2016年~2018年の2年間にわたって、トルコリラ/円でリピート系FXの公開トレードを実施しました。使用したサービスはトラリピです。
取引開始から損切りに至るまでの経緯や、どうすれば良かったのか?などを検討します。
公開トレード【トラリピ】の取引設定
トラリピの取引設定は、以下の通りです。
- 通貨ペア:トルコリラ/円
- 取引範囲:20.20円~35.00円(当座見込み)
- 売買:1,000通貨の買い
- トラップ幅、利食い幅:40銭
- 取引開始日:2016年8月16日
取引開始前の検討
トラリピに限らず、何か自動売買注文を考えるには、根拠や検討があるはずです。その内容を振り返ります。
大きく円安になったら?
上の自動売買注文では、トルコリラ/円が35円よりも大きく円安になると、利食いできません。注文(トラップ)がないからです。
では、35円よりも円安になったらどうしましょう。
これは人によって判断が分かれるところでしょうが、追加のトラップを設定しないという選択にしました。トルコリラ/円は、基本的に円高傾向だからです。
あまりに円安傾向が進む事態になりましたら、その時に改めて考えることとしました。
大きく円高になったら?
逆に、買った後、円高になって含み損になったらどうしよう?という問題があります。
しかし、ある程度の含み損は怖くありません。
20円近くになっても耐えられる設定にしているためです。また、利食いとスワップポイントで証拠金が増えていきますから、10円台の円高になっても耐えられると考えました。
(当時は、トルコリラ/円=30円台半ばで推移しており、20円は超円高という認識。)
トルコリラ円のチャート
トルコリラ/円の日足チャートを確認しましょう。下のチャートはマネースクウェア・ジャパン(M2J)からの引用です。
横線は、1円ごとに書いてあります。今回の利幅は40銭ですので、この線の半分ほどの上昇があれば利食いできます。
大きな値動きがあった場所を探しますと、チャートの中ほどに大きな陰線があります。これは6月24日のイギリス国民投票を受けた動きです。
大きく円高になっていますが、同時に円安にもなっているため、取引していれば、ここで数回以上の利食いができたと分かります。
その後も、連続陽線で1円~2円の円安になった場面が、数回あります。そこでも、何回も利食いできたことでしょう。
一方、チャートの一番右あたりの値動きでは、1回も利食いできないと予想できます。
今後の値動きは不明ですが、上のチャートの様子を考えて、以下の通り見込みました。
利食い頻度予想
1日に何度も利食いできる場面がありそうです。その一方、1週間以上にわたって1回も利食いしないこともあるでしょう。
このような予想を立てる場合、「きょうの成績はどうかな?」という感じで口座を毎日確認するのは、良くありません。
1週間以上にわたって利食いが1回もないと、うんざりしてしまう可能性があるからです。よって、M2Jの口座確認は、1か月に1回でも良いかもしれません。
毎日利食いしないと我慢できない!という場合は、トラップ幅(指値と指値の間の距離)をもっと近くする必要があります。
トラップ幅が狭くなると、その分だけ必要な証拠金が大きくなりますので、事前の計算が必須です。
なお、トラリピは、毎日の利食いを求めるトレード手法ではなく、長期的に資産を形成する資産運用です。
3か月~1年間くらい放っておいて、気づいたら証拠金が増えていた!くらいの気持ちでいるのが、ちょうど良いかもしれません。
収益率予想
1年間トラリピを継続した場合の収益率予想は、以下の通りでした。
1日に複数回利食いすることもありうるけれど、1週間以上利食いなしもあるだろう…そして、1年間の営業日数は260日くらいです。
毎日1回利食いしてくれれば最高ですが、それを期待するのは難しいかもしれません。そこで、200回未満としましょう。
(…と書きつつ、時折ドカンと大きな乱高下があるのも相場です。その乱高下で一気に利食いを繰り返してくれないかなあ、とも期待していました。)
あと、無視できないのがスワップポイントです。他の通貨ペアにはない大きさです。
円高で推移すれば、含み損が出てしまいますが、スワップポイントが蓄積します。円高が進まない場合、ポジション数が少ないのでスワップポイントもなかなか増えません。
よって、事前に収益を予想するのは難しいですが、以下の通りとしました。
- 1回の利食いで得られる額:400円
- 1年間の利食い回数:200回未満
- スワップポイント:無視できない大きさ
この3つを総合的に考えて、年間で200回の利食いと同等の額を得られるのでは?と期待しました。
これが実現する場合、200回×400円=80,000円を獲得できます。
一方、準備した証拠金は30万円です。ということは、年間収益率は26.7%です。4年で資金が2倍になる計算です。
4年で資金が2倍というのは、収益率がちょっと高すぎる試算かもしれません。そこで、年間で150回の利食いと同等の額を獲得できると想定しました。
150回×400円=60,000円
この場合、収益率は20%となります。5年で資金が2倍になります。
ちょっと大人しいかなあ、という予想でも年率26.7%の予想、そして、それでは高すぎるかも?というわけで、さらに控えめにした予想で、年率20%です。
一度も利食いしない場合
参考までに、全ての買い注文が成立したあと1回も利食いせず、そのまま1年間が経過する場合を考えてみましょう。
- 1,000通貨×37本の指値注文
- 1,000通貨あたりのスワップポイントを、6円/日と仮定
1日のスワップポイントは、37本×6円=222円となります。また、1年間のスワップポイントは、222円×365日=81,030円(年率27%)になります。
1回も利食いしなくても、この年率です。
1,000通貨あたり6円(1万通貨当たり60円)というのは、2020年7月時点で考えると大きすぎる数字です。しかし、当時は110円前後が通常の数字でした。よって、60円は「控えめすぎる」数字です。
必要な証拠金
30万円の資金で、トルコリラ/円のトラリピを開始しました。では、必要な証拠金は、正確にはいくらでしょうか。
ゆったり為替のトラリピ設定は、以下の通りです。34.6円から40銭ごとに買い下がります。買い数量は1,000通貨、利食い幅は40銭です。
34.2円
33.8円
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そして、20.2円まで買います。20.0円になっても強制ロスカットにならない証拠金として、31.5万円くらい必要です。
ただし、いきなり20円になることはないだろうという理由から、実際に投入した金額は30万円です。
約定頻度を上げたいとき
毎日は利食いしない設定ですが、1年間を通してみると、いい感じの収益率では?と予想しました。
しかし、予想に過ぎないので、実は散々かもしれません。すなわち、2週間も3週間も全然利食いしない状態になるかもしれません。
そこで、指値注文を20銭ごとに設定するとします。以下の通りです。
34.4円
34.2円
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こうすれば、注文数が2倍になります。利食い幅を20銭にすれば、どんどん利食いしてくれる可能性があります。
もちろん、こちらの設定の方が楽しいでしょう。
必要な証拠金が大きくなる
注文本数を2倍に増やすことで問題があるとすれば、必要な証拠金です。
トルコリラ/円=20.0円になっても大丈夫な証拠金が、2倍になります。すなわち、63万円くらいです。30万円と60万円では、ずいぶん違います。
また、トルコリラ/円=20.0円くらいまで考えておけば十分かな?という予想に基づいています。
実はこの予想が間違いであり、15円まで突き進むかもしれません。その時に、証拠金を追加投入する必要があるかもしれません。
そう考えると、利食い頻度を上げたいから20銭ごとに発注しようと考えるのは、リスクが大きいと判断して見送りました。
順調な滑り出し
下のグラフは、2016年8月16日から10月末日までの残高増減を示しています(横軸は月)。
M2Jの残高報告書のデータを抜き出してグラフ化したのですが、評価損益の数字を得られませんでした。そこで、残高増減のみのグラフです。
40銭ごとに買って、含み益が40銭(400円)になったら決済するというトラリピです。
2か月半で、3回しか利食いしていません。スワップポイントが大きく、この利食い回数の少なさをカバーしています。
その後も順調
下のグラフでは、青線が証拠金の増加の様子を、オレンジ線はそれに評価損益を加えたグラフになっています。
利食いとスワップポイントにより、青線は毎月増加している様子が分かります。
オレンジ線はトルコリラ/円の値動き次第ですが、2017年1月を底にして右肩上がりで推移している様子が分かります。
取引開始から10か月半で、証拠金が9.5%増加しました。この調子でいけば、1年で10%超の証拠金増を期待できます。
なお、このトレードは完全放置を趣旨としていますので、証拠金額の割に取引数量が少なくなっています。
2017年6月時点で、トルコリラ/円=20円より円高になっても、強制ロスカットになりません。
近々20円になるとは思えないという場合は、もう少し積極的な取引設定が可能でしょう。その場合、証拠金増加スピードは速くなるはずです。
しかし、急落するときに冷や汗をかくことになります。
暴落したらどうしよう…という状況では、完全放置を旨とするトレードは難しいでしょう。そこで、ゆったり為替は、安全度の高いトレードを採用しました。
また、証拠金が増えれば、その分だけ円高になっても強制ロスカットになりません。日々、円高に対する抵抗力がついています。
損切りして撤退
以上、順調に見えたトルコリラ/円のトラリピですが、損切りして撤退となりました。その理由は、下の週足チャートから明らかです(M2Jから引用)。
円高速度が速すぎます。
さらに、トルコの国内状況が、追い打ちを掛けました。
トルコリラ円を損切りした理由
今回の公開トレードでは、資金的な余裕はまだありました。しかし、精神的なストレスが大きい状態です。ストレスが大きい理由は、含み損でなく、トルコの政策です。
トルコ政府の政策は、トルコリラ安に誘導しているのか?と勘繰りたくなる状態。
すなわち、この状態で、トルコリラを買うトラリピは合理的でないと判断しました。例えば、以下の通りです。
新財務大臣
タイミングが遅くない?という感じがしつつも、トルコ中銀が政策金利を大幅に引き上げられたのは、前財務大臣の支援が大きかったようです。
「大きかったようです」ですが、ゆったり為替はトルコ語が読めません。よって、二次資料で考えざるをえません。日本語・英語で情報を得ることになります。
情報の正確性で不安がありますが、(ゆったり為替から見て)財務大臣の良い影響力があったのは確かなようです。
そして、新財務大臣。交代しました。
時間とともに大臣が交代するのは、自然なことです(今回の交代は残念ですが)。そして、誰が新財務大臣になったか?です。報道によると、大統領の親族だそうです。
どんな能力や経験を持っている人なのか、分かりません。しかし、政策金利引き下げを主張する大統領に近いんだろう、と容易に予想できます。
中央銀行総裁
そして、トルコ中央銀行総裁の資格について。
「高等教育を受けていて経済への造詣が深いこと」という趣旨の文言が、法律から削除されたようです(「~ようです」ばかりですみません)。
ということは、「誰でもいいよね」ということになります。
その他にも、トルコリラ/円の買いを止めるべき理由は、いくつも見つかりました。
トルコリラの上昇を期待できるか
日本語と英語で情報を探す限りですが、トルコリラを安くする情報ばかり目に留まります。しかも、一つ一つのインパクトが大きいです。
トルコリラにとって、プラスの情報を探すのは難しい状況。仮に探せても、「これで大きくプラスになると考えるのは、無理がありそう」というものばかりでした。
大統領は、自国通貨を守る意識が弱いようです。その通貨を買って持つのは、気持ちの良いものではありません。
どちらかと言えば、ストレスです。
トレード結果
というわけで、トルコリラ/円のトラリピから撤退しました。今回の公開トレードの成績は、以下の通りです。
まあ、仕方ありません。
トルコリラは新興国
トルコは新興国です。今回は、新興国のリスクが顕在化したと言えます。先進国では、なかなかお目にかかれないリスクです。
ただし、トルコリラ/円のリピート系FXは絶対不可、というわけではありません。
トルコリラ/円の為替レート水準は低いので、トルコリラ/円=1円になってもOKという証拠金を投入してトルコリラ/円をすれば、強制ロスカットになりません。
円高が進めば、高値で買ったポジションは含み損になります。しかし、高いスワップポイントがあります。
あるポジションについて、スワップポイントの合計値が含み損の額を上回ったら、損切りします。
すると、損切りしているのに、成績はプラスです。スワップポイントのパワーです。
そして、損切りで浮いた資金を使って、円高になった現在値あたりでリピート系FXを再開します。こうすれば、以下の効果を期待できます。
- 高値で買ったポジションが消滅
- 指値注文の本数を維持
- 合計でプラスの成績を狙える
取引開始時のシミュレーションを万全にしてから、取り組む必要があります。
円高でもプラスにできたリピート系FX
この記事を書いている2020年8月現在、トルコリラ/円の円高トレンドは継続しています。
トラリピの公開トレードを継続していたら、利食いを繰り返したでしょうが、証拠金は厳しい状態になっていたことでしょう。
では、どうすれば、トルコリラ/円のリピート系FXで資産を増やせるでしょうか。
例として、トライオートFXの「スワッパー」の考え方を挙げられます。イメージ動画は、下の通りです。
この自動売買注文は、「ポジションを持って20銭の含み益で利食いしたら、利食い位置から30銭円高になったところで再度買う」という注文です。
すなわち、取引を重ねるにつれて、取引範囲が円高に移動する内容です。これは、トラリピではできません。
仮に、この手法を使って板場合、損益推移は以下の通りです。
- 緑の帯:実現損益
- オレンジ:評価損益
- 白線:上2つの合計
今後もこの通りになるとは限りませんが、参考になるでしょう。