、ほぼ稼げません。

そこで、株やFXで資産増加を狙うことになります。

株やFXには、損失リスクがつきものです。リスクが顕在化しても大丈夫な状態でトレードして、徐々に資産増加を目指しましょう。

トルコリラ/円のトレード戦略

以上を踏まえて、次はトレード戦略を考えましょう。

トルコリラ/円は円高傾向です。円安になるとしても、過去を振り返ると大幅上昇は期待できないように見えます。

では、売りで取引するのが良いのか?ですが、それも難しいです。と言いますのは、スワップポイント損が大きすぎるからです。

既に見ました通り、みんなのFXの顧客状況では、トルコリラ/円の買いが圧倒的でした。他社で確認しても同じ傾向です。

その理由は一つでしょう。大きなスワップポイントです。

トルコリラ/円を買えば、スワップポイントをもらえます。売れば、支払います。となれば、買いたいです。大きな損を毎日計上したくありません。

そこで、買い取引で考えます。

裁量トレードは難しいか

トルコリラ/円は、米ドル/円など主張通貨ペアに比べて流動性が低いです。すなわち、スプレッドが広くなりがちです。情報入手も、やや難しいです。

ということは、為替レートの上下動を狙う裁量トレードは、少々難しいと言えそうです。

では、どうしましょうか。長期保有でスワップポイントを狙う方法は、とても難しいです。円高だからです。

スワップポイントでプラスでも、それを大幅に上回る含み損になってしまっては、キツイだけです。

ここで候補になるのが、リピート系注文です(トラリピなど)。

リピート系注文の戦略

裁量や長期保有が難しいなら、リピート系注文はどうでしょうか。チャートを見ますと、工夫を加えれば取引可能と分かります。

下は、トルコリラ/円の日足チャートです(みんなのFXから引用)。月足チャートで見ると円高一辺倒ですが、日足だと上下動していると分かります。

トルコリラ/円の日足チャート

スワップポイント狙いの場合、この値動きで収益を取れません。また、裁量トレードの場合、適切な位置で買えるか・売れるかという問題があるので、同様に難しいです。

リピート系注文は、日々の上下動で利食いを狙いますので、その点で取り組みやすい手法です。

(買いで取引すれば、スワップポイントももらえます。)

では、どうやって取引するか?です。長期的には円高傾向ですから、そのリスクに配慮した手法となります。

戦略例1(案)
  1. 大きく円高になったところで、取引開始
  2. 利食いを繰り返して、円安に復帰したところで取引終了
  3. 再び大きく円高になったら、取引開始
  4. (以下、繰り返し)

トルコリラ/円は円高傾向ならば、先に円高になるのを待てば良いのでは?という案です。そして、いつもよりも勢いよく円高になったら、取引開始です。

為替レートの上下動で利食いを繰り返し、スワップポイントもいただきます。

リスク

この手法のリスクも見てみましょう。

円高リスクですが、一般的なリピート系注文よりも小さくなっています。なぜなら、「いつもよりも勢いよく円高になったら」取引開始だからです。

大きく円高になる前にスタートしたら、円高で大幅含み損となるかもしれません。それを回避しています。

それでも含み損になる場合は、リピート系注文で利食いを繰り返し、スワップポイントも蓄積します。そこで得た資金を使って、含み損部分のポジションを決済します。

一部を損切りしても、損失額を獲得額の範囲内に収めるイメージです。こうすれば、トータルでプラスになります。

戦略例2(案)

戦略2は、継続的な買い注文を狙います。戦略1は、円高になるのを待つ方法ですが、待つのが少々大変です。それを改善しています。

具体的には、トライオートFXの「スワッパー」という自動売買設定を使います。下は、スワッパーのイメージ動画です。

ある為替レートで買って、20銭の含み益で利食いします。

再度買うのですが、それは売値から30銭円高になったところです。すなわち、元の買値よりも10銭円高の位置で買います。

こうすることで、為替レートが下落トレンドでも買ってスワップポイントをもらいつつ、利食いも狙います。

その他の自動売買設定につきましては、トライオートFXの紹介記事でご確認いただけます。

リスク

この自動売買注文のリスクは、トルコリラ/円が、想定した円高以上に速いペースで円高になる場合でしょう。その場合、利食いできないポジションが出てきます。

トライオートFXの自動売買は、いくつもの注文を幅広い範囲に発注します。よって、為替レートの上下動が続く限り、利食いを続けます。

利食いで得た資金の範囲内で、利食いできずに含み損となったポジションを損切りします。

こうすれば、高値で買ってしまってどうしようもない…というポジションが発生しづらくなります。

まとめ

トルコリラ/円は短期的にはともかく、長期的に円高傾向が続いてきました。しかも、円高の速度が速いです。

このため、「買って放置」の手法を採用しづらいです。また、「売って放置」も、スワップ損が大きいので精神力を求められます。

よって、リピート系FXなどを駆使して、短期~中期で取引するのが候補となるでしょう。

 

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