TRY(トルコリラ)

トルコリラ/円の取引停止&相場消滅をシミュレーション

2018年8月8日

トルコリラ/円が下落を続けています。上昇を期待できるトルコ政府の政策がないので、仕方ありません。

ここで心配なのは、暴落よりも相場の消滅です。消滅とは、取引が継続的に停止になり、売買できなくなることです(一時的な停止の場合は、消滅ではありません)。

そこで、トルコリラ/円相場が消滅する場合を考察しましょう。

過去の取引停止と相場消滅

過去、取引停止から相場消滅に至った例と言えば、2008年のアイスランドクローナ(ISK)が直近でしょう。

リーマンショックの余波を受けて、流動性が枯渇してしまいました。すなわち、新規に売買する人がいなくなってしまいました。

流動性がなければ、ポジションをロールオーバーできません。よって、アイスランドクローナ/円のポジションは、すべて強制決済されました。

暴落の末の強制決済なので、高いスワップポイントを期待して買っていた人は、ほぼ全員が損失になったのでは?と予想可能です。

ただ、このときは、相場消滅の原因はアイスランドではないでしょう。リーマンショックが原因です。

また、アイスランドクローナ/円の消滅が、FX市場にどのような影響を与えたかも、良く分かりません。リーマンショックの方が、影響は圧倒的に大きかったでしょう。

昨今のトルコリラは、トルコが自滅するような感じになっています。トルコ発で相場がなくなる場合、どのような影響があるでしょうか。

日本のFX市場の取引データで、確認します。

トルコリラ/円の売買比率

日本では、トルコリラ/円の買い数量と売り数量で、どちらが多いでしょうか。スワップポイントの大きさを考えれば、買い数量の方が多いと予想できます。

ここで、マネーパートナーズが公開している売買比率を確認しましょう。下の通りです。トルコリラ/円の部分を矢印で示しています。

そして、赤色が、買っている割合です。

売買比率

  • 買い:88.90%
  • 売り:11.10%

買いポジションの割合が、圧倒的です。およそ90%もあります。売り数量は10%強しかありません。

この下落している最中に、買いポジションを保有し続けるのは、大変苦しいのでは?と予想できます。下は、トルコリラ/円の週足チャートです(マネーパートナーズから引用)。

トルコリラ/円の週足チャート

トルコリラ/円が取引停止になったら

では、トルコリラ/円相場が消滅する場合の、日本のFX市場に与える影響を考察しましょう。

チャート形状を元に考えますと、トルコリラ/円相場が取引停止になる場合、買いポジションを持っている人の大多数が、損失になると予想できます。

売っている人は、利益になる人が多いと予想できます。

買いの数量が圧倒的なので、合計すると大幅損失になるでしょう。

とはいえ、トルコリラ/円の取引について、日本のFX取引全体に占める割合がごく小さいならば、影響は小さいです。あるいは、無視できる程度かもしれません。

逆に、トルコリラ/円の取引が一定の割合以上あれば、トルコリラ/円相場の消滅は、日本のFX市場に大きな影響を与えるでしょう。

FX業者の団体である、金融先物取引業協会のデータを見てみましょう(2020年6月分)

  • 全通貨ペアの月間取引額:およそ548兆円
  • トルコリラ/円の月間取引金額:1,880億円
  • トルコリラ/円の割合:0.034%

FXで注目を集めることが多いトルコリラ/円ですが、全体から見れば取引額は小さいと分かります。

よって、トルコリラ/円が取引停止になっても、影響は限られると予想できます。

FX業者の経営に影響はあるか

なお、トルコリラ/円の取引停止や相場消滅が、強制ロスカットを伴うものである場合、FX業者の体力を考える必要があるかもしれません。

直近でいえば、2015年1月のスイスショックが例になります。スイス国立銀行(=スイスの中央銀行)の突然の政策変更により、スイスフランが暴騰しました。

このあおりを受けて、複数の海外FX業者が経営破綻に追い込まれています。

トルコリラ/円で取引停止や相場消滅が起きる場合、日本のFX業者は大丈夫でしょうか。

おそらくですが、大丈夫でしょう。と言いますのは、トルコリラ/円の取引金額は、全体に比べるとわずかだからです。

また、日本のレバレッジは25倍までと決まっているからです。海外で一部みられるような、100倍といった取引ができません。

その分だけ、安全度が高くなります。

普段は厄介者扱いされる25倍規制ですが、危機の際には、顧客とFX業者を強力に守ってくれるでしょう。

とはいえ、FX業者の体力が心配な場合は、FX各社の自己資本規制比率を確認しましょう。法律で120%以上必要とされています。この数字が大きいほど、体力が強いといえます。

主なFX業者の自己資本規制比率は、以下の通りです。

FX会社名自己資本規制比率
YJFX!1,292.0%
セントラル短資FX958.2%
FXプライムbyGMO900.1%
ヒロセ通商737.3%
インヴァスト証券569.0%
IG証券512.6%
DMMFX510.5%
マネーパートナーズ409.7%
トレイダーズ証券401.2%
マネースクエア393.6%
<調査日:2020年8月26日>

上位の会社と下位の会社では、数字が大きく異なると分かります。安全度第一で考えるならば、上位の会社で取引するのが選択肢となります。

トルコリラ/円の取引停止

なお、トルコリラ/円の取引停止は、時折見られる現象です。

下は、日足チャートです(セントラル短資FXから引用。以下同じ)。2018年3月23日(矢印部分)で、大きく円高になっていることが分かります。

この部分で、取引停止がありました。

tryjpy-1

上のチャートは日足です。このため、どの時間帯で取引停止があったのか分かりません。そこで、10分足チャートでも確認しましょう。下の通りです。

日足の場合、うっかりすると見逃してしまうくらいのローソク足になりますが、10分足だと強烈な値動きに見えます。

この動きでトレードができればと思うのですが、なかなか難しいものがあります。

tryjpy-2

話がそれました。上のチャートで見ると、大きな陰線(青線)の終値と、次の陽線(赤線)の始値に乖離が見られます。ここで取引停止があったと予想できます。

取引停止があったといっても、その場所は10分足チャートで辛うじて予想できるくらいなので、短時間だったと分かります。

新興国通貨ペアのリスク

上のチャートを見ると、この日のトルコリラ/円は、値動きが大きかったです。他の通貨ペアでも、そこそこ大きな値動きでした。

しかし、一時的とはいえ、取引停止になったのはトルコリラ/円だけでした。

各FX業者のホームページを見ると、以前よりもトルコリラ/円のリスクを大きく書いているように見えます(気のせいかもしれませんが)。円高傾向だからかもしれません。

しかし、レバレッジ2倍未満で取引していれば、少々の円高は問題ありません。

ところが、取引停止でなく、相場の消滅まで進んでしまいますと、強制決済を強いられます。

3月23日程度の値動きで取引停止があるということは、トルコリラ/円でも、リーマンショック級の波乱時には相場消滅の可能性を否定できないでしょう。

取引数量は、とにかく小さく

ただ、リスクがあるからといって取引しないという姿勢にしますと、あらゆる通貨ペアで取引できなくなります。株式もダメになるでしょう。預貯金しかできなくなります。

それでは面白くありません。

トルコリラ/円などの新興国通貨ペアは、大きなスワップポイントが魅力です。そこで、取引する場合は、自己資金に比べて十分に小さな取引数量にすることが大切です。

米ドル/円を取引するような感覚で売買するのは、リスクが大きめになると言えます。

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